Archive for the ‘不動産投資指標’ Category
IRRの利用方法と目標値の決め方
IRR分析は不動産投資シミュレーションの中でも必ず行っておきたい分析の1つです。
IRR分析を行う手順
Internal Rate of Return(IRR/内部収益率)は不動産投資と他の投資の収益率を比較する際に便利な指標です。自己資金を効率よく運用するという、資産形成で重要なファクターを確認するのにも使いやすい指標です。
IRRには2種類あります。
1.BTIRR⇒税引き前の金額で計算
2.ATIRR⇒税引き後の金額で計算
IRRを計算する際の必要項目は
1.投資した自己資金額
2.賃貸期間中の税引き前キャッシュフロー or 税引き後キャッシュフロー
3.売却で受け取れるキャッシュフロー額
この3項目の情報があればExcelで簡単に計算できます。Excelを利用したIRRの計算例は
赤枠の中がIRRの計算結果と計算式です。さらに、Excelでの計算方法を知りたい方は「IRR関数(Microsoft社)」をご確認ください。
IRRは単純に数値が高ければ高いほど収益性は高く、早い速度で資産増加していると言えます。
では、どのくらいの数値を目標にしたらいいでしょうか。
IRRの妥当な目標値
高ければ、高いほどいいと言っても極端に30%、50%という目標を立てるのは現実離れしています。
IRRの目標を立てる場合は、
1.自分の資産を何年でいくらにしたいか(内部視点)
2.現実的にどのくらいで運用できそうか、すべきか(外部視点)
の2つから決定します。
1.自分の資産を何年でいくらにしたいか(内部視点)は、
例えば、2,000万円の自己資金を10年後に倍の4,000万円にするという目標を立てます。それには何%のIRRが必要かという視点で考えるということです。
2.現実的にどのくらいで運用できそうか、すべきか(外部視点)を検討する場合は、
10年物国債利回りを基準にします。国債は元本保証で必ず一定の利回りを取得できます。国債への投資と比較してリスクの高い不動産投資をした場合に+何%(リスクプレミアム)あれば投資に値するかを検討します。
例えば、国債利回り1%の場合、不動産投資のリスクを考えると、都心の超優良物件でも+2%程度のBTIRR=3%以上は確保したいです。
これが、人口減少の激しい地方物件や築古物件の場合は、より高い5~10%程度のリスクプレミアムを加算してIRRの目標値を決定する必要があります。
内部視点でIRRの目標を立てて、外部視点で現実的な値かを検証する形で目標値を検討します。
IRRへ影響を与える項目
IRRへ影響を与える項目は計算に必要な項目の
1.投資した自己資金額
2.賃貸期間中の税引き前キャッシュフロー or 税引き後キャッシュフロー
3.売却で受け取れるキャッシュフロー額
+
4.売却までの期間
の4つです。
では、サンプルの投資案件でIRR値を比較します。
1.投資した自己資金額:2,000万円
2.賃貸期間中の税引き前キャッシュフロー と 税引き後キャッシュフロー
の時に
3.売却で受け取れるキャッシュフロー額(売却額)
4.売却までの期間
を変化させてIRRを比較します。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
上の一覧表は物件の購入価格と同額の1億円で売却した場合に売却年によってIRR値がどうなるかの比較です。投資開始5年後の2029年からIRRはプラスになります。
下の一覧表は2034年に売却した場合に売却価格を変動させた一覧です。1億円で購入した物件を8,000万円以上で売却できればIRRはプラスになります。
IRRの不動産投資シミュレーション
不動産投資シミュレーションというとキャッシュフローシミュレーションのみ行う方も多いです。しかし、トータルの収益性はキャッシュフローシミュレーションだけでは分かりません。
IRRを使うことで自己資金に対する収益性を簡単に比較できます。また、投資は不動産だけではありません。IRRを比較することで他の投資収益と比較することも簡単にできます。
(動画)IRRを計算する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「IRRを計算する方法」を動画でご紹介します
表面利回りの3つの注意点を理解して正しく利用する方法
