高利回り物件=良い物件という勘違い
不動産投資を検討する時には、様々な不動産投資指標を利用します。その中でも最初に確認する指標は「利回り」だと思います。
利回りの種類
利回りには色々な種類があります。よく利用されるのは以下の2つです。
1.表面利回り: 収入÷物件価格で計算。少ない情報で計算できるので最も利用される利回り
2.FCR(Free and ClearReturn): (収入-維持管理費)÷(物件価格+取得諸費用)で計算。実質利回りと呼ぶ場合もあり。実質収入(ネット収入)と物件購入時に必要な費用を考慮して計算する正確性の高い利回り
さて、この利回り、高ければ高いほど良いと考えている方もいらっしゃいます。
しかし、実際は異なります。特に、人口減少・インフレ時代の投資ではリスクの高い考え方になりかねません。
※その他の利回りと不動産投資指標
高い利回りには理由がある
一般市場に出回っている高利回り物件には必ず訳があります。一例を挙げると
1.所在地の人口減少で家賃下落、空室増が予測される
2.需要に対して賃貸物件の供給過剰で家賃下落、空室増が予測される
3.築年数経過で修繕費の増加が見込まれる
等です。
これらの理由を見ると利回りが、一般的に「都心<地方」「駅近<遠方」「築浅<築古」になるのと一致するのが分かります。
基本的に高利回り物件は内在するリスクが高いと言えます。
でも「利回り高ければキャッシュフロープラス部分が多いから大丈夫でしょ」と考えるかもしれません。
しかし、この考え方は予想されるインフレと人口減少による都市一極集中を考えると高いリスクを抱えるかもしれません。
高利回り vs 低利回り
それでは、サンプルシミュレーションを使って比較します。
1.高利回り物件:表面利回り8.5%
2.低利回り物件:表面利回り5%
高利回りのキャッシュフローシミュレーションを確認すると、初年度(2024年)は税引き後キャッシュフロー(CF)は約237万円です。対して低利回りは約12万円のマイナスになっています。
しかし、高利回り物件は立地等が悪く、徐々に空き室が増加し、2031年には約130万円まで税引き後キャッシュフローは減っています。そして、もっとも大きな影響を与えるのは出口(売却)時です。
高利回り物件の売却
投資物件の場合、売却する相手も基本的に投資目的の相手になります。つまり、自分の買った時と同等のキャッシュフローを求められる可能性が高いです。
ところが、高利回り物件の空き室は購入時の10%⇒30%に増加しています。この状況で同等のキャッシュフローを得るには、1億円で購入した物件を5,500万円~6,000万円程度で売却する必要があります。
それに対して、高利回り物件は立地も良く空き室増加しなかったため、購入時に近い価格で売却できそうです。
その結果を反映したサンプルシミュレーションが、最終年2032年の赤枠内の税引き後キャッシュフロー累計と自己資金回収率です。
高利回り物件は約5,900万円でしか売却できず、投資した自己資金2,000万円の約半分の1,000万円しか回収できませんでした。つまり1,000万円損したことになります。
それに対して、低利回り物件は、好立地なため約7%下落の9,300万円で売却できました。結果、自己資金を回収して160万円程度手元に残りました。
10年、20年後まで考慮する
今回のサンプルは1シナリオに過ぎません。しかし、高利回り物件は多くの場合、何らかのリスクを内在しています。
そのリスクを自分でコントロール可能だと判断出来ない場合は、立地の良い、築浅物件へ投資するよりも、最終的な収益性は低くなる可能性があります。
投資開始当初に良いキャッシュフローの高利回り物件は、特に長期的なリスクがないか考慮したシミュレーションを行う必要があります。
(動画)出口迄の収益性をIRRで確認する方法