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物件価格と金利とインフレの関係性
日銀 植田総裁のマイナス金利解除の可能性についての記事が掲載されました。マイナス金利が解除されれば、借入金利上昇の可能性は高まります。
不動産投資への金利の影響
金利上昇の不動産投資への影響で真っ先に思いつくのは、利息支払い増加によるキャッシュフロー悪化です。
そして、キャッシュフロー悪化を通して、もう1つ大きな影響を受ける項目があります。
それは物件価格下落の可能性です。下落する理由は収益還元法の視点で考えると良く分かります。
現在、収益還元法は不動産投資シミュレーションの主流です。収益還元法を細かく説明すると小難しい内容になります。しかし、単純に書けば
「目標収益を達成できるかを基準に判断する方法」です。
この視点で考えた時に、金利上昇は物件価格へ
1.金利上昇
↓
2.キャッシュフロー悪化
↓
3.目標収益に到達しない
↓
4.内容見直し必要
↓
5.物件価格見直しor投資中止
↓
6.物件価格下落
このような流れで影響を与えます。
金利上昇の影響をシミュレーション
サンプル物件を使って金利上昇の税引き前キャッシュフロー(CF)と物件価格への影響をシミュレーションします。
この物件への投資のために借入した金利を、0.5%ずつ変動させて税引き前キャッシュフローへの影響を比較します。
1.5%時には年間約150万円あった税引き前キャッシュフローは徐々に減少していき、5.0%で赤字に転落します。金利上昇の影響の大きさが分かります。
アメリカは約1年半で5%近く政策金利を上げています。日本では現実感のない上昇です。しかし、諸外国では現実に発生しています。
物件価格への影響
次に、物件価格への影響を確認します。
金利1.5%と同等の約150万円の税引き前キャッシュフローを稼ぐために、いくらで物件を買う必要があるかとその際の表面利回りを一覧にしました。
金利上昇ごとに、安い物件価格(高い表面利回り)で購入する必要があります。つまり、金利上昇⇒物件価格下落になります。
しかし、こんなことを疑問に思うかもしれません。「金利上昇(利上げ)=物価上昇時だから、家賃も上がって物件価格も上昇するはず」
確かにその通りです。ただ、単純に連動するわけではありません。
インフレと家賃上昇と物件価格
日本の家賃はインフレを約2年程度遅れて追いかけてくると言われています。
理由は「入居後に家賃を上げるのは非常に困難」だからです。
借地借家法は新法になっても、借手の権利を強く保護しています。そのため、インフレになったから即家賃を上げるのは不可能です。
「インフレ⇒金利上昇」よりも「インフレ⇒家賃上昇」はかなり遅れてやってきます。
その間、キャッシュフロー悪化と物件価格下落(担保価値下落)を耐え忍ぶ期間が発生します。
今回のシミュレーションは分かり易くするために、かなり単純化しています。そのため、この通りなるわけではありません。しかし、基本的に
■金利上昇=キャッシュフロー悪化
■金利上昇=物件価格下落
です。
金利上昇の可能性は高まっています。この点を頭に置いて不動産投資シミュレーションを行う際の参考にしていただければと思います
(動画)金利変動シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して金利変動シミュレーションを行う方法
4つの不動産投資指標を利用して収益性と安全性をバランスよくチェックする
「不動産投資シミュレーションで何を重視して確認すべきか分からない」
こんなお話を聞くことがあります。
分析結果を確認する際に重視すべきなのは「投資期間中を網羅する形で収益性と安全性をバランスよくチェックする」です。
4つの不動産投資指標
収益性と安全性をバランスよく確認するためには、4つの不動産投資指標を利用すると便利です。
その4つの指標は
1.税引き後キャッシュフロー
2.CCR(Cash On Cash Return)
3.BER(BE%)
4.Internal Rate of Return(IRR/内部収益率)
の4つです。
この4つを利用することで収益性と安全性をバランスよく分析することができます。
4つの不動産投資指標の解説
それでは、4つの指標について説明します。
1.税引き後キャッシュフロー
■計算式
収入(家賃収入等)-維持管理費(管理費・修繕費・固定資産税等)-返済額(元金・利息)-税金(所得税・住民税)
