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不動産投資指標のCCRを使いこなす
不動産投資を検討する際に注目すべき点に、自己資金を上手く運用できているかがあります。この項目を確認するのに便利な不動産投資指標がCCRです。
キャッシュ オン キャッシュ リターン
Cash On Cash Return(CCR)は自己資金を効率よく運用できているか確認するために利用します。
CCRは
キャッシュフロー ÷ 自己資金額 × 100 で簡単に計算できます。
投資した自己資金を手元に残る現金(キャッシュフロー)で割ることで自己資金に対する投資効果を確認できます。数値は高ければ高いほど自己資金に対する投資効果は高いです。10%前後を1つの基準として自己資金の運用状況を検討します。
CCRは高いほど自己資金回収までの時間は短いです。自己資金の回収速度が重要なのは、短期間で回収することで次の投資へ資金を回せるからです。
次に、CCRへ影響を与える項目を整理します。
となります。特に、表面利回りと投資する自己資金額は重要な項目です。
表面利回りとCCR
表面利回りによってCCRはどのように変化するかシミュレーションします。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
表面利回りは高いほどCCRは高くなります。今回のサンプル物件では表面利回り5%まではCCRはマイナス。つまり、キャッシュフロー赤字になっています。また、表面利回り7%程度から投資として検討できる範囲と言えます。
しかし、CCRは高い方がいいんだから、表面利回りは高ければいい物件かというと単純にそうではありません。
その理由については「表面利回りの3つの注意点を理解して正しく利用する方法」をご確認ください。
自己資金割合とCCR
次に自己資金割合のCCRへの影響をシミュレーションします。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
物件+購入諸費用に対する自己資金割合は低いほどCCRは高くなります。今回のサンプルですと、20~30%程度から投資の検討土台に上がる数値です。
しかし、自己資金割合は低いほど良いとは言えません。CCRの隣に安全性を確認できる不動産投資指標のBE%(BER)の数値を載せています。BERは70%程度を目安に考えます。
自己資金割合10%は、CCR 12.09%と高いです。その一方で、BER 82.74%と高いリスクを引き受ける必要があります。
※BERについては「不動産投資指標を使って安全性を分析」をご確認ください。
不動産投資指標のCCRを使いこなす
CCRは不動産投資の効率を比較する際に非常に便利な指標です。しかし、単純にCCRを高めることだけに目を向けると過大なリスクを負う可能性があります。
不動産投資は収益性と安全性のバランスが重要です。CCRを利用する際は安全性の不動産投資指標なども比較しながら利用してください。
(動画)CCRを計算する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「キャッシュ オン キャッシュ リターン」を確認する方法を動画でご紹介します
借入年数による収益と安全性への影響を分析
不動産投資の魅力の1つは借入(レバレッジ)を利用できる投資であることです。
借入を利用する際に検討すべき項目に借入年数があります。借入年数の違いが収益性と安全性へどのように影響を与えるか不動産投資シミュレーションで比較します。
収益性と安全性への影響
キャッシュフロー(CF)、BER等の不動産投資指標を使って借入年数20、25、30年の収益性と安全性を比較します。
比較はサンプル物件を利用して行います。
比較する不動産投資指標は
■税引き前キャッシュフロー
■利息の総支払額
■安全性指標 BER
■10、20、30年目の税引き後CFの累計額と自己資金回収率
この4項目を比較することで、安全性・収益性と期間による影響を確認できます。
不動産投資シミュレーションの結果
借入年数の影響の不動産投資シミュレーション結果は以下です。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
■20年
借入返済の完了する20年目まで安全性、キャッシュフローとも極端に低いです。8年目~借入返済終了時までは税引き後キャッシュフロー赤字になります。
しかし、利息の支払い総額はもっとも少ないです。30年目の税引き後キャッシュフローの累計額は最も多くなります。
■25年
