Archive for the ‘不動産投資融資・自己資金’ Category
株式投資と不動産投資の運用成績を簡単に比較する方法
不動産投資と株式投資どちらで運用した方が良いか比較する方法について検討します。
不動産と株式の特徴
不動産投資と株式投資のメリット・デメリットを比較すると
流動性(買いやすさ・売りやすさ)やボラティリティー(変動幅)等、それぞれ一長一短あります。次に、資産運用の効率はどちらが良いか比較します。
不動産と株式を比較するための指標
不動産投資と株式投資の特徴を掴むために2つの指標を使います。
1.税引き後キャッシュフロー:税金支払い後に手元に残る金額
2.IRR(ATIRR):IRRについては「インフレ時代の不動産投資で利用したい指標」をご確認ください
この2つの指標を使って、同じ自己資金(今回は2,000万円)を以下の条件で不動産投資と株式投資で運用した場合の10年間の成績を比較します。
※株の配当利回りは日経平均の平均配当相当の1.80%
また、税金ルールが不動産投資と株式投資で異なる点もポイントです。不動産投資は総合課税、株式投資は分離課税です。この違いの影響も図るために税引き後の運用成績で比較します。
不動産と株式の運用成績
10年後に-20%~+20%で売却した場合の税引き後キャッシュフロー累計額とATIRRの結果です。
※不動産投資シミュレーションは 不動産投資ソフト アセットランクシミュレーターを利用
運用成績は不動産投資が若干上回ります。しかし、ほったらかしにしやすい株式投資と比較すると、賃貸募集など手間のかかる不動産投資を選択するメリットの小さい結果です。
自己資金のみで、表面利回り5%程度の不動産投資は近い結果になる可能性が高いです。しかし、一般的に株式と比較すると、不動産投資の資産価値のボラティリティー(変動幅)は小さいです。資産保全目的(対インフレ等)の投資としてのメリットはあります。
レバレッジを利用した不動産投資
不動産投資と株式投資を自己資金だけを使って運用した際の比較をしました。
しかし、不動産投資には株式投資では利用できない大きなツールがあります。
それは低利の借入(レバレッジ)を利用できることです。ウォーレンバフェットのような大口投資家以外は株式投資に低利の借入を利用するのは難しいです。それに対して不動産投資は一定の属性以上の人は、資産運用に借入を利用できます。
不動産投資に借入を利用した運用成績はどうなるか確認します。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用してシミュレーション
株式投資の運用成績を大きく上回ります。ただし、物件価格が下落した際の運用成績は、レバレッジがマイナスに働き、借入無しよりも損失が大きくなります。
株式投資でレバレッジ有りの不動産投資のATIRRと同様に運用するには、上昇率10%は株式が2,000万円→3,150万円(57%増) 上昇率20%は2,000万円→3,825万円(91%増)が必要です。
不動産と株式の比較結果
不動産投資と株式投資を比較すると、表面利回り5%程度の不動産を自己資金だけで運用する場合、資産保全としては有効な可能性はあります。ただ、資産運用としての効率は悪いです。
しかし、不動産だけのメリットである、借入を利用することで大きく運用効率は上昇します。
不動産投資の効率を比較する際の参考にしていただければと思います。
(動画)IRRを計算する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「IRRを計算する方法」を動画でご紹介します
元利均等返済と元金均等返済の特色を5つの指標で把握する
不動産投資の借入をする際は「元利均等返済」「元金均等返済」を主に利用します。元利均等返済と元金均等返済の選択によって収益にどのような違いが生まれるか比較します。
5項目で元利均等返済と元金均等返済を比較
5つの項目で元利均等返済と元金均等返済のどちらが投資収益に好影響を与えるか比較します。
1.年間返済額
2.返済総額
3.税引き後キャッシュフロー額
4.税引き後キャッシュフロー累計額
5.不動産売却を含めた収益比較
の5項目です。
元利均等と元金均等の返済シミュレーション
サンプル物件を使ってシミュレーションします。
■サンプル物件概要
■返済額シミュレーション結果
返済シミュレーションの一部年を抜粋して表示しています。
文字通り、元利均等返済は元金+利息の返済額が一定。元金均等返済は元金額の返済が一定です。