本当の手取り額です。不動産投資シミュレーションでもっとも重要視すべき指標
2.CCR(Cash On Cash Return)
■計算式
キャッシュフロー(税引き前or税引き後)÷自己資金×100
1年間で手元に残るキャッシュを投資した自己資金で割り自己資金に対する投資効率を確認する指標。数値が高ければ高いほど投資効率は高い
3.BER(BE%)
■計算式
(維持管理費+返済額)÷満室想定家賃(潜在的総収入)×100
定期的に必要な費用(固定費)と満室想定家賃を割ることで投資の安全性を確認する指標。数値が低いほど安全性は高い
4.Internal Rate of Return(IRR/内部収益率)
■計算式
画像の赤枠内が計算結果と計算式。Excelでの計算方法を知りたい方は「IRR 関数(Microsoft社)」をご確認ください。
不動産の出口(売却)まで考慮した自己資金の利回り。高ければ高いほど運用成績は良い。他の投資対象と運用成績を比較する際に便利
この4つの不動産投資指標で、収益性と安全性両面をバランスよく分析できます。
4つの不動産投資指標の確認ポイント
次に、4つの指標の確認すべきポイントです。
1.税引き後キャッシュフロー
・赤字又は赤字になりそうな年はないか・・赤字の年がある場合は自己資金の持ち出しが発生する可能性が有り注意
2.CCR(Cash On Cash Return)
・目標値に達しているか・・8~10%程度を目標に検討。この数値で約10~13年で自己資金回収可能
3.BER(BE%)
・適正な数値以下か・・70%以下を維持できるか。家賃下落・空き室等の変動で30%程度の収入減まで黒字を維持できる水準
4.Internal Rate of Return(IRR/内部収益率)
・目標値に達しているか・・IRR=7.18%で10年で自己資金を倍にできる。これを参考に目標を検討
上記の目標値を参考にシミュレーション結果を確認してください。
収益性と安全性のバランス
不動産投資シミュレーションを確認する際には、投資期間中を網羅して収益性と安全性をバランスよく確認する必要があります。
■収益性の視点⇒ 不動産へ投資するリスクを考慮しても、自己資金を上手に運用できそうか?
■安全性の視点⇒ 家賃下落・空き室率が増えても赤字になりにくか?
を重視して結果を確認してください。ぜひ、ご参考に不動産投資シミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)4つの不動産投資指標を利用する
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して税引き後キャッシュフロー・CCR・BER(BE%)を計算する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用してIRR(内部収益率)を計算する方法
2000万円の運用先を不動産以外で選択肢する方法
資産運用の方法は不動産だけではありません。株、債権、仮想通貨等数限りなくあります。
もし、2,000万円の自己資金を投資するならばどこに投資すべきでしょうか。
2,000万円の運用先
今回は2,000万円の運用先として、株と不動産に絞って検討します。
まず、それぞれの良い点と悪い点を確認します。
このまったく異なる投資対象を比較するのに便利な指標はIRRです。
収益率比較に便利なIRR
Internal Rate of Return(IRR/内部収益率)は不動産投資と他の収益率を比較する際に便利な指標です。ただ、一般の大家さんはあまり利用していません。家賃収入のキャッシュフローだけを強く意識した分析では使うことは少ないからです。
しかし、自己資金を効率よく運用するという、資産形成で重要なファクターを確認するには使いやすい指標です。
IRRには2種類あります。
1.BTIRR⇒税引き前の金額で計算
2.ATIRR⇒税引き後の金額で計算
IRRを計算する際に必要な項目は
1.投資した自己資金額
2.運用中の家賃・配当等の額
3.売却で受け取れる収益の額
この3項目の情報があればExcelで簡単に計算できます。Excelを利用したIRR(内部収益率)の計算例は
赤枠の中がIRRの計算結果と計算式です。さらに、Excelでの計算方法を知りたい方は「IRR 関数(Microsoft社)」をご確認ください。
また、IRRについては「インフレ時代の不動産投資で利用したい指標」もご確認ください。
