不動産投資で重要な純資産額の推移
不動産投資の成功話として、年収〇千万円・投資総額〇億円など、家賃収入の多寡や投資総額に触れる本は良くあります。
しかし、不動産投資の成否は家賃収入の多寡や投資総額では決まりません。
不動産投資で重要な純資産の推移
純資産と聞くと企業の決算書類を思い浮かべるかもしれません。しかし、不動産投資の成否を確認する純資産はもっと単純です。
最初に意識したいのは、不動産投資を資産運用として考えた場合、目的は純資産を効率よく(短い時間)で増やすことであるという点です。
この目的を意識すると、投資開始前の純資産と現時点の純資産額を比較しないと不動産投資の成否は分からないことに気づけます。
不動産投資の純資産推移を確認するために必要なのはわずか4項目です。
1.投資した自己資金額
2.投資のための借入額又は借入残高
3.税引き後キャッシュフロー累計額
4.物件の時価額
です。
投資開始前と開始直後の純資産推移
それでは、具体例を挙げて確認します。
表面利回り7% 8,000万円の新築木造(諸費用500万円)を、自己資金2,000万円+借入6,500万円で購入した場合の純資産額推移です。
純資産額を確認したり、頭を整理するにはバランスシート(B/S)を利用すると便利です。簡単に説明すると、向かって左側に現金・不動産等の資産を、右側に借入等の負債を入れます。「純資産=左側合計-右側合計」です。
物件購入前は、不動産投資に利用する自己資金2,000万円が純資産です。物件購入直後は、購入した8,000万円の物件と借入額の項目が追加されています。
自己資金は投資に利用したので0円になっています。また、諸費用として500万円を支払ったため純資産額は1,500万円となります。
物件の時価は、購入価格の8,000万円としています。もし、時価より高い価格で買って(買わされて)しまうと、純資産額は購入時点でさらに減少してしまいます。
今回の目的は不動産投資でどれだけ純資産が増えたか比較することのため、他の資産は含めません。
また、本来のB/Sでは諸費用内で減価償却の必要な取得費は物件にプラスして計上される等、会計上のB/Sとは異なります。しかし、実態を把握するには分かりにくいため、キャッシュベース(お金の動き)で考えます。
10年後の純資産額
次に10年後に純資産額はどうなるか、2つのシナリオで比較します。
シナリオ1:家賃収入は標準シナリオの年1%ずつ下落。10年後の物件時価は6,400万円(10年後家賃収入÷8%)
シナリオ2:地域の人口減少厳しく家賃収入は年1.5%下落。10年後の物件時価は5,400万円(10年後家賃収入÷9%)
今回の例は投資開始10年後としました。実際は1年後でも、5年後でも構わないとご理解ください。
このバランスシートのポイントは、CF累計(税引き後キャッシュフロー累計)と物件(物件の時価)の部分です。
CF累計(税引き後キャッシュフロー累計)は税金支払い後に本当に残った金額の累計額です。
物件は推定される売却可能額です。売却可能な物件価格のシミュレーション方法は
「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」
「10年後の売却価格を推定する方法」
をご確認ください。
シナリオ1は、物件購入前に2,000万円だった純資産額は3,200万円に増加しています。1年あたり120万円増加した計算になります。単利計算で6%です。
シナリオ2は、2,130万円と130万円しか増加していません。1年あたり13万円。単利計算で0.65%です。
シナリオ2は、純資産は減少していないものの、国債と変わらない利回りです。投資としては失敗と言えます。
不動産投資の成否は純資産額で考える
不動産投資の成否を考える際に、家賃収入の多寡や投資総額ではなく、純資産増減で考えるべきです。純資産額で考えるメリットは、疑似的に出口(売却)まで考慮した投資の成否を確認できることです。
不動産投資で資産運用を考えた際の目的は「純資産」を増やすことです。1年に1回など定期的に純資産推移を確認することをお勧めします。その際に、この記事をご参考に分析していただければと思います。
(動画)純資産額計算に必要な4項目を確認
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して純資産額を推定する方法