Archive for the ‘不動産投資出口・売却’ Category
収益物件を運用するなら必ず考えておくべき戦略
収益物件を購入して賃貸経営を開始したら必ず考えておきたい戦略があります。
不動産投資の出口戦略の重要性
不動産投資の成否を考えた時に出口(売却)戦略を決めることは重要です。
売却戦略を考える上で必要な要素は
1.いつ売却するか
2.いくらで売却できるか
の2つです。
この2つを頭において賃貸経営を行っていく必要があります。
不動産投資の出口戦略 いつ売却するか
だいたいどのタイミングで売却するかを購入時点で決めて物件を取得していれば問題ないです。しかし、そうでない場合も多いと思います。
その際に、まず、知っておきたいのは売却益にかかる税金ルールです。
見て分かるように5年以内の税率は倍近くになります。よほど事情のないかぎり5年以内の売却は損です。
長期と短期の計算は譲渡日から5年経過ではありません。資産を売却した年の1月1日で判定します。つまり、売却年の1月1日時点で5年以内は「短期譲渡所得」5年超は「長期譲渡所得」となります。
不動産投資シミュレーションの時点で売却日を仮定するならば5年経過後で仮定します。
不動産投資の出口戦略 いくらで売却できるか
売却価格を検討する時は「いくらで売却するか」ではなく、「いくらで売却できるか」という視点で考える必要があります。
想定の売却価格を計算する便利な計算式があります。
想定売却価格=売却年の想定家賃÷(購入時の表面利回り+0.5~2%)
この計算式で想定売却価格を計算できる理由は、投資用の物件を売却する相手は投資家(ファミリー向け区分を除く)だからです。
投資家は利回りを参考に物件購入を検討します。つまり、相場と同等か割安ならば売却できる可能性は高くなります。
また、売却年には築年数の経過で売却相手に求められる表面利回りは購入時より高くなる可能性は高いです。その分を0.5~2%程度の範囲で加算して計算します。
5,000万円・表面利回り6%で購入した物件を10年後に売却する場合、表面利回り6%に+0.5%した以下のシナリオで計算すると
このような想定売却価格になります。この計算式を利用することで電卓レベルの計算で想定売却価格を計算できます。
不動産投資ミュレーションで確認すべき指標
いつ売るか、いくらで売るかを仮定できれば、具体的な不動産投資シミュレーションが可能です。
シミュレーション結果で最低限確認すべき基準は
1.売却で借入は返済できるか
2.家賃と売却で投資した自己資金は回収できるか
です。
それでは不動産投資シミュレーションの結果を確認します。
1億円の物件を表面利回り6%で購入。家賃は購入時と変化なし。売却時の表面利回り6.5%。で売却した場合のシミュレーションです。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能で分析
確認したいのは売却税引き後キャッシュフローの部分です。約1,900万円プラスです。つまり、借入返済しても約1,900万円残ります。
この項目が重要なのは、売却税引き後キャッシュフローがプラスでない場合、売却時に手元資金から持ち出しの発生する可能性があるからです。今回は大丈夫そうです。
次に自己資金を回収できるかです。
この項目は、家賃収入の税引き後キャッシュフロー累計額と売却税引き後キャッシュフローを合算したキャッシュフロー額で確認します。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能で分析
今回の分析では約2,700万円残ることが分かります。この金額を投資した自己資金と比較します。
今回投資した自己資金は2,000万円です。2,700万円-2,000万円で約700万円増えて投資の出口をむかえることが分かります。
ちなみに、収益率を確認するのに便利な不動産投資指標のIRR(ATIRR)は3.56%です。IRRが便利なのは、3.56%を他の投資(株やREIT)と比較して収益率を比較できることです。
※IRRについては「2000万円の運用先を不動産以外で選択肢する方法」をご確認ください
不動産投資の出口シミュレーションは重要