表面利回りは、不動産投資指標の中でもっとも利用される指標です。しかし、その特徴を理解しないで利用すると誤った判断へ導きかねない怖い指標でもあります。
表面利回りの使い方
表面利回りの計算方法はとても簡単で便利な指標です。
収入と物件価格という比較的手に入りやすい2つの情報だけで計算できます。しかし、注意点もあります。
特に注意したいのは以下の3点を理解して利用することです。
1.維持管理費等の費用は一切考慮されていない
2.時間軸は一切考慮されていない
3.出口(売却)の収(損)益は一切考慮されていない
この3つは考慮されていないことを理解しないで、表面利回りを利用すると大きな判断ミスをしかねません。
表面利回りは費用を考慮していない
表面利回りは、不動産を維持する際に必要な費用・修繕費などは一切考慮されていません。
表面利回り6.5%の物件に投資したとします。家賃収入の15%の維持管理費を考慮した利回り(実質利回り)計算をすると、利回りは5.52%と1%近く低下します。
同じ表面利回りの物件でも維持に必要な費用は異なります。費用によって収益性は大きく変わるかもしれないことは、表面利回り利用時の注意点です。
表面利回りは時間軸を考慮していない
多くの場合、不動産投資は長期におよびます。しかし、表面利回りは時間軸を持ちません。
表面利回りを利用するタイミングは物件購入時が多いと思います。しかし、物件購入時の収入は一生続くわけではなく毎年変化します。表面利回りはこの変化を捉えることはできません。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターで計算
上記は、収入の変動なし・年1%上昇・年1%下落で試算した税引き前のキャッシュフローシミュレーションです。
1%上昇と下落では100万円単位で手元に入る金額が違います。表面利回りは計算時点の数値しか把握できないため、変化を考慮した収益性を確認できません。
表面利回りを利用する際の2つめの注意点です。
表面利回りは出口を考慮していない
3つめの注意点は、表面利回りは出口(売却)まで考慮した収益性を確認できない点です。不動産投資は、家賃収入から得られる収益と売却から得られる収益の和で成否が決まります。
しかし、表面利回りは収入と物件価格だけで計算されるため、一切売却の収益性を確認できません。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターで計算
売却価格の違いによる収益性比較です。収益比較には、売却まで含めた収益性を比較できる不動産投資指標のBTIRRとATIRRを使います。BTIRRとATIRRはExcelを利用して計算可能です。
※BTIRRとATIRRについてはこちらで解説しています。
売却価格によって大きく収益性は異なります。表面利回りだけでは、この違いは一切比較できません。
表面利回りは特徴を理解して利用する
表面利回りは少ない情報で計算できます。そのため、複数物件を短時間で比較するのに便利です。しかし、投資の意思決定をするには不十分な不動産投資指標です。
表面利回りは、表面利回りだけでは判断できない項目を確認できるキャッシュフロー分析等を行うことを前提に利用すべき不動産投資指標です。
(動画)3つの利回り指標を確認する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「3つの利回り指標を確認する方法」を確認する方法動画でご紹介します
不動産投資指標を使って安全性を分析
不動産投資シミュレーションの基本はキャッシュフロー分析です。しかし、それだけでは気づきにくいリスクもあります。
不動産投資指標を使った分析
不動産投資指標はおおまかに4つに区分できます。
1.利回り指標
2.投資効率指標
3.安全性指標
4.キャッシュフロー指標
の4つです。
この記事では、様々な不動産投資指標の中から安全性指標のBER(BE%)について確認します。
BERとは
不動産投資指標のBERは以下の式で計算されます。
■BER(BE%)計算式
(維持管理費+返済額)÷満室想定家賃×100
よく聞く言葉で言い換えれば「損益分岐点」の考え方に近い指標です。
この指標が便利なのは、計算時(投資開始時等)の家賃・維持管理費・借入返済の値を利用して、将来どの程度の変動まで耐えられるかを推測できる点です。