年間返済額は投資開始から14年目まで「元利均等返済<元金均等返済」になっています。投資前半は元金均等返済の方が「返済比率」や「BER(BE%)」は高いです。
しかし、返済期間後半は元金均等返済の返済額は少なくなり、元利均等返済と逆転します。返済総額は元金均等返済の方が約220万円少ないです。
元利均等と元金均等のキャッシュフローシミュレーション
次に、キャッシュフローシミュレーションを確認します。シミュレーション結果は30年分の一部を掲載しています。
投資開始から14年間は元利均等返済が、年間の税引き前・税引き後キャッシュフローともに多いです。15年目に元金均等返済が逆転します。
投資成績として重要な税引き後のキャッシュフロー累計額は28年目にようやく元金均等返済が逆転します。
家賃収入(インカムゲイン)だけの収益性を考えると、早めに現金の貯まっていく元利均等返済を選択する方が良さそうです。
元利均等と元金均等の不動産売却シミュレーション
不動産の売却収益(キャピタルゲイン)まで含めた投資成績はどうなるでしょうか。10・20・30年後に6,000万円で売却したシミュレーションを比較します。
比較には、税引き後キャッシュフロー累計額とIRRを利用します。
※不動産投資指標のIRR(ATIRR・BTIRR)については「2000万円の運用先を不動産以外で選択肢する方法」をご確認ください。
■税引き後キャッシュフロー累計額(CF累計額)
10・20・30年後のどれを見ても元金均等返済が元利均等返済を上回ります。理由は、元金均等返済は毎年の元金分の返済額が多いため、売却時に一括返済が必要になる借入残高が少ないからです。
■IRR(BTIRR)
10年後を除いて元利均等返済が高いです。理由は、投資初期のキャッシュフロー額が多いからです。投資の視点(IRRの計算)では、1年目と10年目の100万円は同価値ではありません。1年目の100万円は、その後100万円を運用できる可能性があるからです。
元利均等返済と元金均等返済のどちらが有利か
1.年間返済額
2.返済総額
3.税引き後キャッシュフロー額
4.税引き後キャッシュフロー累計額
5.不動産売却を含めた収益比較
の5項目で比較した結果、それぞれ一長一短のあることが分かります。
投資初期から手元資金を増加させて、再投資に向かうには元利均等返済は有利です。しかし、投資トータルの手取り額で考えると元金均等返済に軍配が上がります。
結果は金利、借入額等の条件によって変わります。ぜひ、今回の分析を参考にしていただき、ご自分にあった借入方法をシミュレーションしていただければと思います。
(動画)元利均等返済と元金均等返済を比較する
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して元利均等返済と元金均等返済の収益性を比較する方法
不動産投資用の借入の年数は長いほどいいは本当か
不動産投資の魅力の1つは「長期の借入を利用できる」ことです。
借入を利用する際のポイントは
1.借入金額(自己資金との割合)
2.借入年数
です。
今日は、借入年数によるキャッシュフローと安全性への影響についてです。
借入年数はどう決まるか
借入年数は一般的に法定耐用年数を基準に決まります。
ときどき「銀行の貸してくれる年数キリギリで借りる方が良い」という内容を見かける時があります。
しかし、それは本当でしょうか。収益性と安全性の両面で検討します。
借入年数による安全性への影響
以下のサンプル物件を使って、借入年数25・30・35年のシミュレーション結果を比較します。
安全性への影響は、不動産投資指標のBE%(BER)を利用します。BE%(BER)は損益分岐点を表す指標で70%以下を目安にします。
期間が伸びるほど、返済額(元金返済分)が減少してBE%は改善します。金利1.75%⇒30年以上。金利3.0%⇒35年の借入年数で一定の安全性を確保できそうです。
借入年数によるキャッシュフローへの影響
借入年数の収益性(キャッシュフロー)への影響をシミュレーションします。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能を利用
毎年の税引き後キャッシュフローを確認すると、返済額減少、利息支払増による税額の減少で、借入年数25年と35年では80万円以上の差が出ます。しかし、2037年の赤枠の中を確認すると状況は変わります。
2037年には出口をむかえて6,000万円で物件を売却します。2037年の税引き後キャッシュフロー累計には売却キャッシュフロー+投資期間中のキャッシュフロー合計の数値が表記さています。この金額は投資で手元に残ったです。