不動産投資シミュレーションを考える時、インカムゲイン(家賃収入)を中心に考えがちです。しかし、出口(売却)に関するシミュレーションも不動産投資シミュレーションの重要な両輪です。
ぜひ、ご紹介の内容をご参考に分析を行っていただければと思います。
(動画)出口(売却)まで考えた不動産投資シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「出口(売却)まで考えた不動産投資シミュレーション」を行う方法を動画でご紹介します
物件売却時のキャッシュフロー分析をする方法
不動産投資シミュレーションを行う場合に、家賃収入(インカムゲイン)の分析は重要です。しかし、売却収入(キャピタルゲイン)の分析も疎かにできません。
物件売却時のシミュレーション
物件売却時のシミュレーションで確認しておきたい項目は、
1.借入を返済できる売却価格はいくらか
2.想定した売却価格で税引き後にいくら現金は残るか
の2つです。
不動産投資の売却シミュレーションの方法
売却シミュレーションを行う際に最低限必要な項目は
1.売却予定年月
2.売却想定価格
です。
売却予定年月は、売却を予定している年のある場合はその年で分析を行ないます。具体的に決まっていない時には、購入後10・15・20年等の任意の年で行ないます。
売却想定価格は、売却予定年の推定売却価格を計算して決定します。詳しくは「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご確認ください。
この2項目が決まれば売却時のシミュレーションが可能です。
不動産投資シミュレーション 借入は返済できるか
売却時に借入を返済できるかは非常に重要です。返済出来ない場合、売りたいのに売れない事態が発生する可能性があります。
以下は1億円の表面利回り6.5%の物件を10年後に9,000万円で売却した際のサンプルシミュレーションです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
売却価格から譲渡費用と借入残高を引いた金額の税引き前のキャッシュフローは約2,130万円残っています。
借入残高を返済できる目途となる価格は、譲渡費用によって変わりますが、借入残高と譲渡費用を足すことで約6,800万円程度だと分かります。
不動産投資シミュレーション 売却時の税引き後キャッシュフロー
9,000万円で売却した場合、税引き前で約2,130万円残ることは分かりました。続いて税引き後のキャッシュフローです。
税引き後キャッシュフローを計算するには「譲渡所得」と「所得税+住民税」の計算が必要です。
譲渡所得の計算方法は
■売却価格-譲渡費用-(取得費-減価償却費累計)
です。
※取得費の計算方法は「不動産売却に必要な知識 取得費」をご確認ください
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
今回のサンプルでは譲渡所得は720,000円になります。この譲渡所得に以下の所得税と住民税がかかります。
サンプル物件は購入10年後のシミュレーションです。長期譲渡所得になり税率20%+復興特別所得税の146,268円が税額になります。
税引き後キャッシュフローは「21,332,177-146,268 =21,185,909」です。
この税引き後キャッシュフローが売却で本当に手元に残る金額になります。
売却時の投資シミュレーションも必須
不動産投資シミュレーションを行う時にインカムゲインに偏りがちです。しかし、購入時から出口を想定して売却時のシミュレーションを行うことも重要です。ご参考にしていただき、シミュレーションしていただければと思います。
(動画)出口(売却)まで考えたシミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「出口(売却)まで考えたシミュレーション」を動画でご紹介します
価値の高い収益物件の定義とは
「価値の高い物件を購入したい」
不動産投資を検討した時に誰しも考えることです。では、価値の高い物件とはどんな物件でしょうか?