BERはパーセンテージが低ければ低いほど、将来の変動に強い言えます。目安とすべき値は70%以下です。
70%を大きく超過し90%以上などの数値の場合は、将来の空き室リスク等の変動に弱く、投資内容の再検討が必要かもしれません。
BERの数値を改善する方法
BERを改善させるには、
1.家賃上げる
2.維持管理費を下げる
3.借入を見直す
の3つの方法があります。
しかし、1.家賃上げる 2.維持管理費を下げるは、なかなか難しいと思います。この3つの中では借入を見直すのが現実的です。
具体的な見直し内容は
▼借入額を少なくする(自己資金を増やす)
▼借入年数を長くする
▼金利を低く借りる
の3つです。
以下それぞれを見直した結果です。
■借入率によるBERの変化
■借入年数によるBERの変化
■金利によるBERの変化
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
借入内容を見直すことで、BERの値は大きく変化します。
安全性と収益性のバランス
BER70%以下を目安に投資をすることで、将来の家賃下落、金利上昇等の変化に強い状態で投資を進めることができます。90%以上の値になった場合は、かなりのリスクを背負って投資を進めなければなりません。
しかし、BERを意識するあまり、借入率を小さくしてBERを改善した場合には収益性指標は低下します。
例えば、自己資金回収率で、回収率100%までに必要な年数を確認すると、借入率80%=29年後だったものが、借入率70%=31年後と2年間遅くなります。
このように、安全性と収益性は非対称になる場合があります。ぜひ、キャッシュフロー分析とともに、様々な指標を利用しながらシミュレーションをしていただければと思います。
(動画)確認したい3つの不動産投資指標
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「BERを含む確認したい3つの不動産投資指標」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します
不動産投資指標のLTV (Loan to Value)とは
不動産投資の借入の安全性を数値化できる不動産投資指標があります。
それは「LTV (Loan to Value)」です。
不動産投資指標のLTVとは
LTVを利用することで、借入の安全性(危険度)を数値化できます。
■LTV (Loan to Value)とは
計算式:「借入残高 ÷ 物件の現在価値 × 100」
解説:融資比率を表す指標。物件の価値に対する借入金の比率を算出したもの。数値が小さいほど元本償還に対する安全性は高い。
100%未満を維持できれば、万が一の時に物件を売却して借入を全額返済できる可能性が高いと言えます。
LTVを利用するためのポイント
LTVを有効に利用するためのポイントは3つです。
1.借入残高を把握する
2.物件の現在価値を把握する
3.目標の値(パーセント)を設定する
1.借入残高については、金融機関の償還予定表等を確認して簡単に把握できます。
ポイントは「2.物件の現在価値を把握」と「3.目標の値(パーセント)を設定」です。
LTVの計算に必要な物件価値
物件購入時点のLTVは簡単に計算できます。割高に購入させられていないという前提で、購入時は「物件価値≒購入価格」だからです。
しかし、年数が進めば返済は進み借入残高は減少します。また、物件購入時以外は「物件価値≒購入価格」ではありません。
借入残高は簡単に把握できるため省きます。問題は物件の現在価値をできるだけ現実に近い(実際に売却できる価格)形で把握する方法です。
物件の現在価値把握する方法として3つの方法が便利です。
3つの方法を組み合わせることで、より現実に近い物件価値を確認することができます。
※「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」でより詳細にご説明しています。
LTVの目標値
次にLTVの目標値です。本来は、購入当初より70%以下に保つことを目標にすると良いです。1億円の物件に対して7,000万円の借入までで投資を行うということです。
しかし、LTVを物件購入当初より低くすると、CCR(cash on cash return)等の収益性の不動産投資指標は低下します。