BER 81.86%と安全性に不安があります。また、自己資金回収率は20年目でも100%を超えず借入返済中の収益性は高いと言えません。借入年数20年と異なり、期間中に税引き後キャッシュフロー赤字になる年はありません。
■30年
借入返済中のBER73.05%と安全性、キャッシュフローともに最も高いです。しかし、20年と比較すると利息支払い総額は1,000万円以上多いです。借入返済が終了する30年目の税引き後キャッシュフローの累計額は最も少ないです。
借入年数によるメリット・デメリット
借入年数の短い場合、返済期間中は返済額が多いことで安全性、キャッシュフローともに厳しくなります。不動産投資を始めたばかり。次の物件を買うためにお金を早く回収したい。等の場合には向きません。
しかし、長期間で考えた場合は利息支払い総額は少なく収益性は高くなる傾向にあります。また、途中で物件を売却した場合も、借入残高が少なくなるため、手残額は多くなります。
借入年数を延ばした場合は、借入返済中の安全性は高く、キャッシュフローも多くなります。しかし、長期的な収益性は低くなります。
借入期間の長い場合、短い場合で一長一短あります。それらの特徴を把握した上で、自分の目的に沿う年数はどの辺りか分析する必要があります。
また、今回は金利2%のシミュレーションでしたが、金利の高い場合は特徴の傾向が大きくなることも注意が必要です。
(動画)借入年数による安全性と収益性への影響
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「借入年数による安全性と収益性への影響」を確認する方法を動画でご紹介します
インフレとデフレの不動産投資への影響
2022年頃から物件価格の上昇と利回り低下が続いています。その不動産投資への影響を考えます。
インフレ時とデフレ時の不動産投資
インフレに本格突入した2022年から不動産価格の「急上昇≒表面利回り低下」は進んでいます。
その理由は様々あります。その中でも
1.将来の家賃収入等の上昇を織り込むこと
2.不動産価格はインフレ率と同等程度上昇すること
は大きな理由です。
物件価格上昇の収益へ与える影響
デフレとインフレの特徴を考慮した不動産投資シミュレーションを行いました。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
注目していただきたいのは赤枠の中の金額です。本当の手取りである税引き後のキャッシュフロー額を合計した金額です。つまり、10年間でいくらお金を得られたかを表す数字です。
約8万円の差はありますがほぼ近い数字です。
上がデフレ、下がインフレの不動産投資シミュレーションの例です。
物件価格はデフレ⇒8,000万円 インフレ⇒8,850万円
表面利回りはデフレ⇒8.00% インフレ⇒7.23%です。
物件価格が10%程度上昇したため、表面利回りは0.77%低下しています。
しかし、10年後の累計額は同等程度となっています。その理由はデフレ時とインフレ時の家賃の動きの違いです。
インフレ時の不動産投資シミュレーション
デフレのシミュレーションは、家賃下落を意識してシミュレーションを行う必要がありました。今回のサンプルシミュレーションは、0.5%の下落を考慮してシミュレーションしています。
それに対してインフレのシミュレーションは家賃・維持管理費共に1%上昇するシミュレーションになっています。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
その結果、購入時の物件価格は上昇、利回りは低下しても同等のキャッシュフローの累計額になっています。
また、売却のシミュレーション時もデフレの場合には経年劣化を加味して物件価格が下落することを想定して分析すべきでした。
それに対してインフレの場合には価格上昇を加味して分析を行うことも必要になります。
不動産投資シミュレーションの変化
インフレ時には現在の表面利回りに左右されずに、インフレを加味した家賃上昇で、どのような収益になるか検討する必要があります。
インフレと同程度家賃上昇が見込めるかは重要になります。その際には建物経年劣化、人口減少による家賃下落を超えて家賃上昇する物件を選択する必要があります。
また、デフレ時以上に売却から得られる収益も重要になります。
デフレ時とは異なり、インフレによる不動産価格の上昇で得られる収益が家賃収入の収益を超える場合も多くなっていきます。
不動産投資シミュレーションを行う場合も、インフレとデフレでは分析内容、条件を変更して検討する必要があります。
(動画)変動シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「変動シミュレーション」を行う方法を動画でご紹介します
物件売却時に個人と法人有利なのはどちらか