価値の高い収益物件とは
収益物件の価値は2つの要素で決まります。
1.インカムゲイン(毎年の収入)
2.キャピタルゲイン(売却の収入)
価値の高い物件は、1+2の合計値が多い物件です。
インカムゲインとキャピタルゲイン
収益物件の価値を考える場合、インカムゲインとキャピタルゲインどちらがかけても価値の高い物件とは言えません。
例えば、購入直後に潤沢な家賃収入を得ていたしても、将来性の低い場所で将来の売却価格が低下する物件は価値が高いとは言えません。
逆に、将来の売却価格は上昇しそうな場所でも、低利回り過ぎて、毎年キャッシュフローが大赤字の物件も価値の高い物件とは言えません。
では、どのようなシミュレーションで価値の高い物件かを検討すればいいでしょうか。
3つの不動産投資指標を使って確認すると分かり易いです。
不動産投資指標で物件価値を確認
インカムゲインとキャピタルゲインの両方の視点で物件価値をシミュレーションする場合には
1.税引き後キャッシュフローの累計額
2.自己資金回収年(自己資金回収率100%)
3.IRR(ATIRR)
の3つを利用します。
次に具体的な手順についてです。
不動産投資指標の確認手順
手順は以下の通りです。
1.毎年のキャッシュフロー計算をする
2.10年後の売却価格を推測する
3.3つの不動産投資指標を確認する
サンプルシミュレーションを使って説明します。
【サンプル物件】
1.毎年のキャッシュフローを確認
この際のポイントは税引き後キャッシュフローで確認することです。不動産投資の税金の影響は大きいです。不動産投資以外の所得が多い場合は特に影響が大きいです。
年収800万円と年収2,000万円の人が同じ物件に投資した場合の税引き後キャッシュフロー比較です。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用
※所得税等税金は収益物件分のみの金額
年間約10~15万円違います。10年後の累計額は約110万円違います。これが税引き後キャッシュフローで検討すべき理由です。
2.10年後の売却価格を推測
10年後の推測にはキャップレート*の考え方を取り入れます。
※キャップレートとは
※キャップレートの推移(2005~2022年)
今回のシミュレーションは、10年後の満室想定家賃=購入当初のままと過程して行います。
10年後の表面利回りを
■ベストシナリオ⇒表面利回り1%下落(物件価格上昇)
■標準シナリオ⇒表面利回りそのまま(購入時と同じ)
■ワーストシナリオ⇒表面利回り1%上昇(物件価格下落)
とした10年後の売却想定価格は
計算式は「満室想定家賃540万円÷10年後の表面利回り」です。
例えば、10年後の表面利回り5.0%の場合は 540万円÷0.05=10,800万円 です。
「表面利回り上昇=資産価値下落」「表面利回り下落=資産価値上昇」です。
*キャップレートは本来は純収益で計算されるものです。推定売却可能額を分かり易く表現する為に満室想定家賃と表面利回りを利用して計算しています。
3.不動産投資指標を確認
3つのシナリオで計算した推定売却可能額でシミュレーションした不動産投資指標を比較すると
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して集計
■税引き後キャッシュフロー累計額
10年後の表面利回りの違いにより約2,400万円違いがでます。
■自己資金を回収年
売却ありの場合は、ワーストシナリオの表面利回り7%でも自己資金を回収できます。ちなみに、インカムゲインだけで自己資金を回収しようとすると、借入返済完了後2055年(32年後)です。
■IRR(ATIRR)
10年後の表面利回りの違いによって2.76%~11.16%と大きくことなります。ちなみに、ATIRR=7.18%で自己資金を10年で倍にできます。
※IRR(ATIRR)については「2000万円の運用先を不動産以外で選択肢する方法」をご確認ください。Excelでのシミュレーション方法もご紹介しています。
価値の高い収益物件かシミュレーション
収益物件の価値を考える際には、購入時の表面利回りだけでは分かりません。将来のキャップレートは上昇するのか、下落するのかを考慮にいれてシミュレーションする必要があります。
また、不動産投資シミュレーションを行う場合にはインカムゲイン、キャピタルゲインのどちらかだけの分析にならないように注意が必要です。不動産投資シミュレーションのご参考にしていたければと思います。
(動画)収益物件のシミュレーション
※不動産投資ツールのアセットランクシミュレーターを利用して 税引き後キャッシュフロー 自己資金回収率 IRR(内部収益率)をシミュレーションする方法