不動産と株の運用状況を比較する
不動産と株のIRR比較を以下の内容で行います
税引き後の手取り額を利用してATIRRを計算します。
それぞれ、投資開始から10年後に-20%~+20%で売却できた場合の運用比較です。圧倒的に不動産の数値の高いことが分かります。
理由は
1.利回りが高いこと
2.借入を利用して8,000万円の投資ができたこと
3.減価償却を利用して課税所得が減少していること
です。
ちなみに、不動産のATIRRと同等の運用成績を出すために必要な株の売却額は
株での運用は値上がり(売却益)の重要性の高いことが分かります。
ただ、不動産ならではの注意点もあります。今回のシミュレーションでは、空室、家賃下落、金利上昇等の影響を一切考慮していません。不動産での運用はこれらのリスクを引き受けることで、株よりも有利な運用ができている側面もあります。
運用先は不動産だけではない
シミュレーションを行うことで、それぞれの特徴が分かります。運用先は不動産だけではありません。
不動産に優位性があるかは、他の投資対象と比較しないと分かりません。ぜひ、ご参考に、ご自分の目標と合致する投資対象は何なのか検討する参考になさってください。
(動画)不動産投資にIRRを利用する
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用した不動産投資シミュレーション時にIRR(内部収益率)を活用する方法
不動産投資用の借入の年数は長いほどいいは本当か
不動産投資の魅力の1つは「長期の借入を利用できる」ことです。
借入を利用する際のポイントは
1.借入金額(自己資金との割合)
2.借入年数
です。
今日は、借入年数によるキャッシュフローと安全性への影響についてです。
借入年数はどう決まるか
借入年数は一般的に法定耐用年数を基準に決まります。
ときどき「銀行の貸してくれる年数キリギリで借りる方が良い」という内容を見かける時があります。
しかし、それは本当でしょうか。収益性と安全性の両面で検討します。
借入年数による安全性への影響
以下のサンプル物件を使って、借入年数25・30・35年のシミュレーション結果を比較します。
安全性への影響は、不動産投資指標のBE%(BER)を利用します。BE%(BER)は損益分岐点を表す指標で70%以下を目安にします。
期間が伸びるほど、返済額(元金返済分)が減少してBE%は改善します。金利1.75%⇒30年以上。金利3.0%⇒35年の借入年数で一定の安全性を確保できそうです。
借入年数によるキャッシュフローへの影響
借入年数の収益性(キャッシュフロー)への影響をシミュレーションします。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能を利用
毎年の税引き後キャッシュフローを確認すると、返済額減少、利息支払増による税額の減少で、借入年数25年と35年では80万円以上の差が出ます。しかし、2037年の赤枠の中を確認すると状況は変わります。
2037年には出口をむかえて6,000万円で物件を売却します。2037年の税引き後キャッシュフロー累計には売却キャッシュフロー+投資期間中のキャッシュフロー合計の数値が表記さています。この金額は投資で手元に残ったです。
つまり、売却(出口)まで含めた投資トータルで考えると借入年数の短いほど累計キャッシュフロー額は多いです。
借入年数は長いほど元金返済は進まず、売却時にまとめて返済するため収益性は悪化します。
金利1.75%は、借入年数25年と35年で約140万円です。しかし、金利3.00%で借入を行った際には
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能を利用
約260万円もの差になります。
借入年数の決定に必要なこと
借入年数を延ばすことで、単年の安全性(BER)と収益性(キャッシュフロー)は改善します。しかし、不動産投資トータルの運用で考えた場合には収益性を落とすことになります。
今回、ご紹介したシミュレーションで分かるように、単年でのキャッシュフロー改善効果を考えると、金利の低い場合には借入年数を延ばすことのトータル収益への影響は小さいです。
金利が低く、次の投資資金作りをして再投資を考えている時は、できるだけ借入期間を延ばすほうが良いです。
しかし、金利が高くなるにつれてトータル収益への影響は大きくなり、長い借入期間を選択するデメリットは大きくなっていきます。
