不動産投資に影響を与える税制改正
2019年11月28日の当コラムでもご紹介した、不動産投資に関連する税制改正について、より分かりやすい記事が日経新聞に有りましたのでご紹介します。
税制改正 富裕層に負担増の波
米国で築年数35年の土地・建物合計で5000万円の賃貸用木造住宅のケースだ。日本だと土地の資産価値の方が高く、建物と土地の割合が20%対80%になるところだが、土地の資産価値が日本より安い米国では建物と土地の割合が80%対20%と逆転する。
上記の記事を読んだだけで「あー、節税対策の穴を埋めたのね」と直ぐに分かる方は、かなり不動産投資の勉強をなさった方だと思います。
節税のポイントは減価償却
では、なぜ、米国の不動産を買うと節税になるのか?ポイントは記事内の建物と土地の割合の違いの部分です。投資物件を1件でも購入した事のある投資家さんはお気づきと思いますが、不動産投資戦略を立てる上で重要な要素である「減価償却」が大きく違ってくるからです。
節税額のシミュレーション
日経新聞のご紹介した記事にサンプルとして出ている事例をアセットランクシミュレーターでシミュレーションしてみます。シミュレーションした結果を一覧表に纏めると以下の通りになります。
まず、何も投資せず減価償却を利用しない場合には、約720万円の税金支払が必要です。これが、日本の物件へ投資した場合は約695万円と約25万円の節税になります。これでは、節税スキームとは呼べません。ところが、米国の不動産へ投資した場合には税金支払が約360万円と約360万円節税になります。築35年の木造の減価償却期間が4年ですので、これが4年続くことになります。4年間ですと合計約1,320万円節税できます。
節税できる理由
この減価償却費の違いは先ほど書いた土地と建物割合による物です。日本の場合5,000万円の建物割合20%の1,000万円を4年間で減価償却しますので年間250万円が減価償却額です。しかし、米国の場合は80%が建物割合になりますので、年間1,000万円償却出来ることになります。その効果で、年間360万円の節税が可能になります。
ただ、売却時には減価償却が終わっていますので多額の売却益が出ることになります。しかし、売却時の税率は5年所有後に売却した場合は約20%なのに対して、今回のサンプルの課税所得2,000万円だと約36%になります。この税率の違いにより売却額にも影響を受けますが節税になる可能性が高くなります。
税制改正の内容
今回の税改正で、海外の不動産の損益通算が出来なくなります。つまり、どんなに減価償却額が増えても日本での所得と通算出来なくなるので、まったく節税できなくなります。確かに、制度の穴をついたような手法ですので穴を埋めに来るのは当然かなと思います。
このような例を見ても、不動産投資は節税の為に行うのではなく、しっかり収益の上がる投資を基本として行わないと、ルール変更が思わぬ落とし穴になる場合が有ります。