物件価格と金利とインフレの関係性
日銀 植田総裁のマイナス金利解除の可能性についての記事が掲載されました。マイナス金利が解除されれば、借入金利上昇の可能性は高まります。
不動産投資への金利の影響
金利上昇の不動産投資への影響で真っ先に思いつくのは、利息支払い増加によるキャッシュフロー悪化です。
そして、キャッシュフロー悪化を通して、もう1つ大きな影響を受ける項目があります。
それは物件価格下落の可能性です。下落する理由は収益還元法の視点で考えると良く分かります。
現在、収益還元法は不動産投資シミュレーションの主流です。収益還元法を細かく説明すると小難しい内容になります。しかし、単純に書けば
「目標収益を達成できるかを基準に判断する方法」です。
この視点で考えた時に、金利上昇は物件価格へ
1.金利上昇
↓
2.キャッシュフロー悪化
↓
3.目標収益に到達しない
↓
4.内容見直し必要
↓
5.物件価格見直しor投資中止
↓
6.物件価格下落
このような流れで影響を与えます。
金利上昇の影響をシミュレーション
サンプル物件を使って金利上昇の税引き前キャッシュフロー(CF)と物件価格への影響をシミュレーションします。
この物件への投資のために借入した金利を、0.5%ずつ変動させて税引き前キャッシュフローへの影響を比較します。
1.5%時には年間約150万円あった税引き前キャッシュフローは徐々に減少していき、5.0%で赤字に転落します。金利上昇の影響の大きさが分かります。
アメリカは約1年半で5%近く政策金利を上げています。日本では現実感のない上昇です。しかし、諸外国では現実に発生しています。
物件価格への影響
次に、物件価格への影響を確認します。
金利1.5%と同等の約150万円の税引き前キャッシュフローを稼ぐために、いくらで物件を買う必要があるかとその際の表面利回りを一覧にしました。
金利上昇ごとに、安い物件価格(高い表面利回り)で購入する必要があります。つまり、金利上昇⇒物件価格下落になります。
しかし、こんなことを疑問に思うかもしれません。「金利上昇(利上げ)=物価上昇時だから、家賃も上がって物件価格も上昇するはず」
確かにその通りです。ただ、単純に連動するわけではありません。
インフレと家賃上昇と物件価格
日本の家賃はインフレを約2年程度遅れて追いかけてくると言われています。
理由は「入居後に家賃を上げるのは非常に困難」だからです。
借地借家法は新法になっても、借手の権利を強く保護しています。そのため、インフレになったから即家賃を上げるのは不可能です。
「インフレ⇒金利上昇」よりも「インフレ⇒家賃上昇」はかなり遅れてやってきます。
その間、キャッシュフロー悪化と物件価格下落(担保価値下落)を耐え忍ぶ期間が発生します。
今回のシミュレーションは分かり易くするために、かなり単純化しています。そのため、この通りなるわけではありません。しかし、基本的に
■金利上昇=キャッシュフロー悪化
■金利上昇=物件価格下落
です。
金利上昇の可能性は高まっています。この点を頭に置いて不動産投資シミュレーションを行う際の参考にしていただければと思います
(動画)金利変動シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して金利変動シミュレーションを行う方法