ぜひ、ご参考にしていただき、借入年数検討のご参考になさってください。
(動画)返済年数シミュレーションを行う方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用した返済年数による影響分析を行う方法をご紹介
不動産投資の繰り上げ返済のメリット・デメリットを検証する
私の周辺でも金利上昇を警戒する投資家さんは増えています。金利上昇は自分でコントロールする手段はほとんど無いという点で大きなリスクです。
そんな、金利上昇への対応策として取れる数少ない手段は「繰り上げ返済」です。
繰り上げ返済の種類
繰り上げ返済には2種類あります
1.期間短縮型:返済額は同額で返済期間を短縮するもの
2.返済額軽減型:返済期間は同じで返済額を減額するもの
です。
※繰り上げ返済タイプについて
この2つの繰り上げ返済を比較したキャッシュフローシミュレーションと繰り上げ返済のメリット・デメリットについて考えていきます。
繰り上げ返済のメリット・デメリット
不動産投資の繰り上げ返済は、住宅ローンの繰り上げ返済とは異なる視点で考える必要があります。
■繰り上げ返済のメリット
1.返済総額の減少
2.担保価値の上昇
■繰り上げ返済のデメリット
1.投資効率の落ちる可能性
2.再投資への資金減少
以下は2017年に投資開始、2023年迄の税引き後キャッシュフロー累計額(投資で手元に残った金額)1,015万円の内1,000万円を繰り上げ返済したシミュレーションです。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの繰り上げ返済機能を利用して計算
返済総額は期間短縮型の場合は約350万円減少します。これを見て「返済総額減るならいいじゃん」と思うかもしれません。住宅ローンならそうかもしれません。
しかし、投資物件の場合、さらに重要な項目があります。それは投資効率です。投資効率を、投資した自己資金の何%を何年後に回収できるか比較しやすい自己資金回収率を使って比較します。
20年後・30年後の自己資金回収率を確認すると
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターのキャッシュフロー機能を利用して計算
1,000万円の繰り上げ返済に繰り上げ返済手数料10万円(1%)を加味したシミュレーションです。
20年後(2036年)では繰り上げ返済に1,000万円を使ったため、自己資金回収率は繰り上げ返済無しに比較して大幅に悪化します。30年後は繰り上げ返済した場合が逆転します。
投資効率という視点で考えると、繰り上げ返済を行うか疑問が生じます。また、手元資金を繰り上げ返済に利用することで、次の物件への再投資を行えなくなる大きなデメリットもあります。
金利上昇時の繰り上げ返済
次に金利変動(上昇)時の繰り上げ返済シミュレーションです。
2017年購入時1.5%⇒2024年 2.5%へ上昇の分析です。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターの金利変動・繰り上げ返済機能を利用して計算
返済総額は約315万円・約645万円と大きく減少します。
投資効率を確認すると
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターのキャッシュフロー機能を利用して計算
金利上昇のあった場合には、無い場合に比較して繰り上げ返済効果は高くなっています。それでも、今回の借入金額、期間で金利1%上昇だと、再投資しにくくなるデメリットを考慮すると、繰り上げ返済を選択するか微妙です。
ちなみに、繰り上げ返済の翌年2025年単年の税引き前・税引き後キャッシュフローを比較すると
返済軽減型は、約55万円のキャッシュフロー改善効果。期間短縮型は、元金返済割合が増加することで税引き後キャッシュフローは減少します。
不動産投資での繰り上げ返済
不動産投資という視点で繰り上げ返済シミュレーションを行いました。返済総額の減少や返済軽減型では単年のキャッシュフロー改善効果のメリットはあります。一方、投資効率や再投資を考えるとデメリットも目立つ結果になります。
借入期間、金利、借入方式等によって大きく結果は異なりますので、この内容を参考にしてたいだき、ご自身にあった分析を行っていただければと思います。