収益物件の購入時に選択する個人で所有するか、法人で所有するかの選択は不動産投資の収益に大きな影響を与えます。
個人と法人どちらで所有すべきか
今回は、個人所有と法人所有の違いを、不動産の出口(売却)に絞って比較します。
※家賃収入も含めての比較は「個人と法人どちらで所有すべきか検討する方法」をご確認ください。
個人と法人の売却時の大きな違いは税額に出ます。
1.個人は売却時の譲渡所得は分離課税になる。法人は他の所得と合算して計算される
2.個人と法人では税率の区分が異なる
3.個人は長期・短期譲渡所得の区分がある。法人にはない
その他法人は経費にしやすい費用が多い。繰り越し損金の期間が違うなど様々な違いがあります。これらはテクニカルな話になるため触れません。上の3つがどのような影響を与えるかに絞って確認していきます。
個人と法人の売却時の税率
まず、売却時にかかる税率について比較します。
■個人所有
■法人所有
※実効税率は地域によって異なります
個人の売却の譲渡所得は家賃収入の課税所得と分離して考えます。上の表は売却時の譲渡所得にかかる税率です。また、5年以上保有した場合とそれ未満の場合で税率は異なります。
それに対して法人は、同一法人の家賃収入や他の所得と売却時の譲渡所得を合計して課税所得となります。また、所有期間による税率の違いもありません。
以前は法人にも売却期間によって重課という仕組みがありました。しかし、1998年度~から繰り返し延長して停止しています。現在は2026年度迄となっています。しかし、まず復活しないと思います。
個人と法人の売却シミュレーション
サンプル物件を利用して物件購入10年後に不動産を売却した場合のシミュレーションで個人と法人の違いを分析します。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
本来、法人は家賃収入(インカムゲイン)と合算して税額を計算します。
今回のシミュレーションは比較しやすように法人については、家賃収入の課税所得額と案分した譲渡所得額で税額を表示してます。
比較して分かるように個人の方が税額は少なく、売却のキャッシュフローも多いです。理由は個人は法人よりも売却時の税率が低いためです。
次に、5年以内に売却した場合を考えます。
この場合、課税所得額が同じならば法人の税額に変化はありません。それに対して個人は税率が上がります。税額は約690万円に増加。税引き後CFも約1,320万円に減少します。
5年以内の売却は法人の方が売却キャッシュフローは多くなります。
このように、売却のパターンによって個人、法人で大きな差が出ます。
その他の留意点としては、個人は譲渡所得以外で赤字が発生しても分離課税のため合算して計算できません。それに対して法人は合算できるため、他の所得の赤字を相殺して税額を少なくできる可能性もあります。
個人所有と法人所有の損得勘定
基本的に、譲渡所得が黒字になった場合は、個人所有の方が税額は少なくなります。ただし、短期間で売却を予定している場合は法人の方が有利です。
今日は、売却のルールだけに注目しました。実際は家賃収入とトータルで収益性を考える必要があります。
家賃収入の所得額によっては法人が圧倒的に有利になります。これは、中小法人の実効の最高税率は33.60%に対して、個人の所得+住民税は55%近い税率がかされる可能性があるからです。
個人・法人の損得は、個別の状況によって大きく結果は異なります。ご紹介したルールをご参考にシミュレーションしていただければと思います。
(動画)個人と法人の比較シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「個人と法人の違いによる収益への影響」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します
元利均等返済と元金均等返済のどちらを選択すべきか
不動産投資の魅力の1つは融資を利用できる数少ない資産運用という点です。
融資条件によるキャッシュフローへの影響
融資条件でキャッシュフローへ影響を与えるのは
1.借入金額(自己資金との割合)
2.金利
3.借入期間
4.借入種類
の4つです。
この記事では借入種類によるキャッシュフローへの影響を確認します。
元利均等返済と元金均等返済の特徴
物件購入時の融資には主に2つの選択肢があります。
1.元利均等返済
毎月の返済額が同じ金額になる返済方法。返済当初は借入残高が大きいため利息分の占める割合が多い。そのため借入残高の減るペースは遅い。返済が進むにつれて元金分の占める割合が増えて、借入残高の減るペースは徐々に上がる。
2.元金均等返済