収益性を考慮すると、将来性の高い物件は80~85%程度は許容できると思います。物件価値上昇と、返済の進むことで、目標値である70%以下を5年程度で達成できる可能性があるからです。
以下は、元利均等・期間30年・金利2.5%で借入を行なった場合のLTV(Loan to Value)のシミュレーションです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
※物件価値を購入価格1億円と仮定して集計
元金返済が進むことで、当初のLTV80%から徐々に低下し、6年後に70%以下になります。
※不動産投資指標のCCR(cash on cash return)とは
LTVは定期的把握する
LTVは借入返済が進むことと物件価値で変動します。変化を捉える意味でも、年1回程度はLTVは何パーセントか確認しておきたいです。LTVは物件毎に確認するだけではなく、所有する物件全体の数値も把握する必要があります。
また、LTVを把握することは、物件の追加購入時に借入を行う際の金融機関へのアピールポイントになります。
銀行の最終目標は貸したお金を全て回収することです。この視点で考えると、LTVが低いことは、万が一の時に売却して回収できる可能性が高いと言えるからです。
借入をして物件を購入する場合には、不動産投資指標のLTVを利用して、安全性の把握していただければと思います。
(動画)物件現在価値シミュレーション
※不動産投資ツールのアセットランクシミュレーターを利用して 積算価格と相場的価格を計算する方法
※10年後の売却価格を推定して不動産投資のキャッシュフローシミュレーションに利用する方法
4つの視点で収益物件のシミュレーションをバランスよく確認する方法
収益物件の比較を行う際は、4つの視点で確認することが重要です。
不動産投資分析4つの視点
不動産投資シミュレーションの4つの視点は
1.収益性
2.安全性
3.短期
4.長期
です。
この4つの視点を意識することで、他人の意見に左右される。近視眼的に成り過ぎる。ことなく冷静な分析を行えます。
不動産投資指標を利用して4つの視点で確認
4つの視点でバランス良く確認するには、不動産投資指標を利用すると便利です。不動産投資指標(一部)を一覧表にすると
※不動産投資指標については「不動産投資で利用したい各種指標のご紹介」をご確認ください
この記事ではこの中から
1.単年キャッシュフロー:収益性・安全性・短期
2.キャッシュフローの累計額:収益性・長期
3.IRR:収益性・長期
の3つの指標を利用した、具体的な確認方法を説明します。
単年キャッシュフロー確認ポイント
単年キャッシュフロー(税引き後)で確認したいのは
■赤字の年がないか
赤字の年がある場合は持ち出しが発生します。万が一余裕資金のない場合は、いわゆる黒字倒産に近い状態になる可能性もあります。
シミュレーション時に赤字の年がある場合は投資するかを慎重に判断する必要があります。
■年間の収益性は目標に達するか
年間のキャッシュフロー額が目標値に達するかも重要な視点です。税引き後キャッシュフローは年によって異なりますので、この推移の確認も必要です。
▼キャッシュフロー(CF)のサンプルシミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの収支詳細を一部抜粋
キャッシュフローの累計額確認ポイント
キャッシュフローの累計額(税引き後)で確認したいのは
■自己資金を上回る年は何年後か
資産運用として不動産投資を考えた場合、投資した自己資金はできるだけ早く回収して、次の投資へ備えたいです。
おおよそ何年後に回収可能かの確認は必須です。10~15年以内を目標とするのが1つの目安です。
▼キャッシュフローの累計額のサンプルシミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの収支詳細を一部抜粋
IRR確認ポイント
最後に、トータルの収益性を考える際に便利なIRRです。
※IRRの詳細については「2000万円の運用先を不動産以外で選択肢する方法」をご確認ください。
■IRR(特にATIRR)は目標を達成しているか
ATIRR=7.18%で約10年で自己資金を倍にできます。例えば、2,000万円の自己資金を10年で4,000万円にするという目標を立てた場合にはATIRR=7.18%必要です。