(動画)繰り上げ返済シミュレーションを行う方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用した繰り上げ返済シミュレーションを行う方法のご紹介
売却収益分析で確認したい3つの基準価格
不動産投資の収益シミュレーションを行う場合には2つの視点をもって分析する必要があります。
1.家賃での収益(インカムゲイン)
2.売却での収益(キャピタルゲイン)
のシミュレーションです。
現在、物件価格上昇に家賃上昇が追いついていないことで、表面利回りは10年前と比較して大幅に低下しています。
このような状況もありキャピタルゲインの重要性は増しています。このキャピタルゲインのシミュレーションで確認したい3つの価格があります。
売却シミュレーションで確認したい3つの価格
確認したい3つの価格は
1.売却キャッシュフローがマイナスにならない価格
2.自己資金を回収できる価格
3.目標収益を達成できる価格
この3つの分析を行うことで安全性と収益性両面の分析ができます。
売却キャッシュフローがマイナスにならない価格
まず確認しておきたいのは、売却キャッシュフローがマイナスにならない価格です。
この項目は死守しなければならない基準です。理由は、基準を下回った場合、借入返済ができずに売却したくても出来なくなる可能性があるからです。
新築重量鉄骨造 9,000万円 表面利回り6.5%の物件を使ってサンプルシミュレーションをします。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
最悪の結果を想定したシミュレーションを行うことで、出口の際に4,850万円を下回ることは許されないことが分かります。
自己資金を回収できる価格
次に確認が必要なのは、自己資金を回収できる価格です。
投資した自己資金は返ってきますので時間と労力を除けば損はしない(インフレは考慮しない)売却価格です。
以下は自己資金1,800万円を回収できるかシミュレーションしたものです。
自己資金100%回収(自己資金回収率100%)したかは、インカムゲイン+キャピタルゲインの合計値で確認します。
今回のサンプルでは約5,100万円で売却できれば自己資金を回収できます。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
自己資金を回収できない投資では話になりませんので、この基準も最低限超えたいラインです。
目標収益を達成できる価格
前の2つの基準は、最低限超えたい基準でした。
3つめは、目標収益を達成する売却価格はいくらかです。この基準を比較するには不動産投資指標のIRRを利用します。
※IRR(BTIRRとATIRR)についてはこちらをご確認ください
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
IRRを利用する際に覚えておくと便利な数値は7.2%です。約7.2%で10年運用できると自己資金を倍にできます。今回のシミュレーションでは約7,200万円でこの基準を達成できます。
売却シミュレーションの重要性
不動産投資シミュレーションを行う際に、つい、インカムゲインだけの分析を行ってしまいがちです。しかし、キャピタルゲインまで含めた分析を行わないとシミュレーションとしては不完全です。
ぜひ、この内容をご参考にしていただきシミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)売却収益シミュレーションを行う方法
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを利用した売却収益シミュレーションの入力方法のご紹介
家賃変動・空室を加味して現実的な不動産投資シミュレーションを行う方法
2009年に私たちが不動産投資シミュレーションツールを発売した際は、まだ、不動産投資シミュレーションは一般的ではありませんでした。
最近は、多くの投資家さんが利用するようになり、意思決定の参考ツールとして一般的になってきたと思います。
しかし、不動産投資に限らず、シミュレーション全般で言えることは、
「前提(入力)条件」が現実離れをしていると、ほとんど意味のない分析になってしまうことです。
不動産投資シミュレーションの前提条件
現実感ある分析は購入時の情報だけでは行えません。
理由は、10・20年と続ける投資(運用)は、時間経過による変動を条件に加えて行う必要があるからです。