毎月返済する元金が同じ金額の返済方法。同じ額の元金に利息分を加えた金額を返済していくため返済額は毎月異なる。借入残高の多い返済当初は返済額が多く、返済の進むにつれて利息分が減少して返済額も減っていく。
それでは、元利均等返済と元金均等返済が不動産投資のキャッシュフローへどのように影響するか確認します。
返済種類によるキャッシュフローへの影響
キャッシュフローへの影響をサンプル物件を利用した不動産投資シミュレーションで分析します。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
最終年(2034年)は物件を売却したキャッシュフローを含んだ結果です。売却のキャッシュフローについては後で解説します。
まず、元利均等返済の毎年のキャッシュフローを見ると最終額は1,682,701円と一定額です。返済額が一定なのでキャッシュフローの結果も一定になります。それに対して、元金均等返済は返済額が減少することで年々増加します。
当初数年間は圧倒的に元利均等返済は多くなります。特に1年目は約95万円も差があります。
しかし、元金均等返済の返済額が少なくなることで差は縮まっていきます。9年後に約35万円差。この分析では掲載のスペース上割愛していますが、14年後に「元利均等返済<元金均等返済」になります。
それでは、次に売却のキャッシュフローシミュレーションを確認します。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
投資開始から10年後に不動産を売却して出口をむかえたシミュレーション結果です。
元利均等返済は28,891,662円に対して、元金均等返済は36,000,000円 約700万円差と売却時に得られ額は元金均等返済が圧倒的に多いです。
元金均等返済は元利均等返済に対して投資当初から元金分支払い額が多く、借入残高の減少スピードが速いためです。
最後に、インカムゲインとキャピタルゲインの合計で得られる金額を比較します。元利均等返済⇒ 45,718,672円 元金均等返済⇒ 46,718,770
円 と約100万円元金均等返済は多くなります。
今回は10年目の比較でしたが、20年目を比較すると、元利均等返済と元金均等返済の収益差は約250万円になります。
元利均等返済と元金均等返済の選択基準
元利均等返済と元金均等返済の不動産投資のキャッシュフローへの影響を比較しました。基本的に元金均等返済の方が収益性は高くなります。
しかし、投資開始当初は元金均等返済の家賃収入に対する返済比率は高くなります。そのため、空き室等のリスクに対して弱い傾向にあります。
また、投資開始当初の手残り額は元利均等返済が多いです。次の投資に向けての早い段階で資金を貯めるという点では元利均等返済に優位性があります。
元利均等と元金均等のどちらを選択するかは、これらの特徴をふまえて、ご自分の投資目標に合う方式を選択する必要があります。
(動画)元利均等返済と元金均等返済のシミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「元利均等返済と元金均等返済」のシミュレーションをする方法を動画でご紹介します
不動産投資本来の収益力をシミュレーションする
不動産投資分析で損益やキャッシュフローは確認されると思います。しかし、もっとも大事な投資全体の収益力を確認する方は意外と少ないです。
不動産投資本来の収益力
不動産投資トータルの収益力を確認するには通常の損益分析、キャッシュフロー分析だけでは不十分です。
1.インカムゲイン + キャピタルゲイン - 投下した自己資金
この金額を確認することで資産増加額を確認できます。投資として不動産を運用する目的は手元に残る資産を増やすことです。この計算をすることで投資によっていくら資産が増えたかを確認できます。
2.IRRで収益率を確認
IRRを使うことでどれだけ効率よく自己資金を運用できたかを簡単に比較できます。
不動産投資の収益力を確認する方法
それでは具体的に見ていきます。
1.インカムゲイン + キャピタルゲイン - 投下した自己資金
前提として認識しておきたいのは、不動産投資の成否は出口まで分からないということです。
出口は多くの場合売却という形をとります。つまり、投資の成否は売却完了まで分からないということです。
トータルの収益力を確認するには、売却までの家賃収入のキャッシュフロー と 売却でのキャッシュフローを合計する必要があります。
この合計から投資開始時に使用した自己資金を引いた金額が本当に増加した金額です。
2.IRRで収益率を確認
IRRは投資収益を確認するのにとても便利な指標です。1つの理由は、時間軸を考慮(同じ金額が手元に残る場合は早い方が高い収益率になる)して収益率を確認できるからです。