▼IRRサンプルシミュレーション(売却価格別のIRR)
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターのグラフ機能の一部抜粋
IRRをExcelを利用して計算する方法はIRR 関数(Microsoft社)をご確認ください
不動産投資指標をバランスよく確認
「収益性」「安全性」「短期」「長期」の4つの視点で不動産投資シミュレーションを行うことで、都合の良いセールストークや一時的な高利回りなどを見抜ける可能性を高められます。この内容をご参考に不動産投資シミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)3つの不動産投資指標を確認する方法
※不動産投資ツールのアセットランクシミュレーターを利用して 税引き後キャッシュフロー 自己資金回収率 IRR(内部収益率)をシミュレーションする方法
不動産投資で重要な純資産額の推移
不動産投資の成功話として、年収〇千万円・投資総額〇億円など、家賃収入の多寡や投資総額に触れる本は良くあります。
しかし、不動産投資の成否は家賃収入の多寡や投資総額では決まりません。
不動産投資で重要な純資産の推移
純資産と聞くと企業の決算書類を思い浮かべるかもしれません。しかし、不動産投資の成否を確認する純資産はもっと単純です。
最初に意識したいのは、不動産投資を資産運用として考えた場合、目的は純資産を効率よく(短い時間)で増やすことであるという点です。
この目的を意識すると、投資開始前の純資産と現時点の純資産額を比較しないと不動産投資の成否は分からないことに気づけます。
不動産投資の純資産推移を確認するために必要なのはわずか4項目です。
1.投資した自己資金額
2.投資のための借入額又は借入残高
3.税引き後キャッシュフロー累計額
4.物件の時価額
です。
投資開始前と開始直後の純資産推移
それでは、具体例を挙げて確認します。
表面利回り7% 8,000万円の新築木造(諸費用500万円)を、自己資金2,000万円+借入6,500万円で購入した場合の純資産額推移です。
純資産額を確認したり、頭を整理するにはバランスシート(B/S)を利用すると便利です。簡単に説明すると、向かって左側に現金・不動産等の資産を、右側に借入等の負債を入れます。「純資産=左側合計-右側合計」です。
物件購入前は、不動産投資に利用する自己資金2,000万円が純資産です。物件購入直後は、購入した8,000万円の物件と借入額の項目が追加されています。
自己資金は投資に利用したので0円になっています。また、諸費用として500万円を支払ったため純資産額は1,500万円となります。
物件の時価は、購入価格の8,000万円としています。もし、時価より高い価格で買って(買わされて)しまうと、純資産額は購入時点でさらに減少してしまいます。
今回の目的は不動産投資でどれだけ純資産が増えたか比較することのため、他の資産は含めません。
また、本来のB/Sでは諸費用内で減価償却の必要な取得費は物件にプラスして計上される等、会計上のB/Sとは異なります。しかし、実態を把握するには分かりにくいため、キャッシュベース(お金の動き)で考えます。
10年後の純資産額
次に10年後に純資産額はどうなるか、2つのシナリオで比較します。
シナリオ1:家賃収入は標準シナリオの年1%ずつ下落。10年後の物件時価は6,400万円(10年後家賃収入÷8%)
シナリオ2:地域の人口減少厳しく家賃収入は年1.5%下落。10年後の物件時価は5,400万円(10年後家賃収入÷9%)
今回の例は投資開始10年後としました。実際は1年後でも、5年後でも構わないとご理解ください。
このバランスシートのポイントは、CF累計(税引き後キャッシュフロー累計)と物件(物件の時価)の部分です。
CF累計(税引き後キャッシュフロー累計)は税金支払い後に本当に残った金額の累計額です。
物件は推定される売却可能額です。売却可能な物件価格のシミュレーション方法は
「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」
「10年後の売却価格を推定する方法」
をご確認ください。
シナリオ1は、物件購入前に2,000万円だった純資産額は3,200万円に増加しています。1年あたり120万円増加した計算になります。単利計算で6%です。