時間経過による変動で特に考慮すべき項目は
1.空室
2.家賃変動
3.金利
4.修繕費
5.将来の売却可能額
の5つです。
今回は空室・家賃下落について現実感あるシミュレーションを行う方法についてです。
※その他3~5の項目については関連記事をご参照ください。
不動産投資シミュレーションの空室率設定
現実感ある空室率を検討する際に役立つデータは、住宅及び世帯に関する基本集計(総務省統計局)です。
このレポート内の「現住居以外に所有する住宅の主な用途別普通世帯数」の調査結果を確認すると
「住宅及び世帯に関する基本集計」を参考にアセットランクが作成
約13%の空室率であることが分かります。しかし、この数値は全国平均のものです。また、まともに賃貸募集していない空き家も含まれていると考えられます。
この辺りを調整すると、都心や政令指定都市の中心部等は8~12%。地方都市等は13~20%を目安にシミュレーションを行うと良いと思います。
不動産投資シミュレーションの家賃変動設定
家賃変動については以下のデータが役立ちます。
▼劣化が住宅賃料に与える影響とその理由
▼マンション賃料インデックス
上記ホームページ「劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」をご確認いただきたいと思います。少し古いデータですが東京23区は、築20年頃まで経年劣化で1~2%前後下落していることが分かります。
次に、マンション賃料インデックスを確認します。
出所:マンション賃料インデックス(アットホーム株式会社、株式会社三井住友トラスト基礎研究所)を元にアセットランクが作成
上記は東京23区のシングル・コンパクト・ファミリーの総合指数データです。ここ10年近く、年平均約1~2pt程度上昇していることが分かります。
これらの傾向から推測する今後の家賃変動は、都心、政令指定都市は0~0.5%程度下落。地方は1~3%程度下落でシミュレーションを行うといいと思います。
変動有り、無しシミュレーション比較
変動有りと無しで、どの程度結果に影響があるか比較します。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターで分析
上が変動無し、下が空室率10%・年0.5%家賃下落を加味した分析結果です。
20年後(2042年)の税引き後キャッシュフロー(CF)累計は、約1,400万円の差があります。今回は自己資金1,600万円でのシミュレーションですので、大きな影響のあることが分かります。
不動産投資シミュレーションの精度
分析結果を比較して分かるように、新築や物件購入時から変動の無いシミュレーションでは、現実感のない分析になります。ご紹介したデータ等を参考にしていただき、変動シミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)変動シミュレーションを行う方法
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを利用した変動分析の入力方法のご紹介
物件購入後、定期的に確認すべきあるバランス
先日、こんなご質問をいただきました。
「借入を利用して不動産投資をするリスクは高くないですか?」
確かに自己資金だけでの投資と比較してリスクが高くなるのは事実です。
借入のメリットとデメリット
不動産購入の際に借入を利用する投資家さんは多いと思います。いくつかある理由の1つは、資産運用を行う対象としては珍しく金融機関がお金を貸してくれやすいからです。
お金を貸してくれる理由は
1.株等に比較すると価格変動が緩やか
2.持ち逃げされる可能性がない
このような理由で担保として信用できるからです。
また、投資する私たちにも借入は大きなメリットがあります。いわゆる、レバレッジ効果で、自己資金の何倍もの運用を行うことができます。
では、借入のデメリットは何でしょうか。それは「返済できない恐れがある」です。
レバレッジというメリットを利用するために、このデメリットを管理する必要があります。そんな時に定期的に確認しておきたいバランスがあります。
確認したいバランス
借入のデメリットである返済できない状態に陥らないために、定期的に確認したいバランスは「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」であるかです。