※IRRについては「IRRの利用方法と目標値の決め方」をご確認ください
不動産投資の収益力シミュレーション
それでは以下のサンプル物件を利用して具体的な分析をします。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
上表はインカムゲイン(家賃収入)のキャッシュフロー分析。下表はキャピタルゲイン(売却)のキャッシュフロー分析です。
確認していただきたいのは赤枠内です。
まず、上表で税引き後キャッシュフロー累計を確認してください。2033年まではインカムゲインのみの累計額。2034年の32,222,953円はインカムゲインとキャピタルゲインの17,016,675円が合計された金額です。
この合計額が投資で手元に残った金額になります。ただ、元々2,000万円の自己資金を投下していますので、実際の増加額は12,222,953円となります。収益力を確認するためにはこの金額を確認する必要があります。
2.IRRで収益率を確認
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
IRRの中でもATIRRという税引き後キャッシュフローベースで計算するIRR値を使って、売却価格毎のIRRを分析しています。
9,000万円の場合は6.52%となっています。また、7,200万円以下では赤字になることも分かります。IRR値は高ければ高いほど収益率は高いです。
IRRを利用する際は安全資産とされる10年物国債の金利を1つの基準として比較して十分な収益力があるかを確認します。
出口まで考慮した収益力
不動産投資の収益力を語る場合は、どうしても出口について考えておく必要があります。その際にご紹介した2つの分析を行うことでトータルの収益力を確認できます。
(動画)税引後CFとIRRを確認する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「税引後CFとIRR」を確認する方法を動画でご紹介します
不動産投資指標のDCR
不動産投資で破綻する可能性の高いのは借入返済が困難になるパターンです。
そんなことにならないように、DCR(Debt Coverage Ratio)を利用して不動産投資シミュレーション時点でリスクを確認できます。
借入リスクを管理できる指標
DCR(Debt Coverage Ratio)は
ネット収入を元利返済額で割り出した数値です。元利返済額の何倍の実質収入があるかを判断できます。この数値は高い方がより安全性は高いと判断できます。
それではDCRについて詳しく確認していきます。
不動産投資指標のDCR
DCRを計算するには2つの項目が必要です。
1.ネット収入
家賃収入等の収入から、物件を維持するのに生じる諸費用(維持管理費)を差し引いた金額
2.元利返済額
借入の元金返済と利息支払の合計額
具体的な計算例は
DCR=1.26となります。1.3程度であれば一定の安全性があると判断できます。1.26は極端にリスクの高い状態ではありません。
DCRに類似した指標に、支払額÷収入×100で計算する返済比率が有ります。しかし、必ず発生する維持管理費を考慮に入れたDCRはよりリスク管理に適しています。
DCRに影響を与える項目
DCRを決定するのは収入額、維持管理費、借入内容です。DCRを改善するには
1.収入額を増加させる
2.維持管理費を減少させる
3.借入内容を見直す
の3つが考えられます。
その中でも効果の大きい借入内容によるDCRへの影響をシミュレーションします。
以下は元利均等返済で借入を行って、借入額、借入年数、金利の違いによるDCRへの影響を比較したものです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
DCRの数値は大きく異なります。DCRの数値が高く、より安全性の高いのは
・借入年数長い=DCRは高い
・金利低い=DCRは高い
・自己資金割合高い=DCRは高い
という結果になります。
DCRで安全性の確認をする
不動産投資をしていると恐怖を感じる1番の要因は借入を返済できないことです。
DCRを利用して返済の安全性を確認できます。また、以下のように家賃の変動、金利の変動でどのようにDCRが推移していくかを確認するのも有効です。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
不動産投資シミュレーション時にDCR1.3以上で推移する条件はどのような条件かを確認する参考にしていだければと思います。
