新築RCと築古RCの収益性を比較する
同じRC(鉄筋造)物件でも新築と築古では収益性の特徴は異なります。
新築RCと築古RCの違い
それぞれの特徴を確認するために、新築RCと築30年経過した築古RCを比較します。
以下のサンプル物件を使用します。
新築と築古のキャッシュフローに影響を与えるポイントは、表面利回り・借入年数・法定耐用年数です。
表面利回りは基本的に「新築<築古」となります。今回は、新築RC6% 築古RC7.5%としています。
借入期間については、多くの銀行は貸出期間を法定耐用年数基準で決めます。そのため、新築は築古よりも長い期間借入できます。今回のサンプルは、新築RC35年 築古RC30年です。
法定耐用年数は新築は47年。築古は23年と24年の違いがあります。
※法定耐用年数の計算については「中古物件の耐用年数の計算方法を理解する」をご確認ください
この3つの違いは、キャッシュフローに大きな影響を与えます。
新築RCと築古RCの収益比較
新築RCと築古RCの収益比較を自己資金回収率で行ないます。
自己資金回収率は、自己資金を何%回収できているか確認する不動産投資指標です。100%になれば自己資金を回収したことになります。
投資に利用した自己資金をできるだけ早く回収することは、次の投資(不動産に限らず)へ資金を利用するという観点からとても重要です。
■自己資金回収率の計算式は
「税引き後キャッシュフロー累計÷自己資金額」 です。
サンプル物件を比較すると自己資金回収率は「新築RC<築古RC」となっています。
不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを利用
築古は表面利回り7.5%と新築より高いのと、償却年数の短いことで減価償却費も年間275万円と多く節税効果が高いからです。
今回のサンプル物件では、築古は返済期間の短いことで返済割合の高くなるキャッシュフローへのマイナス面はあるものの自己資金回収率は高くなります。
では、築古RCは新築RCよりも収益上必ず優れているのでしょうか。実際はそうとも言い切れません。
新築RCと築古RCの売却を考慮した比較
売却まで含めた収益性を比較します。
以下は10年後に、購入価格を中心に上下5%刻の売却価格で売却したことを想定したATIRR比較です。ATIRRの数値の高いほど収益性は高いです。
※ATIRRについては「インフレ時代の不動産投資で利用したい指標」をご確認ください
不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを利用
購入価格で売却した場合は、新築RC7.34% 築古RC11.64%と築古が上回ります。
しかし、10年後の築年数は、新築⇒築10年、築古⇒築40年となります。新築と比較して築古は売りにくくなる可能性が高いです。売りにくい=売却価格下落 となります。
つまり、築古の場合、売却価格を低く見積もっておく必要があります。新築が購入価格で売却できた場合、築古は15%下落で同等のATIRR。20%下落で新築を下回ります。
また、築古RCの売却価格を維持する大きなポイントは修繕費です。RC物件は木造物件と比較すると多額の修繕費が必要です。
今回のシミュレーションでは修繕費を考慮に入れていません。しかし、売却価格を維持するには多額の修繕費が必要になる可能性は高いです。当然、修繕費は収益性を大きく引き下げます。
修繕費については「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」をご参照ください。
新築RCと築古RCどちらを選択すべきか
築古RCは修繕費を上手におさえながら運用できれば、インカムゲインのキャッシュフロー額は新築RCと比較して多くなる可能性は高いです。しかし、資産性を考えた際には新築より低くなる可能性は高いです。
また、手厚いキャッシュフローを利用して次の投資を検討している投資家さんは築古RCを選択するのもの手です。
複数物件を所有していて、資産性を重視する投資家さんは新築RCを選択する方が良い場合は多いです。このように、投資家さんの属性や目的によっても異なります。
今日ご紹介した特徴を参考にしていただき、個別のシミュレーションを通してご自分の目的にに合っているのはどちらなのか検討していただければと思います。
(動画)不動産投資指標 自己資金回収率とIRR
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「自己資金回収率とIRR」を確認する方法動画でご紹介します