この状態は、なぜ、重要なのでしょうか?それは、万が一の場合には売却することで、借入のデメリットである返済できない状態になりにくいからです。
では、具体的にどのように比較すればいいでしょうか
返済可能な状態か確認する
「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」を確認するのに必要な項目は2つだけです。
1.借入残高
2.不動産資産価値(売却可能価格)
借入残高に関しては、返済表等を確認すれば簡単に確認可能ですので割愛します。
問題は、不動産資産価値(売却可能価格)をどう確認するかです。一番正確なのは、売りに出してお客様の反応を見ることです。しかし、実際はそうは行きません。そこでお勧めなのは、
1.収益還元法で計算
2.相場的価格法で計算
3.積算価格法で計算
※具体的な計算方法は「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご確認ください。
1~3の方法で計算した価格の全てが、「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」の場合はリスクの低い状態で運用できています。
1~3の価格にばらつきがある場合
▼1棟物件⇒収益還元法 積算価格法
▼区分所有⇒収益還元法 相場的価格法
を利用することで売却可能価格に近い価格を推測できます。
定期的な確認が必要
不動産投資で資産運用する場合、借入を利用できることには大きなメリットがあります。しかし、返済できなくなるリスクもあります。
そんな時に利用したいのが、ご紹介した「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」であるかを確認することです。
また、不動産価格は変動するものです。今日の記事を参考にしていただき、年に1度程度は「借入残高<不動産資産価値(売却可能価格)」の確認を行うことをお勧めします。
(動画)収益還元法・相場的価格法・積算価格法で計算する方法
高利回り物件=良い物件という勘違い
不動産投資を検討する時には、様々な不動産投資指標を利用します。その中でも最初に確認する指標は「利回り」だと思います。
利回りの種類
利回りには色々な種類があります。よく利用されるのは以下の2つです。
1.表面利回り: 収入÷物件価格で計算。少ない情報で計算できるので最も利用される利回り
2.FCR(Free and ClearReturn): (収入-維持管理費)÷(物件価格+取得諸費用)で計算。実質利回りと呼ぶ場合もあり。実質収入(ネット収入)と物件購入時に必要な費用を考慮して計算する正確性の高い利回り
さて、この利回り、高ければ高いほど良いと考えている方もいらっしゃいます。
しかし、実際は異なります。特に、人口減少・インフレ時代の投資ではリスクの高い考え方になりかねません。
※その他の利回りと不動産投資指標
高い利回りには理由がある
一般市場に出回っている高利回り物件には必ず訳があります。一例を挙げると
1.所在地の人口減少で家賃下落、空室増が予測される
2.需要に対して賃貸物件の供給過剰で家賃下落、空室増が予測される
3.築年数経過で修繕費の増加が見込まれる
等です。
これらの理由を見ると利回りが、一般的に「都心<地方」「駅近<遠方」「築浅<築古」になるのと一致するのが分かります。
基本的に高利回り物件は内在するリスクが高いと言えます。
でも「利回り高ければキャッシュフロープラス部分が多いから大丈夫でしょ」と考えるかもしれません。
しかし、この考え方は予想されるインフレと人口減少による都市一極集中を考えると高いリスクを抱えるかもしれません。
高利回り vs 低利回り
それでは、サンプルシミュレーションを使って比較します。
1.高利回り物件:表面利回り8.5%
2.低利回り物件:表面利回り5%
高利回りのキャッシュフローシミュレーションを確認すると、初年度(2024年)は税引き後キャッシュフロー(CF)は約237万円です。対して低利回りは約12万円のマイナスになっています。
しかし、高利回り物件は立地等が悪く、徐々に空き室が増加し、2031年には約130万円まで税引き後キャッシュフローは減っています。そして、もっとも大きな影響を与えるのは出口(売却)時です。
高利回り物件の売却
投資物件の場合、売却する相手も基本的に投資目的の相手になります。つまり、自分の買った時と同等のキャッシュフローを求められる可能性が高いです。
