個人と法人どちらで所有すべきか検討する方法
物件を個人と法人どちらで所有すべきかは多くの大家さんの悩むポイントの1つです。ネット上でも個人所有・法人所有に関する内容を見かけます。
しかし、家賃収入(インカムゲイン)を中心とした内容が多く、売却益(キャピタルゲイン)まで含めた内容は少ないです。
そこで、売却益まで含めて比較したいと思います。
2つの不動産投資指標を利用する
個人所有と法人所有の成績を比較するために2つの指標を利用します。
利用する不動産投資指標は
1.税引き後キャッシュフロー累計・・税引き後キャッシュフローの投資期間中の合計値。投資によって得られる合計金額
2.IRR(BTIRR)・・自己資金に対する収益率を表す指標
※IRRの詳細は「2000万円の運用先を不動産以外で選択肢する方法」をご確認ください
を利用します。
個人と法人の税金ルール
個人と法人で税引き後キャッシュフローに違いの出る主な理由は、
1.課税所得に対する税率が異なる
2.売却益を個人の場合は分離課税。法人場合は合算して課税
です。
1.課税所得に対する税率が異なる
個人と法人の課税所得対する税率は以下です
■個人
■法人
※実効税率は地域等の諸条件によって異なります。
大きく税率が異なります。
2.売却益を個人の場合は分離課税。法人場合は合算して課税
法人の場合は家賃収入と売却益を合算して課税所得として計算します。しかし、個人の場合は家賃収入と売却益は分離して計算します。
売却益の税率は
個人の売却税率は法人実効税率よりも低くなっています。
個人と法人の家賃収入による比較
ここからはサンプル物件を使ってシミュレーションしながら、個人・法人での不動産投資を比較します。
15年後に購入価格と同じ1.5億円で売却できたことを想定して、家賃収入額による個人所有・法人所有の有利・不利をシミュレーションします。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用
※個人の家賃収入への復興所得税は含まず計算
※その他課税所得600万円あり
家賃収入1,400万円までは個人所有の収益性が高いです。1,600万円~は法人所有が高くなります。課税所得で見ると約850万円~957万円程度。その他課税所得を合算すると1,500万円程度です。
個人と法人の売却額による比較
売却額による個人・法人比較は、家賃収入1,000万円。課税所得はその他課税所得を合算して約850万円~950万円の場合で比較します。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用
※個人の家賃収入への復興所得税は含まず計算
※その他課税所得600万円あり
1.1億円の売却まで法人は有利ですが、売却額(売却益)が高いほど個人が有利になっています。これは、個人の売却益の税率が20.315%なっているためです。
個人と法人の選択基準
個人所有と法人所有の基準となる課税所得を1,000万円前後とする内容を見かけます。しかし、売却益まで考慮すると1,000万円程度だと個人所有が有利な可能性もあります。
ご紹介した税金ルール以外にも、個人所有と比較して法人所有は損金化しやすい費用が多い。欠損金の繰り越し期間が長くなる等のメリットもあります。逆に、法人設立費用等が必要になるデメリットもあります。
給与等の投資物件以外の課税所得額を含めて、個別にシミュレーションを行わないと分からないというのが実際の結論です。本当にざっくりとした感覚になりますが、課税所得約1,200万円~1,500万円以上は法人所有が有利になる可能性が高いです。
個人所有と法人所有のどちらが有利かは前提条件によって大きく異なります。この内容をご参考に個人・法人所有の収益性比較をしていただければと思います。
(動画)個人所有と法人所有シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して個人所有と法人所有のシミュレーションを行う方法