金利上昇が出口戦略に与える影響
不動産投資を進めていると「空室」「家賃下落」「修繕」など様々なリスクに直面します。その中でも「金利上昇」はもっとも自分でコントロールしにくいリスクです。
7月23日のメールセミナーで、金利上昇を乗り切れるかのポイントは3つと書きました。
1.金利上昇してもキャッシュフローが赤字にならないか
2.次にインカムゲインで目標の収益を達成できるか
3.最後に売却しても自己資金等を回収できるか
今日は金利上昇リスクで、最も影響の大きい「3.売却しても自己資金等を回収できるか」を確認する方法です。
1.2.については「金利が上昇しても問題ないか確認する方法」をご確認ください。
金利上昇の不動産投資への影響
以下のチャートは米国の政策金利のチャートです。基本的に変動金利は「政策金利+α」で決まります。
チャートを見ると半年で2%以上金利が上昇しています。つまり、連動する変動金利も2%程度上昇する可能性があります。
日本はアメリカのような景気の強さ、インフレ率ではありませんので、ここまで極端な動きは現在のところ考えにくいです。
しかし、将来の金利上昇リスクを考える際に参考になります。
※変動金利と固定金利の決まり方が平易に記載されていましたご参考にご紹介します(外部サイト)。自分でもできる! 住宅ローンの金利動向をつかむ方法
金利上昇の不動産価格へ影響
金利が上昇すると、不動産価格は基本的に下落します。理由は「上昇した金利と同様に表面利回り」も上昇するからです。
例えば、物件価格1億円、表面利回り5%(家賃500万円)の物件を1%の変動金利で購入したとします。数年後、金利が2%になりました。
この場合、購入時の金利(1%)と表面利回り(5%)の差の4%を手に入れようとすると、表面利回りは6%必要になります。
家賃変動を考慮しない場合、6%の表面利回りを実現するための物件価格は、500万円÷6%=8,333万円 です。つまり、投資家が納得する4%差の利回りで売却するには、この価格で売る必要があります。
この例は、不動産価格の他の影響を考えずに非常に単純化されています。しかし、基本的な動きはこのようになります。ちなみに、ここ数年、日本の不動産価格が上昇した一因はこの例と逆で、金利が下落したので、表面利回りが低下したからです。
それでは、サンプル物件を使って金利上昇が出口戦略に与える影響を確認します。
キャッシュフローシミュレーション
このサンプルを使って確認します。
当初の金利は1.25%です。その金利が3年後から毎年0.5%上昇して、現在のアメリカ並みに2%上昇したことを想定したシミュレーションです。
潜在的総収入(満室想定家賃)は一般的な家賃下落率1%に、物価上昇を加味した0.5%を金利上昇の2年後から加算して家賃下落率を0.5%に調整しています。家賃上昇を2年後~としたのは、家賃は約1年半~2年程度経過してから物価上昇分を織り込んでいくことが多いためです。
※アセットランクシミュレーターでの分析結果を一部抜粋
金利上昇の影響で、当初約127万円あった、税引き後キャッシュフロー(CF)が約67万円まで減少することが分かります。金利上昇がキャッシュフローへ与える影響の大きさが分かります。
さて、それでは、本題の売却を加味した投資収益への影響を確認します
金利上昇の出口への影響
購入から7年経過後の2028年に売却したキャッシュフローシミュレーションを行います。
売却価格は、2%の金利上昇分を表面利回りに加算した9%の表面利回りを2028年の潜在的総収入(満室想定家賃)で確保できる価格約5,946万円です。
シミュレーション結果は
※アセットランクシミュレーターでの分析結果を一部抜粋
不動産投資で一番恐れるべき事態が発生します。売却しても借入が返済できません。
ちなみに、出口戦略を考える際にもっとも重要な指標、自己資金回収率は32.84%と投資した自己資金1,600万円の約1/3の525万円しか回収できません。
最悪の投資結果になります。
金利上昇の影響は大きい
今回のシミュレーションでは、投資期間中はCFの黒字を確保でき、何とか投資として成り立っていました。しかし、金利上昇の影響で売却価格が下落したため、
■売却で借入を返済できない
■自己資金を回収できない
という非常に厳しいシミュレーション結果になりました。
金利上昇は、家賃収入等のインカムゲインだけではなく、売却時のキャピタルゲインにも大きな影響を与えます。
海外の動向等から現実味を増した金利上昇リスクについて検討とシミュレーションを行うきっかけにしていただければ幸いです。
※アセットランクシミュレーターを利用したシミュレーション方法を動画でご紹介しています
※関連記事:
・変動金利から固定金利へ借り換えが必要か検証する方法
・予測される金利上昇への対策を検討する方法
・不動産の出口戦略の為に知っておきたいルール