ところが、高利回り物件の空き室は購入時の10%⇒30%に増加しています。この状況で同等のキャッシュフローを得るには、1億円で購入した物件を5,500万円~6,000万円程度で売却する必要があります。
それに対して、高利回り物件は立地も良く空き室増加しなかったため、購入時に近い価格で売却できそうです。
その結果を反映したサンプルシミュレーションが、最終年2032年の赤枠内の税引き後キャッシュフロー累計と自己資金回収率です。
高利回り物件は約5,900万円でしか売却できず、投資した自己資金2,000万円の約半分の1,000万円しか回収できませんでした。つまり1,000万円損したことになります。
それに対して、低利回り物件は、好立地なため約7%下落の9,300万円で売却できました。結果、自己資金を回収して160万円程度手元に残りました。
10年、20年後まで考慮する
今回のサンプルは1シナリオに過ぎません。しかし、高利回り物件は多くの場合、何らかのリスクを内在しています。
そのリスクを自分でコントロール可能だと判断出来ない場合は、立地の良い、築浅物件へ投資するよりも、最終的な収益性は低くなる可能性があります。
投資開始当初に良いキャッシュフローの高利回り物件は、特に長期的なリスクがないか考慮したシミュレーションを行う必要があります。
(動画)出口迄の収益性をIRRで確認する方法
予測される金利上昇を意識して分析を行う方法
超低金利時代が十数年続いています。しかし、インフレ率の上昇で、数年以内にこの環境に変化があるかもしれません。
金利上昇は不動産投資最大のリスク
不動産投資には、空室、家賃下落など様々なリスクがあります。その中でも金利上昇は最大のリスクと言っていいと思います。
理由は、自分でコントロールすることが難しいからです。それだけに、金利上昇した場合のシミュレーションはしっかり行っておく必要があります。
金利上昇シミュレーションで最低限確認しておきたいポイントは2つです
キャッシュフロー赤字になる金利水準
金利上昇シミュレーションで確認しておきたい1つ目の項目は、
何%の金利上昇までキャッシュフロープラスでいられるかです。
表面利回り6.5%のサンプル物件を使って確認します。
投資開始時は1.5%で借入をしています。期間中にそれぞれ2.5~4.8%に金利上昇した際のシミュレーションです。
1.5%⇒2.5%に1%上昇した場合、年間キャッシュフロー(CF)は約50万円減少(30%減)します。1%でもキャッシュフローに大きな影響を与えます。
そして、キャッシュフロー赤字になるのは金利4.8%になった時です。3.3%上昇するとキャッシュフロー赤字になります。
現状の日本経済を考えると、すぐに発生する可能性は低いと思います。しかし、アメリカの政策金利は約1年半で0.25%⇒5.25%に上昇したことを考えると絶対にないとは言えません。
金利上昇の不動産売却への影響
金利上昇を考慮したシミュレーションで次に行っておきたいのは売却シミュレーションです。
金利上昇シミュレーションでなぜ、売却シミュレーション?と思われる方もいるかもしれません。
理由は「金利上昇=不動産価格下落」だからです。購入時よりも金利上昇に伴って売却できる価格も下落します。
1%金利上昇した場合には、表面利回りも1%程度上昇して物件価格は下落します。現実的には、様々な条件があるのでここまで単純では有りません。しかし、かなり確率で下落する可能性が高いです。
売却シミュレーションのサンプルは以下です。
家賃収入のキャッシュフロー以上に大きな影響です。1%上昇で売却で得られるキャッシュフロー(CF)は、約1,500万円(48%減)となります。
理由は
▼ 1%金利上昇することで売却時に求めらる表面利回りも1%上昇して7.5%になった
▼ 金利上昇で利息支払が増加して元金返済が減少、売却時の返済残高が増加した
からです。
売却にも金利上昇は大きな影響を与えることがお分かりいただけると思います。
金利上昇リスクは常に意識する
不動産投資への金利上昇の影響は本当に大きいです。
シミュレーション時には
1.何%の上昇迄キャッシュフローは赤字にならないか
2.売却キャッシュフローにどの程度影響があるか
を中心に金利変動シミュレーションを行っていただければと思います。
金利上昇シミュレーションを行う方法動画
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを使って金利上昇シミュレーションをする方法