つまり、売却(出口)まで含めた投資トータルで考えると借入年数の短いほど累計キャッシュフロー額は多いです。
借入年数は長いほど元金返済は進まず、売却時にまとめて返済するため収益性は悪化します。
金利1.75%は、借入年数25年と35年で約140万円です。しかし、金利3.00%で借入を行った際には
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能を利用
約260万円もの差になります。
借入年数の決定に必要なこと
借入年数を延ばすことで、単年の安全性(BER)と収益性(キャッシュフロー)は改善します。しかし、不動産投資トータルの運用で考えた場合には収益性を落とすことになります。
今回、ご紹介したシミュレーションで分かるように、単年でのキャッシュフロー改善効果を考えると、金利の低い場合には借入年数を延ばすことのトータル収益への影響は小さいです。
金利が低く、次の投資資金作りをして再投資を考えている時は、できるだけ借入期間を延ばすほうが良いです。
しかし、金利が高くなるにつれてトータル収益への影響は大きくなり、長い借入期間を選択するデメリットは大きくなっていきます。
ぜひ、ご参考にしていただき、借入年数検討のご参考になさってください。
(動画)返済年数シミュレーションを行う方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用した返済年数による影響分析を行う方法をご紹介
不動産投資の繰り上げ返済のメリット・デメリットを検証する
私の周辺でも金利上昇を警戒する投資家さんは増えています。金利上昇は自分でコントロールする手段はほとんど無いという点で大きなリスクです。
そんな、金利上昇への対応策として取れる数少ない手段は「繰り上げ返済」です。
繰り上げ返済の種類
繰り上げ返済には2種類あります
1.期間短縮型:返済額は同額で返済期間を短縮するもの
2.返済額軽減型:返済期間は同じで返済額を減額するもの
です。
※繰り上げ返済タイプについて
この2つの繰り上げ返済を比較したキャッシュフローシミュレーションと繰り上げ返済のメリット・デメリットについて考えていきます。
繰り上げ返済のメリット・デメリット
不動産投資の繰り上げ返済は、住宅ローンの繰り上げ返済とは異なる視点で考える必要があります。
■繰り上げ返済のメリット
1.返済総額の減少
2.担保価値の上昇
■繰り上げ返済のデメリット
1.投資効率の落ちる可能性
2.再投資への資金減少
以下は2017年に投資開始、2023年迄の税引き後キャッシュフロー累計額(投資で手元に残った金額)1,015万円の内1,000万円を繰り上げ返済したシミュレーションです。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの繰り上げ返済機能を利用して計算
返済総額は期間短縮型の場合は約350万円減少します。これを見て「返済総額減るならいいじゃん」と思うかもしれません。住宅ローンならそうかもしれません。
しかし、投資物件の場合、さらに重要な項目があります。それは投資効率です。投資効率を、投資した自己資金の何%を何年後に回収できるか比較しやすい自己資金回収率を使って比較します。
20年後・30年後の自己資金回収率を確認すると
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターのキャッシュフロー機能を利用して計算
1,000万円の繰り上げ返済に繰り上げ返済手数料10万円(1%)を加味したシミュレーションです。
20年後(2036年)では繰り上げ返済に1,000万円を使ったため、自己資金回収率は繰り上げ返済無しに比較して大幅に悪化します。30年後は繰り上げ返済した場合が逆転します。
投資効率という視点で考えると、繰り上げ返済を行うか疑問が生じます。また、手元資金を繰り上げ返済に利用することで、次の物件への再投資を行えなくなる大きなデメリットもあります。
金利上昇時の繰り上げ返済
次に金利変動(上昇)時の繰り上げ返済シミュレーションです。
2017年購入時1.5%⇒2024年 2.5%へ上昇の分析です。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの金利変動・繰り上げ返済機能を利用して計算
返済総額は約315万円・約645万円と大きく減少します。
投資効率を確認すると