シナリオ2は、2,130万円と130万円しか増加していません。1年あたり13万円。単利計算で0.65%です。
シナリオ2は、純資産は減少していないものの、国債と変わらない利回りです。投資としては失敗と言えます。
不動産投資の成否は純資産額で考える
不動産投資の成否を考える際に、家賃収入の多寡や投資総額ではなく、純資産増減で考えるべきです。純資産額で考えるメリットは、疑似的に出口(売却)まで考慮した投資の成否を確認できることです。
不動産投資で資産運用を考えた際の目的は「純資産」を増やすことです。1年に1回など定期的に純資産推移を確認することをお勧めします。その際に、この記事をご参考に分析していただければと思います。
(動画)純資産額計算に必要な4項目を確認
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して純資産額を推定する方法
4つの不動産投資指標を利用して収益性と安全性をバランスよくチェックする
「不動産投資シミュレーションで何を重視して確認すべきか分からない」
こんなお話を聞くことがあります。
分析結果を確認する際に重視すべきなのは「投資期間中を網羅する形で収益性と安全性をバランスよくチェックする」です。
4つの不動産投資指標
収益性と安全性をバランスよく確認するためには、4つの不動産投資指標を利用すると便利です。
その4つの指標は
1.税引き後キャッシュフロー
2.CCR(Cash On Cash Return)
3.BER(BE%)
4.Internal Rate of Return(IRR/内部収益率)
の4つです。
この4つを利用することで収益性と安全性をバランスよく分析することができます。
4つの不動産投資指標の解説
それでは、4つの指標について説明します。
1.税引き後キャッシュフロー
■計算式
収入(家賃収入等)-維持管理費(管理費・修繕費・固定資産税等)-返済額(元金・利息)-税金(所得税・住民税)
本当の手取り額です。不動産投資シミュレーションでもっとも重要視すべき指標
2.CCR(Cash On Cash Return)
■計算式
キャッシュフロー(税引き前or税引き後)÷自己資金×100
1年間で手元に残るキャッシュを投資した自己資金で割り自己資金に対する投資効率を確認する指標。数値が高ければ高いほど投資効率は高い
3.BER(BE%)
■計算式
(維持管理費+返済額)÷満室想定家賃(潜在的総収入)×100
定期的に必要な費用(固定費)と満室想定家賃を割ることで投資の安全性を確認する指標。数値が低いほど安全性は高い
4.Internal Rate of Return(IRR/内部収益率)
■計算式
画像の赤枠内が計算結果と計算式。Excelでの計算方法を知りたい方は「IRR 関数(Microsoft社)」をご確認ください。
不動産の出口(売却)まで考慮した自己資金の利回り。高ければ高いほど運用成績は良い。他の投資対象と運用成績を比較する際に便利
この4つの不動産投資指標で、収益性と安全性両面をバランスよく分析できます。
4つの不動産投資指標の確認ポイント
次に、4つの指標の確認すべきポイントです。
1.税引き後キャッシュフロー
・赤字又は赤字になりそうな年はないか・・赤字の年がある場合は自己資金の持ち出しが発生する可能性が有り注意
2.CCR(Cash On Cash Return)
・目標値に達しているか・・8~10%程度を目標に検討。この数値で約10~13年で自己資金回収可能
3.BER(BE%)
・適正な数値以下か・・70%以下を維持できるか。家賃下落・空き室等の変動で30%程度の収入減まで黒字を維持できる水準
4.Internal Rate of Return(IRR/内部収益率)
・目標値に達しているか・・IRR=7.18%で10年で自己資金を倍にできる。これを参考に目標を検討
上記の目標値を参考にシミュレーション結果を確認してください。
収益性と安全性のバランス
不動産投資シミュレーションを確認する際には、投資期間中を網羅して収益性と安全性をバランスよく確認する必要があります。
■収益性の視点⇒ 不動産へ投資するリスクを考慮しても、自己資金を上手に運用できそうか?
■安全性の視点⇒ 家賃下落・空き室率が増えても赤字になりにくか?
