金利変動を考慮した分析から見えてくること
不動産投資の重要項目の1つに金利があります。変動金利を選択して借入を行った場合、不動産投資シミュレーションで金利上昇を考慮した分析を含めて行う必要があります。
金利上昇を考慮したシミュレーション
金利変動の発生するタイミングは、変動金利は短期プライムレートに変動があった場合。固定金利は10年物国債利回りに変動のあった場合です。
このような変動を想定して行う、金利変動シミュレーションで最低限確認しておきたい結果は2つです。
1.金利上昇してもキャッシュフロー赤字は発生しないか
2.金利上昇を考慮した売却価格での収益性
キャッシュフロー赤字にならないか
今回は以下のサンプル物件を利用してシミュレーションします。
金利変動なしと変動ありのシミュレーションです。変動ありは投資開始翌年から0.5%ずつ3年間上昇して、その金利が10年目まで続くシナリオです。
※不動産投資ソフト アセットランクシミュレーターでシミュレーション
10年目の利息支払額は、変動ありは変動なしに対して約87万円増加します。また、税引き前キャッシュフローで約63万円。税引き後キャッシュフローは約50万円減少します。
このように収益性は大きく低下しています。しかし、手元資金の持ち出しになる税引き後キャッシュフロー赤字は2%⇒3.5%の変動ではなりません。ちなみに、金利が2%⇒6%程度まで上昇すると税引き後キャッシュフローは赤字になります。
金利上昇後の売却価格
次に、見落としがちなのは、金利上昇は売却時の収益にも大きな影響を与えることです。
ファミリー向け区分所有を除けば、投資物件の売却先は、ほぼ投資家になります。つまり、どれだけ収益を上げられるかの視点で物件価格を決定します。
金利上昇は収益に大きなマイナスです。同等の収益を求められた場合、売却できる価格(買ってくれる価格)は低下傾向になります。
以下は金利変動を考慮しない時と、した時の推定の売却価格での売却時のキャッシュフロー分析です。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
売却時に売却先の投資家に求められる表面利回りは、金利上昇した分程度の表面利回りになる可能性があります。今回のサンプルは表面利回り6.5%です。金利上昇分の1.5%を加算すると表面利回り8%となります。
表面利回り6.5%時の売却価格約8,000万円に対し、表面利回り8%時の推定売却価格は約6,500万円となります。その結果売却時に得られる税引き後キャッシュフローは約1,520万円減少します。
推定の売却価格計算方法については「10年後の売却価格を推定する方法」をご確認ください。
今回のシミュレーションは、インフレに伴う家賃上昇を考慮していません。多くの場合、金利上昇はインフレ抑制のために行なわれます。
インフレの家賃上昇と経年劣化の家賃下落双方を考慮して売却価格を推定すると、毎年0.5%家賃上昇で67,984,138円。1%上昇で71,089,488円です。いずれも金利上昇前の価格には及びません。インフレの家賃上昇を考慮しても金利の影響は大きく残ります。
金利はインカム・キャピタル両面に影響
金利上昇はインカムゲイン(家賃収入)のキャッシュフローにも、キャピタルゲイン(売却益)のキャッシュフローにも多大な影響を与えます。投資の成否は、この2つの収益の和よって決まります。
金利上昇が現実味をおびてきたこの機会に、金利変動のシミュレーションを行う参考にしていただければと思います。
(動画)金利を変動させた不動産投資シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「金利を変動させた不動産投資シミュレーション」を行う方法を動画でご紹介します