※10年後の売却価格を推定して不動産投資のキャッシュフローシミュレーションに利用する方法
売却収益分析で確認したい3つの基準価格
不動産投資の収益シミュレーションを行う場合には2つの視点をもって分析する必要があります。
1.家賃での収益(インカムゲイン)
2.売却での収益(キャピタルゲイン)
のシミュレーションです。
現在、物件価格上昇に家賃上昇が追いついていないことで、表面利回りは10年前と比較して大幅に低下しています。
このような状況もありキャピタルゲインの重要性は増しています。このキャピタルゲインのシミュレーションで確認したい3つの価格があります。
売却シミュレーションで確認したい3つの価格
確認したい3つの価格は
1.売却キャッシュフローがマイナスにならない価格
2.自己資金を回収できる価格
3.目標収益を達成できる価格
この3つの分析を行うことで安全性と収益性両面の分析ができます。
売却キャッシュフローがマイナスにならない価格
まず確認しておきたいのは、売却キャッシュフローがマイナスにならない価格です。
この項目は死守しなければならない基準です。理由は、基準を下回った場合、借入返済ができずに売却したくても出来なくなる可能性があるからです。
新築重量鉄骨造 9,000万円 表面利回り6.5%の物件を使ってサンプルシミュレーションをします。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
最悪の結果を想定したシミュレーションを行うことで、出口の際に4,850万円を下回ることは許されないことが分かります。
自己資金を回収できる価格
次に確認が必要なのは、自己資金を回収できる価格です。
投資した自己資金は返ってきますので時間と労力を除けば損はしない(インフレは考慮しない)売却価格です。
以下は自己資金1,800万円を回収できるかシミュレーションしたものです。
自己資金100%回収(自己資金回収率100%)したかは、インカムゲイン+キャピタルゲインの合計値で確認します。
今回のサンプルでは約5,100万円で売却できれば自己資金を回収できます。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
自己資金を回収できない投資では話になりませんので、この基準も最低限超えたいラインです。
目標収益を達成できる価格
前の2つの基準は、最低限超えたい基準でした。
3つめは、目標収益を達成する売却価格はいくらかです。この基準を比較するには不動産投資指標のIRRを利用します。
※IRR(BTIRRとATIRR)についてはこちらをご確認ください
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
IRRを利用する際に覚えておくと便利な数値は7.2%です。約7.2%で10年運用できると自己資金を倍にできます。今回のシミュレーションでは約7,200万円でこの基準を達成できます。
売却シミュレーションの重要性
不動産投資シミュレーションを行う際に、つい、インカムゲインだけの分析を行ってしまいがちです。しかし、キャピタルゲインまで含めた分析を行わないとシミュレーションとしては不完全です。
ぜひ、この内容をご参考にしていただきシミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)売却収益シミュレーションを行う方法
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを利用した売却収益シミュレーションの入力方法のご紹介
高利回り物件=良い物件という勘違い
不動産投資を検討する時には、様々な不動産投資指標を利用します。その中でも最初に確認する指標は「利回り」だと思います。
利回りの種類
利回りには色々な種類があります。よく利用されるのは以下の2つです。
1.表面利回り: 収入÷物件価格で計算。少ない情報で計算できるので最も利用される利回り
2.FCR(Free and ClearReturn): (収入-維持管理費)÷(物件価格+取得諸費用)で計算。実質利回りと呼ぶ場合もあり。実質収入(ネット収入)と物件購入時に必要な費用を考慮して計算する正確性の高い利回り
さて、この利回り、高ければ高いほど良いと考えている方もいらっしゃいます。
しかし、実際は異なります。特に、人口減少・インフレ時代の投資ではリスクの高い考え方になりかねません。
※その他の利回りと不動産投資指標
高い利回りには理由がある
一般市場に出回っている高利回り物件には必ず訳があります。一例を挙げると
1.所在地の人口減少で家賃下落、空室増が予測される
2.需要に対して賃貸物件の供給過剰で家賃下落、空室増が予測される