を重視して結果を確認してください。ぜひ、ご参考に不動産投資シミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)4つの不動産投資指標を利用する
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して税引き後キャッシュフロー・CCR・BER(BE%)を計算する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用してIRR(内部収益率)を計算する方法
2000万円の運用先を不動産以外で選択肢する方法
資産運用の方法は不動産だけではありません。株、債権、仮想通貨等数限りなくあります。
もし、2,000万円の自己資金を投資するならばどこに投資すべきでしょうか。
2,000万円の運用先
今回は2,000万円の運用先として、株と不動産に絞って検討します。
まず、それぞれの良い点と悪い点を確認します。
このまったく異なる投資対象を比較するのに便利な指標はIRRです。
収益率比較に便利なIRR
Internal Rate of Return(IRR/内部収益率)は不動産投資と他の収益率を比較する際に便利な指標です。ただ、一般の大家さんはあまり利用していません。家賃収入のキャッシュフローだけを強く意識した分析では使うことは少ないからです。
しかし、自己資金を効率よく運用するという、資産形成で重要なファクターを確認するには使いやすい指標です。
IRRには2種類あります。
1.BTIRR⇒税引き前の金額で計算
2.ATIRR⇒税引き後の金額で計算
IRRを計算する際に必要な項目は
1.投資した自己資金額
2.運用中の家賃・配当等の額
3.売却で受け取れる収益の額
この3項目の情報があればExcelで簡単に計算できます。Excelを利用したIRR(内部収益率)の計算例は
赤枠の中がIRRの計算結果と計算式です。さらに、Excelでの計算方法を知りたい方は「IRR 関数(Microsoft社)」をご確認ください。
また、IRRについては「インフレ時代の不動産投資で利用したい指標」もご確認ください。
不動産と株の運用状況を比較する
不動産と株のIRR比較を以下の内容で行います
税引き後の手取り額を利用してATIRRを計算します。
それぞれ、投資開始から10年後に-20%~+20%で売却できた場合の運用比較です。圧倒的に不動産の数値の高いことが分かります。
理由は
1.利回りが高いこと
2.借入を利用して8,000万円の投資ができたこと
3.減価償却を利用して課税所得が減少していること
です。
ちなみに、不動産のATIRRと同等の運用成績を出すために必要な株の売却額は
株での運用は値上がり(売却益)の重要性の高いことが分かります。
ただ、不動産ならではの注意点もあります。今回のシミュレーションでは、空室、家賃下落、金利上昇等の影響を一切考慮していません。不動産での運用はこれらのリスクを引き受けることで、株よりも有利な運用ができている側面もあります。
運用先は不動産だけではない
シミュレーションを行うことで、それぞれの特徴が分かります。運用先は不動産だけではありません。
不動産に優位性があるかは、他の投資対象と比較しないと分かりません。ぜひ、ご参考に、ご自分の目標と合致する投資対象は何なのか検討する参考になさってください。
(動画)不動産投資にIRRを利用する
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用した不動産投資シミュレーション時にIRR(内部収益率)を活用する方法
インフレ時代の不動産投資で利用したい指標
ここ数年、不動産投資で注目すべきポイントが変化してきています。
ポイントの変化した理由は、
「デフレ時代の投資⇒インフレ時代の投資」へ状況が変化しているからです。
では、注目すべきポイントはどのように変化したのでしょうか。
インフレ時代の不動産投資
2000年頃~2015年頃のデフレ時代は、物件価格が下落することをある程度考慮しながら、変動の少ない家賃収入(インカムゲイン)を中心としたシミュレーションでした。
しかし、インフレ時代には、売却収入(キャピタルゲイン)により注目してシミュレーションが必要になります。
そんな時代に、ぜひ利用したい不動産投資指標があります。この指標を利用することで、インカム+キャピタルゲインの収益率を確認できます。
利用したい不動産投資指標
その不動産投資指標はInternal Rate of Return(IRR/内部収益率)です。
IRRは、不動産投資の収益率を確認するのに便利です。ただ、一般の大家さんの多くは利用していないと思います。インカムゲインのキャッシュフローを強く意識した分析の際には使うことが少ないからです。
しかし、自己資金を効率よく運用して資産形成を行うことを目的にする際には利用したい指標です。
IRRの種類と計算に必要な項目
IRRには2種類あります。
1.BTIRR⇒税引き前キャッシュフローで計算