(動画)DCRを確認する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「DCR(Debt Coverage Ratio)」を確認する方法を動画でご紹介します
自己資金0のフルレバレッジでの不動産投資
自己資金0で不動産投資を行う、いわゆるフルレバレッジは魅力的です。ただ、その特徴を把握して投資を行わないとリスクの高い投資になります。
フルレバレッジでの投資
自分のお金を使わずに物件を購入できる自己資金0は本当に魅力的です。しかし、フルレバレッジはメリットばかりとは言えません。
不動産投資シミュレーションを利用してフルレバレッジの特徴を確認します。
特徴を把握するために、収益性と安全性を確認できる不動産投資指標を使います。
■収益性の指標
▼税引き前キャッシュフロー(税引前CF)
▼実質の収益額(税引き後キャッシュフローから自己資金を引いて増加した金額)
▼売却キャッシュフロー(売却時に借入等を返済して手元に残る金額)
▼ATIRR(詳しくは「IRRの利用方法と目標値の決め方」をご確認ください)
■安全性の指標
▼BER(詳しくは「不動産投資指標を使って安全性を分析」をご確認ください)
5つの指標を利用します。
フルレバレッジVS自己資金率20%
以下のサンプル物件を使用します。
不動産投資シミュレーションの条件は
※自己資金0と20%を比較
※取得時の諸費用は別途自己資金で支払い
※借入金利1.5%と2.5%を比較
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
赤枠は収益性・安全性に優れた項目です。
多くの項目でフルレバレッジよりも自己資金20%が高いです。 特に、金利が高くなるとフルレバレッジの投資効率は大きく落ちます。
しかし、フルレバレッジは自己資金をどれだけ上手に運用できたかを表すATIRRは大きく上回ります。つまり、少ない自己資金を上手く運用できたことになります。
その一方で気になるのは安全性を表す指標のBERです。安全性を考慮すると70%程度が理想です。
フルレバレッジは80%を超えます。特に金利2.5%は少しの空き室増や家賃低下等で赤字になる恐れのある高リスク状態です。
フルレバレッジは収益性の高いイメージを持たれがちです。しかし、1案件での収益性を比較するとそうは言い切れません。また、金利の高い場合はその傾向は顕著になります。
フルレバレッジ投資の特徴
フルレバレッジは自己資金無しで投資できるという点で魅力的です。しかし、自己資金を適切に利用した場合より収益性・安全性に劣る場合は多いです。
その一方、フルレバレッジのおかげで手元に残った自己資金で複数物件を購入する。株式等を購入して運用する。といった手元資金を効率よく運用する際には有利です。
また、フルレバレッジを上手く利用することで資産運用の速度を早められるのも事実です。
フルレバレッジを利用する際には空き室を増加させない。金利動向に気を配る等のリスク管理をより慎重に行う必要はあります。
この記事をご参考に、自己資金の違いによる収益性・安全性への影響のシミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)自己資金額による投資への影響
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「自己資金額による投資への影響」を分析する方法を動画でご紹介します
不動産投資 売却シミュレーションの手順
不動産投資を検討する際に売却シミュレーションは必須と言える分析です。
売却シミュレーションで確認すべき結果
不動産投資の売却シミュレーションで確認しておきたい結果は2つです。
1.キャッシュフロー分析
2.譲渡所得の分析(税額分析)
です。
この2つを確認することで不動産投資の売却で得られる収益をシミュレーションできます。
売却シミュレーションに必要な情報
不動産投資の売却シミュレーションに必要な情報は、
1.売却予定日
具体的に売却を予定している場合はその予定日。ない場合は10年後を目途に検討します。
2.取得費
物件の購入価格、仲介手数料等を合計した金額です。譲渡所得の計算に必要です。取得費については「不動産売却に必要な知識 取得費」をご確認ください。
3.推定売却価格
売却予定日に売却可能な推定の売却価格を計算します。推定の売却価格については「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご確認ください。
4.譲渡費用
売却時に必要な費用を計算します。概算額は推定売却価格の4~6%です。譲渡費用を詳細に計算したい場合は「No.3255 譲渡費用となるもの」もご確認ください。
5.売却予定日の借入残高