3.築年数経過で修繕費の増加が見込まれる
等です。
これらの理由を見ると利回りが、一般的に「都心<地方」「駅近<遠方」「築浅<築古」になるのと一致するのが分かります。
基本的に高利回り物件は内在するリスクが高いと言えます。
でも「利回り高ければキャッシュフロープラス部分が多いから大丈夫でしょ」と考えるかもしれません。
しかし、この考え方は予想されるインフレと人口減少による都市一極集中を考えると高いリスクを抱えるかもしれません。
高利回り vs 低利回り
それでは、サンプルシミュレーションを使って比較します。
1.高利回り物件:表面利回り8.5%
2.低利回り物件:表面利回り5%
高利回りのキャッシュフローシミュレーションを確認すると、初年度(2024年)は税引き後キャッシュフロー(CF)は約237万円です。対して低利回りは約12万円のマイナスになっています。
しかし、高利回り物件は立地等が悪く、徐々に空き室が増加し、2031年には約130万円まで税引き後キャッシュフローは減っています。そして、もっとも大きな影響を与えるのは出口(売却)時です。
高利回り物件の売却
投資物件の場合、売却する相手も基本的に投資目的の相手になります。つまり、自分の買った時と同等のキャッシュフローを求められる可能性が高いです。
ところが、高利回り物件の空き室は購入時の10%⇒30%に増加しています。この状況で同等のキャッシュフローを得るには、1億円で購入した物件を5,500万円~6,000万円程度で売却する必要があります。
それに対して、高利回り物件は立地も良く空き室増加しなかったため、購入時に近い価格で売却できそうです。
その結果を反映したサンプルシミュレーションが、最終年2032年の赤枠内の税引き後キャッシュフロー累計と自己資金回収率です。
高利回り物件は約5,900万円でしか売却できず、投資した自己資金2,000万円の約半分の1,000万円しか回収できませんでした。つまり1,000万円損したことになります。
それに対して、低利回り物件は、好立地なため約7%下落の9,300万円で売却できました。結果、自己資金を回収して160万円程度手元に残りました。
10年、20年後まで考慮する
今回のサンプルは1シナリオに過ぎません。しかし、高利回り物件は多くの場合、何らかのリスクを内在しています。
そのリスクを自分でコントロール可能だと判断出来ない場合は、立地の良い、築浅物件へ投資するよりも、最終的な収益性は低くなる可能性があります。
投資開始当初に良いキャッシュフローの高利回り物件は、特に長期的なリスクがないか考慮したシミュレーションを行う必要があります。
(動画)出口迄の収益性をIRRで確認する方法
3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する
不動産価格が上昇したこともあり、私の周辺でも、物件売却を検討している人が増えています。
売却の際に忘れてはいけないのが「売却したい価格 ≠ 売却できる価格」だということです。
今日は、事前に売却できる価格を検討する方法についてです。
売却できる価格
売却できる価格を検討する際も不動産投資指標を利用します。
1.収益還元法
2.積算価格法
3.相場的価格法
聞いたことのある指標ばかりだと思います。
3つとも、投資に見合う物件か判断するのに利用する指標です。
投資物件は、一部物件を除いて、売る相手も投資目的で購入する人です。住宅用のように「少し高いけど素敵だから買おう」とはなりません。
売却相手も、不動産投資指標を使って、割高か、割安かを判断して購入を決定します。
つまり、売却時にも不動産投資指標を使って、売却できる価格(相手が割安に感じる)を検討できるということです。
それでは、3つの指標の利用方法を確認します。
3つの指標を利用する
3つの指標の利用方法と計算方法をまとめました。
それでは具体的な手順についてです。
3つの指標を利用する手順
▼手順1:物件種類によって利用する指標を決定
■1棟物⇒収益還元法と積算価格法
■区分所有⇒収益還元法と相場的価格法
1棟物は、相場的価格法は類似物件を複数探すのが難しいため利用しません。
区分所有は、積算価格を購入時に利用する投資家は多くないため利用しません。
▼手順2:2つの指標を計算
上の表の計算式で計算を行います。
▼手順3:2つの指標を比較
2つの計算結果は多くの場合、乖離する金額になります。
乖離のある時は、収益還元法を優先して、
■収益還元法 < 積算価格・相場的価格:収益還元法より高い金額で売却できる可能性あり
■収益還元法 > 積算価格・相場的価格:収益還元法より低い金額が妥当な価格の可能性あり
と判断します。
1年に1回の確認は必須