2.ATIRR⇒税引き後キャッシュフローで計算
です。
次に、IRRを計算する際に必要な項目です。
1.自己資金額
2.賃貸期間中のキャッシュフロー(税引き前・税引き後)
3.売却のキャッシュフロー(税引き前・税引き後)
この3項目でIRR計算が可能です。Excelで計算する方法は以下です。
赤枠の中がIRRの計算結果と計算式です。さらに、Excelでの計算方法を知りたい方は「IRR 関数(Microsoft社)」をご確認ください。
次にIRRの利用方法についてです。
IRRの利用方法
IRRの利用方法は
1.自分の資産運用目標の必要収益率と比較する
例えば、3,000万円の純資産を10年後に6,000万円にすると目標を立てた場合、この目標を達成するには、IRR=7.18%が必要です。この目標を達成できる数値に到達しているかを確認する際に利用します。
※不動産投資の収益目標の立て方は「不動産投資の収益目標を検討する方法」をご参照ください。
2.他の運用資産の収益率と比較する
自己資金の運用先は不動産だけではありません。株式、債権など多くの運用先があります。
例えば、為替の影響を考慮しない時に、米10年国債は約3.5%程度(2023年3月31日時点)の利回りがあります。これとIRRを比較して不動産投資を選択すべきか検討するのに利用します。
また、IRRは以下のように
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用してシミュレーション
売却価格と自己資金額を変動させて収益率を比較することも簡単にできます。
資産運用としての不動産投資
デフレ時代と違い、これから不動産で資産運用を検討する場合は、これまで以上にキャピタルゲインに注目してシミュレーションする必要があります。その際に、IRRを利用すると比較検討を行いやすくなります。
不動産投資前のシミュレーション時、出口(売却)戦略検討の際にIRR利用していただければと思います。
IRRを計算する方法の動画
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「IRRを計算する方法」を動画でご紹介します
バランスシートで不動産投資の進捗を確認する
不動産投資の目的は投資家さんによって様々あります。
もし、不動産投資の目的が「資産を増やす」ことの場合、1年に1回は確認していただきたいものがあります。
定期的に確認したいもの
定期的に確認していただきたいのは、バランスシート(B/S)です。
※バランスシート参考ページ(外部ページ)ご紹介します。
■貸借対照表(バランスシート)とは?読み方・見方を解説
■本当の家計の健全度がわかる家計のバランスシート
B/Sを定期的に確認すべき理由は
「資産がどのくらい増加したかを確認するのに便利」
だからです。
B/Sと聞くと、難しく考えてしまいがちです。
しかし、企業が作成するような厳密なB/Sを作成して、確認するという意味合いではありません。
目的は純資産は増加しているか、減少しているかを確認することです。
B/Sの種類
確認したいB/Sは2種類です。
1.個人資産全体のB/S
不動産に限らず、預金、株等全ての資産と借入のB/S
2.不動産投資のB/S
不動産投資のみのB/S
イメージがつきづらいと思いますのでサンプルをご確認ください。
1.個人資産全体のB/S
ポイントは、不動産部分は購入時の価格ではなく売却可能な価格*を入れる点です。
※売却可能な価格を検討する方法は「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご確認ください。
売却可能な価格でB/Sを作成して純資産が、増加してれば資産運用は成果をあげています。逆に、減少していれば運用方法を見直す必要があります。
また、純資産が増えている場合は、目標値に届いているかの確認も必要です。
不動産投資のB/S
そして、もう1つ確認したいのは、不動産投資だけのB/Sです。
理由は、個人資産全体のB/Sだと、株の成績等が加味されて不動産投資の成績を確認しにくいからです。
不動産投資だけのB/Sサンプルは以下です。
基本は個人資産全体のB/Sと変わりません。
大きく違うのはB/Sの向かって左上部分が税引き後キャッシュフロー(CF)累計になっている点です。
不動産投資の本当の手取りである税引き後キャッシュフロー累計と売却可能な物件価格でB/Sを作成することで
▼インカムゲイン(家賃収入)の資産増加(減少)
▼キャピタルゲイン(売却収入)の資産増加(減少)
を加味した資産状況を確認できます。
定期的に確認
不動産投資をしていると、つい、目先のキャッシュフロー等ばかりに注目してしまいます。
しかし、不動産投資を進める目的が「資産を増やす」ことの場合、重要なのは 純資産を増やすことです。
資産状況を把握するのに、バランスシートを利用すると便利です。
純資産が増加して不動産投資の目的を達成しているか確認する際の参考にしていただければと思います。