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターのキャッシュフロー機能を利用して計算
金利上昇のあった場合には、無い場合に比較して繰り上げ返済効果は高くなっています。それでも、今回の借入金額、期間で金利1%上昇だと、再投資しにくくなるデメリットを考慮すると、繰り上げ返済を選択するか微妙です。
ちなみに、繰り上げ返済の翌年2025年単年の税引き前・税引き後キャッシュフローを比較すると
返済軽減型は、約55万円のキャッシュフロー改善効果。期間短縮型は、元金返済割合が増加することで税引き後キャッシュフローは減少します。
不動産投資での繰り上げ返済
不動産投資という視点で繰り上げ返済シミュレーションを行いました。返済総額の減少や返済軽減型では単年のキャッシュフロー改善効果のメリットはあります。一方、投資効率や再投資を考えるとデメリットも目立つ結果になります。
借入期間、金利、借入方式等によって大きく結果は異なりますので、この内容を参考にしてたいだき、ご自身にあった分析を行っていただければと思います。
(動画)繰り上げ返済シミュレーションを行う方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用した繰り上げ返済シミュレーションを行う方法のご紹介
物件購入後、定期的に確認すべきあるバランス
先日、こんなご質問をいただきました。
「借入を利用して不動産投資をするリスクは高くないですか?」
確かに自己資金だけでの投資と比較してリスクが高くなるのは事実です。
借入のメリットとデメリット
不動産購入の際に借入を利用する投資家さんは多いと思います。いくつかある理由の1つは、資産運用を行う対象としては珍しく金融機関がお金を貸してくれやすいからです。
お金を貸してくれる理由は
1.株等に比較すると価格変動が緩やか
2.持ち逃げされる可能性がない
このような理由で担保として信用できるからです。
また、投資する私たちにも借入は大きなメリットがあります。いわゆる、レバレッジ効果で、自己資金の何倍もの運用を行うことができます。
では、借入のデメリットは何でしょうか。それは「返済できない恐れがある」です。
レバレッジというメリットを利用するために、このデメリットを管理する必要があります。そんな時に定期的に確認しておきたいバランスがあります。
確認したいバランス
借入のデメリットである返済できない状態に陥らないために、定期的に確認したいバランスは「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」であるかです。
この状態は、なぜ、重要なのでしょうか?それは、万が一の場合には売却することで、借入のデメリットである返済できない状態になりにくいからです。
では、具体的にどのように比較すればいいでしょうか
返済可能な状態か確認する
「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」を確認するのに必要な項目は2つだけです。
1.借入残高
2.不動産資産価値(売却可能価格)
借入残高に関しては、返済表等を確認すれば簡単に確認可能ですので割愛します。
問題は、不動産資産価値(売却可能価格)をどう確認するかです。一番正確なのは、売りに出してお客様の反応を見ることです。しかし、実際はそうは行きません。そこでお勧めなのは、
1.収益還元法で計算
2.相場的価格法で計算
3.積算価格法で計算
※具体的な計算方法は「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご確認ください。
1~3の方法で計算した価格の全てが、「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」の場合はリスクの低い状態で運用できています。
1~3の価格にばらつきがある場合
▼1棟物件⇒収益還元法 積算価格法
▼区分所有⇒収益還元法 相場的価格法
を利用することで売却可能価格に近い価格を推測できます。
定期的な確認が必要
不動産投資で資産運用する場合、借入を利用できることには大きなメリットがあります。しかし、返済できなくなるリスクもあります。
そんな時に利用したいのが、ご紹介した「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」であるかを確認することです。
また、不動産価格は変動するものです。今日の記事を参考にしていただき、年に1度程度は「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」の確認を行うことをお勧めします。