推定の売却価格シミュレーションは、本格的に売却を検討する時だけではなく、1年に1回程度行うことをお勧めします。
理由は、不動産投資の弱点の1つである、流動性の低さ(現金化しずらい)を少しでも補うためです。
突発的な有事(社会的な、個人的な)が発生した場合、現金化しずらい点は大きなリスクになります。このような際も、「○○円ならば売却できる可能性が高い」ということを知っていることで焦らず対応できます。
不動産を市場より安く購入できるケースの多くは、現金化を急ぐ人からの購入です。逆に言えば、現金化を急がなくてはならない時に買いたたかれる可能性があるということです。
日頃から、売却できる価格を知っておくことで、不利な状況を少しでも防ぐことができます。また、自分の資産状況(B/S)の把握にも役立ちます。
ご参考にしていただき、定期的に売却できる価格を確認するきっかけにしていただければと思います。
※動画でアセットランクシミュレーターを使って3つの指標を計算する方法をご紹介しています
不動産売却に必要な知識「取得費」
円安による海外投資家の流入、低金利の継続等の影響で、不動産価格は10年前には考えられないくらい高くなっています。
このような環境もあり、含み益の発生している不動産の売却を検討している投資家さんが増えています。
今日は、不動産売却に必要な知識「取得費」についてです。
取得費とは
取得費は、売却時の譲渡所得を計算する際に利用します。
譲渡所得は
譲渡所得 = 売却価格 – 取得費 – 譲渡費用
で計算します。
物件を個人で所有していた場合は分離課税で、譲渡所得に以下の税率をかけたものが税額になります。
■短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%
■長期譲渡所得(所有期間5年超):20.315%
20%超の税金がかかります。出口戦略を考える際に譲渡所得に大きな影響のある取得費は重要項目であることがお分かりいただけると思います。
では、取得費の計算方法についてです。
取得費の計算方法1
物件価格に物件購入で必要になった諸費用、改修費等を加算した金額が取得費になります。
ただ、全ての諸費用が含まれる訳ではありません。
取得費に含まれる主な諸費用は以下です。
■仲介手数料
■固定資産税清算金
■資産価値向上に繋がる改修費
登録免許税・不動産取得税・印紙税・ローン手数料は、損金として処理しますので取得費には含みません。
サンプルを確認すると
このサンプルの場合、物件価格+仲介手数料の合計が取得費になっています。
しかし、これだけでは売却時に利用する取得費の計算はできません。
取得費の計算方法2
取得費は大きく分けると、土地と建物(設備含む)に分けられます。
建物部分に関しては、毎年、減価償却して費用化していきます。
この費用化した減価償却の累計額を取得費からマイナスする必要があります。
※アセットランクシミュレーター収支詳細機能一部抜粋
今回のサンプルの場合、減価償却累計額の12,192,047円を取得費(償却前)の51,716,000円から引いた39,523,953円が取得費になります。
また、譲渡所得は「売却価格-取得費-譲渡費用」の3,676,047円になります。
出口戦略を考える際の必須知識
投資前に出口戦略(売却)を考慮に入れた不動産投資シミュレーションを行うことは重要です。
その際の税額シミュレーションを行うには取得費の知識は必須です。
出口を考慮したシミュレーションを行う際の参考になれば幸いです。
※アセットランクシミュレーターを利用して売却シミュレーションを行う方法を動画でご紹介しています。
金利上昇が出口戦略に与える影響
不動産投資を進めていると「空室」「家賃下落」「修繕」など様々なリスクに直面します。その中でも「金利上昇」はもっとも自分でコントロールしにくいリスクです。
7月23日のメールセミナーで、金利上昇を乗り切れるかのポイントは3つと書きました。
1.金利上昇してもキャッシュフローが赤字にならないか
2.次にインカムゲインで目標の収益を達成できるか
3.最後に売却しても自己資金等を回収できるか
今日は金利上昇リスクで、最も影響の大きい「3.売却しても自己資金等を回収できるか」を確認する方法です。
1.2.については「金利が上昇しても問題ないか確認する方法」をご確認ください。
金利上昇の不動産投資への影響
以下のチャートは米国の政策金利のチャートです。基本的に変動金利は「政策金利+α」で決まります。
チャートを見ると半年で2%以上金利が上昇しています。つまり、連動する変動金利も2%程度上昇する可能性があります。
日本はアメリカのような景気の強さ、インフレ率ではありませんので、ここまで極端な動きは現在のところ考えにくいです。
しかし、将来の金利上昇リスクを考える際に参考になります。