金融機関の返済予定表等を確認して売却予定日の借入残高を確認します。
6.売却予定日の減価償却累計額
減価償却として処理した累計額を計算します。
この6つの情報があれば、売却シミュレーションを行うことが可能です。
売却シミュレーションの計算方法
以下は2025年1月に1億円で購入した物件を、10年後の2034年12月に売却した場合のシミュレーションです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
売却の税引き後キャッシュフローの計算は
■売却価格-譲渡費用-借入金残高-売却税額
譲渡所得の計算は
■売却価格-譲渡費用-(取得費-減価償却費累計)
で計算できます。
売却シミュレーションで最低限確認したいのは、
1.売却の税引き後キャッシュフローはプラスになっているか:
マイナスの場合は借入を返済できない恐れがあります。また、売却の税引き後キャッシュフローと家賃収入の税引き後キャッシュフロー累計額を合算して投資から得られた全体の収益を確認できます。
2.譲渡所得と税額はどの程度か:
譲渡所得に応じた税額を確認します。税率は所有期間によって以下のように異なります。
売却シミュレーションは必須
不動産投資は売却まで含めた結果を確認して初めて成否の判断ができます。ぜひ、ご参考にしていただき売却のシミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)売却シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「不動産投資の出口(売却)まで考えたシミュレーションを行う方法」を動画でご紹介します
キャッシュフロー分析で確認したい4つの結果
不動産投資を検討する際に多くの方が利用する分析方法はキャッシュフロー分析です。
キャッシュフロー分析で重要視する項目は投資家さんによって異なります。しかし、確認しておくべき結果もあります。
キャッシュフロー分析で確認すべき結果
最低限確認したいのは4つの結果です。
1.税引き後キャッシュフローに赤字の年はないか
2.税引き後キャッシュフローの減少幅はどの程度か
3.自己資金を回収できる年はいつか
4.売却時のキャッシュフローはプラスになるか、インカムゲインと合算で自己資金を回収できるか
の4つです。
キャッシュフロー分析で4つの結果が重要な理由
それではそれぞれの項目を見ていきます。
1.税引き後キャッシュフローに赤字の年はないか
赤字の年が1年でもある場合は他の収入から持ち出しが発生するため要注意です。
2.税引き後キャッシュフローの減少幅はどの程度か
減価償却費と元金返済額の関係で税引き後キャッシュフローは投資年数を経過する毎に減少していきます。この減少ペースを確認します。
※詳しくは「キャッシュフローと課税所得の関係性を理解する」をご確認ください
3.自己資金を回収できる年はいつか
不動産投資の目的は投資した自己資金をできるだけ早く増加させることです。この確認を行うために、税引き後キャッシュフローの累計額が投資した自己資金を超える年を確認します。
4.売却時のキャッシュフローはプラスになるか、家賃収入のCFと合算で自己資金を回収できるか
家賃収入のキャッシュフロー分析だけでは不十分です。売却を想定して、売却だけのキャッシュフロー分析も行ないます。また、家賃収入のキャッシュフローと合算で自己資金を回収できるかも確認します。
それではサンプルシミュレーションで具体的に確認します。
キャッシュフロー分析のサンプル
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
1.キャッシュフロー赤字の年は無いことが分かります。
2.税引き後キャッシュフローは年々減少します。2026年と2040年を比較すると約13%減少します。
3.インカムゲインで投資した自己資金2,000万円を回収できるのは2040年であることが分かります。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
4.売却キャッシュフローの分析を確認すると2100万円手元に残ります。また、自己資金を回収できることも分かります。
不動産投資シミュレーションとキャッシュフロー分析
不動産投資シミュレーション時のキャッシュフロー分析は十人十色で注目点は異なります。しかし、ご紹介した4つの項目は最低限確認したい結果です。
キャッシュフローのシミュレーション時にご参考にしていただければと思います。
(動画)キャッシュフロー分析
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「キャッシュフロー分析」をする方法を動画でご紹介します