(動画)収益還元法・相場的価格法・積算価格法で計算する方法
予測される金利上昇を意識して分析を行う方法
超低金利時代が十数年続いています。しかし、インフレ率の上昇で、数年以内にこの環境に変化があるかもしれません。
金利上昇は不動産投資最大のリスク
不動産投資には、空室、家賃下落など様々なリスクがあります。その中でも金利上昇は最大のリスクと言っていいと思います。
理由は、自分でコントロールすることが難しいからです。それだけに、金利上昇した場合のシミュレーションはしっかり行っておく必要があります。
金利上昇シミュレーションで最低限確認しておきたいポイントは2つです
キャッシュフロー赤字になる金利水準
金利上昇シミュレーションで確認しておきたい1つ目の項目は、
何%の金利上昇までキャッシュフロープラスでいられるかです。
表面利回り6.5%のサンプル物件を使って確認します。
投資開始時は1.5%で借入をしています。期間中にそれぞれ2.5~4.8%に金利上昇した際のシミュレーションです。
1.5%⇒2.5%に1%上昇した場合、年間キャッシュフロー(CF)は約50万円減少(30%減)します。1%でもキャッシュフローに大きな影響を与えます。
そして、キャッシュフロー赤字になるのは金利4.8%になった時です。3.3%上昇するとキャッシュフロー赤字になります。
現状の日本経済を考えると、すぐに発生する可能性は低いと思います。しかし、アメリカの政策金利は約1年半で0.25%⇒5.25%に上昇したことを考えると絶対にないとは言えません。
金利上昇の不動産売却への影響
金利上昇を考慮したシミュレーションで次に行っておきたいのは売却シミュレーションです。
金利上昇シミュレーションでなぜ、売却シミュレーション?と思われる方もいるかもしれません。
理由は「金利上昇=不動産価格下落」だからです。購入時よりも金利上昇に伴って売却できる価格も下落します。
1%金利上昇した場合には、表面利回りも1%程度上昇して物件価格は下落します。現実的には、様々な条件があるのでここまで単純では有りません。しかし、かなり確率で下落する可能性が高いです。
売却シミュレーションのサンプルは以下です。
家賃収入のキャッシュフロー以上に大きな影響です。1%上昇で売却で得られるキャッシュフロー(CF)は、約1,500万円(48%減)となります。
理由は
▼ 1%金利上昇することで売却時に求めらる表面利回りも1%上昇して7.5%になった
▼ 金利上昇で利息支払が増加して元金返済が減少、売却時の返済残高が増加した
からです。
売却にも金利上昇は大きな影響を与えることがお分かりいただけると思います。
金利上昇リスクは常に意識する
不動産投資への金利上昇の影響は本当に大きいです。
シミュレーション時には
1.何%の上昇迄キャッシュフローは赤字にならないか
2.売却キャッシュフローにどの程度影響があるか
を中心に金利変動シミュレーションを行っていただければと思います。
金利上昇シミュレーションを行う方法動画
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを使って金利上昇シミュレーションをする方法
不動産投資の自己資金は銀行の指定する20%以上本当に必要か
不動産投資検討の最重要項目の1つは「自己資金をいくらにするか」です。
どうしても、銀行に20%必要です。30%必要です。と言われると仕方ないかなと思ってしまいます。
しかし、自己資金は不動産投資の安全性、収益性に大きく影響します。それだけに、もう少し積極的に自分の意思を持って検討する必要があります。また、数値的な根拠があれば、銀行への交渉材料にもなります。
根拠を3つの指標を使て確認する方法についてです。
自己資金による影響
家賃下落、空室、金利上昇等のリスク回避のために、安全性を求めれば自己資金は多いほど良いです。しかし、資産運用として不動産を購入する際には、これでは意味がありません。
安全性ばかり高くても目標の運用ができなければ不動産を購入する意味がありません。つまり、安全性と収益性のバランスが重要です。
3つの指標を使うことで
1.インカムゲイン(家賃)の収益性
2.投資期間中の安全性
3.キャピタルゲイン(売却)を含めた収益性
のバランスを比較することができます。
3つの指標
今回使う3つの不動産投資指標は
1.自己資金回収率
⇒何年後に自己資金を回収できるかを確認できます。10年前後での回収を目標にします。