※変動金利と固定金利の決まり方が平易に記載されていましたご参考にご紹介します(外部サイト)。自分でもできる! 住宅ローンの金利動向をつかむ方法
金利上昇の不動産価格へ影響
金利が上昇すると、不動産価格は基本的に下落します。理由は「上昇した金利と同様に表面利回り」も上昇するからです。
例えば、物件価格1億円、表面利回り5%(家賃500万円)の物件を1%の変動金利で購入したとします。数年後、金利が2%になりました。
この場合、購入時の金利(1%)と表面利回り(5%)の差の4%を手に入れようとすると、表面利回りは6%必要になります。
家賃変動を考慮しない場合、6%の表面利回りを実現するための物件価格は、500万円÷6%=8,333万円 です。つまり、投資家が納得する4%差の利回りで売却するには、この価格で売る必要があります。
この例は、不動産価格の他の影響を考えずに非常に単純化されています。しかし、基本的な動きはこのようになります。ちなみに、ここ数年、日本の不動産価格が上昇した一因はこの例と逆で、金利が下落したので、表面利回りが低下したからです。
それでは、サンプル物件を使って金利上昇が出口戦略に与える影響を確認します。
キャッシュフローシミュレーション
このサンプルを使って確認します。
当初の金利は1.25%です。その金利が3年後から毎年0.5%上昇して、現在のアメリカ並みに2%上昇したことを想定したシミュレーションです。
潜在的総収入(満室想定家賃)は一般的な家賃下落率1%に、物価上昇を加味した0.5%を金利上昇の2年後から加算して家賃下落率を0.5%に調整しています。家賃上昇を2年後~としたのは、家賃は約1年半~2年程度経過してから物価上昇分を織り込んでいくことが多いためです。
※アセットランクシミュレーターでの分析結果を一部抜粋
金利上昇の影響で、当初約127万円あった、税引き後キャッシュフロー(CF)が約67万円まで減少することが分かります。金利上昇がキャッシュフローへ与える影響の大きさが分かります。
さて、それでは、本題の売却を加味した投資収益への影響を確認します
金利上昇の出口への影響
購入から7年経過後の2028年に売却したキャッシュフローシミュレーションを行います。
売却価格は、2%の金利上昇分を表面利回りに加算した9%の表面利回りを2028年の潜在的総収入(満室想定家賃)で確保できる価格約5,946万円です。
シミュレーション結果は
※アセットランクシミュレーターでの分析結果を一部抜粋
不動産投資で一番恐れるべき事態が発生します。売却しても借入が返済できません。
ちなみに、出口戦略を考える際にもっとも重要な指標、自己資金回収率は32.84%と投資した自己資金1,600万円の約1/3の525万円しか回収できません。
最悪の投資結果になります。
金利上昇の影響は大きい
今回のシミュレーションでは、投資期間中はCFの黒字を確保でき、何とか投資として成り立っていました。しかし、金利上昇の影響で売却価格が下落したため、
■売却で借入を返済できない
■自己資金を回収できない
という非常に厳しいシミュレーション結果になりました。
金利上昇は、家賃収入等のインカムゲインだけではなく、売却時のキャピタルゲインにも大きな影響を与えます。
海外の動向等から現実味を増した金利上昇リスクについて検討とシミュレーションを行うきっかけにしていただければ幸いです。
※アセットランクシミュレーターを利用したシミュレーション方法を動画でご紹介しています
※関連記事:
・変動金利から固定金利へ借り換えが必要か検証する方法
・予測される金利上昇への対策を検討する方法
・不動産の出口戦略の為に知っておきたいルール
10年後の売却価格を推定する方法
不動産投資は、出口戦略(売却)まで含めた分析を行っておくことが重要です。
理由は「投資の成否は出口まで分からない」からです。
どんなに、家賃収入を上手く得ていても、売却で失敗すれば、それまでの努力が失われます。
しかし、物件取得時に10年、15年後にいくらで売却できるかを推測するのは、なかなか難しいです。
そこで、今日は、10年後の推定売却価格を計算する方法についてです。
10年後の推定売却価格
10年後の推定売却価格を計算する方法は、とてもシンプルです。
推定売却価格=10年後の想定満室家賃÷(取得時表面利回り+0.5~3%)
電卓レベルで計算できる内容です。
推定売却価格の計算方法
推定売却価格が
10年後の想定満室家賃÷(取得時表面利回り+0.5~3%)
で計算できる理由は、
ファミリー向けの区分所有等を除いて、投資用物件は売却する相手も「投資家」だからです。
不動産投資で一番最初に確認するのは、多くの方が表面利回りです。