2.BE%(BER)
⇒損益分岐点を表す指標で金利上昇等の変動への強さを確認できます。70%以下を目安に検討します。
3.IRR
⇒売却を含めた収益率を確認できます。高ければ高いほど資産運用に成功したと言えます。
※3つの不動産指標の詳細は「不動産投資で利用したい各種指標」をご確認ください。
ここからはサンプル物件を使って説明します。
それではシミュレーション結果を確認します。
収益性と安全性のバランスを確認
不動産投資シミュレーション結果は以下です。
※ATIRRは15年後に9,000万円で売却したことを想定して計算
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
それぞれ、自己資金の割合が 1,000万円~4,000万円で比較しています。
確認して分かる通り、自己資金額が多くなればBE%(BER)は低下して安全性は高まります。逆に、自己資金額が少ないほど、自己資金回収期間は短縮し、IRRも高くなり収益性は向上します。
自己資金を決定するポイントは
「安全性と収益性のバランス」です。
このサンプルでは、安全性の目標⇒BE%(BER)70%以下。収益性の目標⇒自己資金回収10年以内としました。
結果を確認すると 自己資金1,000万円の場合、自己資金回収10年と目標に届きますが、BE%は70%を超えてしまいます。
4,000万円では、BE%は70%を大きく下回ります。しかし、自己資金回収に19年も必要になります。
購入する方の属性によるのですが、今回の条件では1,500万円程度の自己資金で検討するのが良いと思います。
ちなみに、自己資金1,500万円の場合、BE%(BER) は71.25%。自己資金回収は12年後になります。
次にIRRを確認します。
2つのIRR指標
IRRには、BTIRRとATIRRがあります。
▼BTIRR=税引き前キャッシュフロー
▼ATIRR=税引き後キャッシュフロー
でIRR計算を行います。
※IRRについては「不動産投資の収益目標を検討する方法」もご確認ください
※Excelを利用した計算式は「IRR 関数」 をご確認ください
IRRは他の投資対象と収益率を比較するのに便利です。
今回のサンプルシミュレーションでは、自己資金1,000万円ではATIRR=19.73%と高い数値になっています。ちなみに、IRR=7.18%あると10年で自己資金を倍増させられます。
自己資金決定にも根拠は必要
自己資金を決定する際は
・手持ち資金はどのくらいあるのか
・銀行はどのくらい貸してくれるのか
に大きく影響されてしまいます。
しかし、自己資金決定は資産運用の根本部分です。この記事をご参考に、自己資金による収益性と安全性への影響を確認していただければと思います。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「自己資金による収益性と安全性への影響」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します。
不動産投資へ金利上昇が及ぼす2つ影響
2022年12月20日に日銀はYCC(イールドカーブ・コントロール)運用の見直しを発表しました。
長期金利変動幅を「±0.25⇒±0.5%」に変更しました。
政策金利は-0.1%で変更していませんので、アメリカのような利上げではありません。
しかし、長期金利に影響を与える点と利上げを進める1歩目では、ということで為替(円高)・株(下落)もかなり反応しました。
実際、10年債は一時的に0.25%程度上昇しました(12/2316:30時点10年債金利は0.382%)。
当然、金利上昇は不動産投資にも大きな影響があります。
不動産投資と金利
金利上昇は、基本的に不動産投資へマイナスの影響しかありません。
今回の日銀の政策変更で直接的に影響を受けるのは固定金利です。
金利上昇の影響は大きく分けると
1.利息支払増加でキャッシュフロー減少
2.表面利回り上昇で物件価格下落
の2つです。
1つめの影響
1つめの影響は、想像しやすい影響だと思います。
借入金利上昇で利息支払増加、キャッシュフローが減少することです。
不動産投資シミュレーションで影響を確認します。
今回の政策変更で影響を受けるのは主に固定金利です。10年固定で物件購入したことを想定してシミュレーションします。
サンプル物件は新築・1億円・表面利回り7%です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能の結果を一部抜粋
●2.25% ●2.5% ●2.75% 3種類のキャッシュフローシミュレーションです。
税引き後キャッシュフローを金利2.25%と比較すると
▼2.5%(+0.25%)
年間 約10万円
10年間累計 約110万円
▼2.75%(+0.5%)
年間 約20万円
10年間累計 約220万円
と本当の手取りである税引き後キャッシュフローは大きく減少します。
2つめの影響
2つめの影響は物件価格下落です。
金利上昇でキャッシュフロー減少
⇩
減少分を補うためにより高い利回り必要
⇩
物件価格下落
という流れで物件価格は下落します。
サンプル物件の10年間の税引き後キャッシュフロー累計減少分を補うには
▼+0.25%
物件価格 約9,700万円
表面利回り 約7.22%
▼+0.5%
物件価格 約9,420万円
表面利回り 約7.43%
になる必要があります。
このように、購入時より資産価値が下落することで、出口戦略(売却)に影響を与えます。
以下のシミュレーションは出口(売却)までの影響を考慮した結果です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能の結果を一部抜粋
▼+0.25%⇒約410万円手取り減少
▼+0.5%⇒約820万円手取り減少
と資産運用に大きく影響を与えるのが分かります。
金利上昇の影響は大きい
不動産投資には、空室・家賃下落等、様々なリスクが存在します。その中でも金利上昇リスクは、自分でコントロール困難という点で一番のリスクといえます。
徐々に金利上昇リスクの足音が聞こえてきたこのタイミングで、金利上昇の影響をシミュレーションするきっかけにしていただければと思います。
※アセットランクシミュレーターを利用した金利変動シミュレーションの具体的な操作方法を、以下の動画でご紹介しています
金利が上昇しても問題ないか確認する方法
不動産投資を進めていると「空室」「家賃下落」「修繕」「金利上昇」など様々なリスクに直面します。
その中でも「金利上昇」はもっとも自分でコントロールしにくいリスクです。
今日は、何%の金利上昇まで耐えられるかシミュレーションする方法です。
変動金利の決まり方
不動産投資を行っている方の多くが変動金利で借入をしています。理由は、固定金利に比較して変動金利は低利で借りられるからです。
ちなみに借入金利は
■変動金利⇒政策金利+α
■固定金利⇒10年国債金利+α
で決まります。
このグラフはアメリカの政策金利の2021年7月~2022年6月の推移です。1年で1.5%上昇しています。ちなみに7月も0.75%上がると予測されています。
そうなるとアメリカで2021年7月に変動金利で借入をした場合、約1年で2%以上金利上昇するリスクをおってしまう可能性があったと言えます。
日本はアメリカのような景気の強さ、インフレ率ではありませんので単純には比較できません。しかし、金利上昇リスクを考える際にこの数値は参考になります。
金利上昇リスク
金利上昇を乗り切れるかのポイントは3つです。
1.金利上昇してもキャッシュフローが赤字にならないか
2.次にインカムゲインで目標の収益を達成できるか
3.最後に売却しても自己資金等を回収できるか
です。
まず、第一関門は「赤字キャッシュフロー」にならないかです。
理由は、赤字キャッシュフローになると貯蓄や他の所得から持ち出しが発生して投資どころか負の資産になってしまうからです。
それでは、具体的にシミュレーションします。
サンプルを使ったシミュレーション
このサンプルを使って確認します。
当初の借入金利は1.25%です。その金利が2年後に、現在のアメリカ並みの金利上昇1.75%したことを想定したシミュレーション結果が以下です。
※アセットランクシミュレーターでの分析結果を一部抜粋
今回のサンプルの場合、1.75%金利上昇してもキャッシュフローは赤字になりません。万が一の場合も、持ち出しは発生しそうにない点では安心できます。
ちなみに、金利が約4.5%上昇して6%を超える辺りで赤字になります。但し、金利上昇リスクが分かり易いように家賃下落、修繕等の他のリスクを一切見込んでいないシミュレーションである点は追記しておきます。
長期的な収益への影響
まず、絶対に許容できない赤字キャッシュフローにはなりそうにないことは分かりました。次に考えるのは「金利上昇した場合としない場合の収益へ影響です」
収益性を比較するシミュレーションを行うと
※アセットランクシミュレーターでの分析結果を一部抜粋