つまり、投資家が求める表面利回りの物件価格ならば売却できる可能性が高いことになります。この価格が推定売却価格です。
それでは、項目ごとに確認していきます。
サンプルを使った計算結果
計算に必要な項目は
1.10年後の想定満室家賃(潜在的総収入)
2.10年後の想定表面利回り
です。
1. 10年後の満室時の家賃収入合計(年間)のことです。
10年後には家賃が、取得時より下落している可能性が高いです。それを考慮した満室家賃を利用します。
2. 10年後には、取得時よりも高い表面利回りを、投資家から求められる可能性が高いです。それを考慮した表面利回りを利用します。
では、サンプル物件を使って具体的に確認します。
1.10年後の想定満室家賃(潜在的総収入)は毎年1%下落を想定した家賃収入を利用します。
今回のサンプルの場合、4,795,966円になります。
毎年1%下落を想定する計算根拠は「賃貸マンションと比較した賃貸アパート実態分析」をご確認ください。
2.10年後の想定表面利回りは、取得時の「表面利回り+0.5~3%」で計算します。今回のサンプルでは。8%~10.5%です。
加算する%は地域、物件種類によって異なります。投資物件サイト等で、10年後の近い築年数の表面利回りを調べた上で加算する%を決定してください。
サンプル物件の結果
それでは、サンプル物件の結果を確認します。
今回のサンプルの場合、7,000万円で購入した物件の推定売却価が約5,300万円~6,000万円です。
この推定売却価格を使用して、売却時のキャッシュフローを確認する等、シミュレーションを行うと、現実感のあるシミュレーションができます。
売却シミュレーションで確認したい項目については「不動産の出口戦略の為に知っておきたいルール」をご確認ください。
売却まで含めたシミュレーションは、非常に重要です。今回の記事をご参考に分析していただければと思います。
※アセットランクシミュレーターを利用し推定売却価格を確認する方法をご紹介しています。
不動産の出口戦略の為に知っておきたいルール
不動産投資の収入は大きく2つに分けられます。
・家賃収入(インカムゲイン)
・売却収入(キャピタルゲイン)
です。
今日は、売却収入のシミュレーションで確認したい項目です。
売却シミュレーション
売却シミュレーションで知っておきたいのは
1.売却キャッシュフロー(売却CF)
2.売却時の税金
の2つです。
それでは、この2つを具体的に確認します。
売却キャッシュフロー
売却キャッシュフローは
「売却額-譲渡費用-借入残高」
で計算します
この売却キャッシュフローで確認したいポイントは
「借入を返済してお金が残るか」です。
以下は7,000万円(個人所有)で購入した物件を売却したシミュレーションです。
※アセットランクシミュレーターを利用して分析
二重線の売却CFを確認すると、1. 5,000万円の売却シミュレーションの場合はお金が約220万円残っています。
しかし、2. 4,500万円では約250万円のマイナスになってしまいます。
これが意味するところは、売却額から売却に必要な費用を払った残額で借入返済をした結果
「5,000万円で売却できれば手元にお金が残る」
「4,500万円は約250万円の持ち出しが生じる」
ということです。
売却時のシミュレーションを行う場合は
「いくらで売却できれば借入を返済可能か」の確認は必須です。
理由は、2.のように返済が不可能な場合、手放したくても手放せないという最悪の状態に陥る可能性があります。
売却の税金ルール
次に売却時の税金についてです。
税金計算の基となる課税所得は
「売却額-譲渡費用-(取得費用(物件価格+仲介手数料等)-減価償却費累計)」
で計算します。
この課税所得に個人で不動産を所有している場合、売却分の所得は分離課税で課税されます。
「売却の課税所得は不動産所得や給与収入等の課税所得とは別に扱われる」という意味です。
また、売却税率を決めるルールの特徴として、バブルの遺物とも言えるルールですが、不動産の所有期間に応じて異なる税額が適用されます。
※国税庁のホームページでも確認できます。
例えば2022年に売却する場合は2017年1月1日以降に取得した物件は「短期譲渡所得」それより前は「長期譲渡所得」となります。
出口シミュレーション
不動産投資は、売却(出口)まで投資の成否が分かりません。
投資開始時、投資期間中を通して、現状にあったシミュレーションを行って
1.CFで借入返済できる売却額はいくらか
2.売却で必要になる税額はどのくらいか
3.インカム・キャピタル合わせた投資成績(自己資金回収率等)はどうか
※3.の関連記事はこちら
を確認する必要があります。
※アセットランクシミュレーターを利用して売却シミュレーションをする方法をご紹介しています。