上段が金利変動なしの結果です。下段は1度3%に上昇した金利が数年後に2.5%に下落した場合のシミュレーションです。
税引き後キャッシュフローで比較すると約260万円金利上昇を見越した結果が少なくなります。自己資金1,600万円の投資で約260万円なので大きいです。
ただ、この結果で投資するのは絶対に止めようというレベルではないと思います。
大きなリスクの金利変動
今回のサンプルは、何とか金利上昇リスクを取っても投資できるかなというレベルでした。
不動産を借入して購入する場合、金利上昇は本当に大きなリスクです。とにかく、自分で創意工夫して何とかするのが難しいからです。
不動産投資の変動シミュレーションの中でも金利上昇は根拠となるデータが少ないため難しいです。ただ、今回のサンプルのように予測できる範囲で必ず行う必要があります。
この記事を参考にお試しいただければと思います。
3.売却しても自己資金等を回収できるかの分析方法については近々ご紹介したいと思います
※アセットランクシミュレーターを利用した金利変動シミュレーションの具体的な操作方法を、以下の動画でご紹介しています
※関連記事:
・変動金利から固定金利へ借り換えが必要か検証する方法
・予測される金利上昇への対策を検討する方法
予測される金利上昇への対策を検討する方法
円安が進んでいます。今回の円安の主な理由は、日本と他国との金利差によるものと言われています。言い換えれば、日本は世界で一番金利の低い国と言えます。
しかし、この状況がずっと続くとは限りません。不動産は金利の影響が非常に大きい投資です。現在の状況を考えると、本気で金利上昇に備える時期が来ている気がします。
そこで、今日は金利上昇を考慮した不動産投資シミュレーションについてです。
金利上昇シミュレーション
不動産投資の借り入れの多くは「変動金利」です。当然、借入当初は「固定金利」より低い金利で借りられますので収益上有利です。
しかし、住宅ローンと異なり、金利上昇の猶予期間は基本的にありません。
つまり、金利上昇=収益低下になります。最悪の場合はキャッシュフロー(CF)が赤字に陥る恐れもあります。
金利上昇対策として考えられるのは、「繰上返済」と「固定金利への借換」です。
今日は、サンプル物件を使って固定金利へ借換のシミュレーションを行います。
変動と固定金利
金利上昇の影響を比較する為に以下のサンプル物件を使います。
投資開始当初は1.25%で借入しています。金利上昇がCFにどのような影響を与えるかを確認していきます。
金利上昇の影響
以下のシミュレーション結果は
1.金利上昇無し:1.25%のまま変動無し
2.金利上昇あり:1.25%⇒1.75%⇒2.25%⇒3.00%と段階をおって、計1.75%上昇
3.固定金利へ借換:1.25%⇒2.25%の固定金利へ借換
の3つを比較したものです。
表の上部にその年の金利を記載しています。
2036年(投資開始20年後)と2046年(30年後)の税引後CFと自己資金回収率を比較して収益性を確認します。
※クリックして拡大できます
※アセットランクシミュレーター時系列画面の金利変動機能でシミュレーション
2.変動金利のままと3.固定金利借換を比較すると、2036年(投資開始20年)は収益性に大きな違いはありません。しかし、30年後の2046年になると3.固定金利借換が有利になります。
今回サンプルの金利上昇だと、固定金利へ借換を行う方がいいか、行わない方がいいか判断するのが難しいレベルだと思います。
金利上昇への備え
日本は20年以上低金利環境だった為、金利上昇を意識するのが難しくなっています。
しかし、現在の物価上昇、諸外国の金利引き上げ、円安を考えると近い将来金利が上昇しても不思議ではありません。
サンプルのシミュレーションで分かるように、わずか、0.5%の金利上昇でも年間の返済額が10%近く増加します。
空き室等、不動産投資には色々なリスクが存在します。その中でも、金利上昇のリスクは影響の大きなリスクです。
今日の、サンプルでは変動のまま行くという判断も有りだなと思うレベルの収益差でした。
しかし、正直、個別に色々変動させてシミュレーション結果を確認した上でしか、どんな備えを行うのがよいかは判断できません。
アセットランクシミュレーターでは、「時系列入力画面」を利用して簡単に金利上昇シミュレーションが可能ですので、是非、ご確認いただければと思います。
※アセットランクシミュレーターを利用して金利上昇シミュレーションを行う方法をご紹介しています。
※関連記事:
・変動金利から固定金利へ借り換えが必要か検証する方法
・金利が上昇しても問題ないか確認する方法