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不動産投資の収益計画書(シミュレーション)に必要な4項目
先日、不動産投資を検討しているという方に、某社から提出された収益計画書(シミュレーション)を見せていただきました。
正直、投資としては厳しいなと思いました。ただ、表面上のキャッシュフローはプラスでしたので副収入になると思われていたようです。
提出された収益計画書
収益計画書の内容はこのようなものでした。(金額・書式等は変えてあります)
ぱっと見ると、毎年キャッシュフロー(CF)はプラスですし、資産として不動産は残るのでありかなと思ってしまいます。
しかし、この収益計画書で投資判断するのは本当に危険です。
問題だらけの収益計画書
この収益計画書(シミュレーション)では投資判断できないと言っていいと思います。投資判断する際には以下のシミュレーションが必要です。
1.家賃下落、空室等を想定した変動シミュレーション
2.修繕費を考慮したシミュレーション
3.出口(売却)を検討したシミュレーション
そして、この収益計画書の大きな問題は、
「税引き後キャッシュフローシミュレーションがない」
という点です。
それでは、このシミュレーションに税引き後キャッシュフローを加えると、どんな結果になるでしょうか。
※1~3については関連記事でご確認いただけます
税引き後キャッシュフロー
税引き後キャッシュフロー(CF)を加味したシミュレーションを確認すると
赤枠の税引き後キャッシュフロー(CF)をご確認ください。
税引き前に23.3万円あるキャッシュフローの大半は税金支払に充てられています。理由は、この方は年収約900万円あり、*総合課税と*累進課税で税率が上がり負担が重くなるからです。
さらに、問題なのは徐々に税金支払が増加して、2035年にはキャッシュフロー赤字になります。副収入どころか出費になってしまいます。
その理由は、2024年は損金にならない元金返済「1,872,700円」に対して、損金になる減価償却「1,435,200円」です。それが2035年には元金返済「2,269,911円」減価償却「1,435,200円」となり課税所得が増加するからです。
※「元金支払」と「減価償却」の関係については「デッドクロス発生メカニズムとシミュレーション」をご確認ください。
税引き後キャッシュフローを確認すると、かなり厳しい現実が待っていることが分かります。
収益計画書に必要な情報
数字で収益計画書を見せられると、そうなのかと一瞬信じてしまいます。しかし、提出された収益計画書に必要な情報が入っているかが重要です。
第三者から収益計画書が提出された場合は
1.税引き後キャッシュフローシミュレーション
2.家賃下落、空室等を想定した変動シミュレーション
3.修繕を考慮したシミュレーション
4.出口(売却)を検討したシミュレーション
の4つが考慮された計画書なのかを確認することが必要です。
不動産投資の自己資金は銀行の指定する20%以上本当に必要か
不動産投資検討の最重要項目の1つは「自己資金をいくらにするか」です。
どうしても、銀行に20%必要です。30%必要です。と言われると仕方ないかなと思ってしまいます。
しかし、自己資金は不動産投資の安全性、収益性に大きく影響します。それだけに、もう少し積極的に自分の意思を持って検討する必要があります。また、数値的な根拠があれば、銀行への交渉材料にもなります。
根拠を3つの指標を使て確認する方法についてです。
自己資金による影響
家賃下落、空室、金利上昇等のリスク回避のために、安全性を求めれば自己資金は多いほど良いです。しかし、資産運用として不動産を購入する際には、これでは意味がありません。
安全性ばかり高くても目標の運用ができなければ不動産を購入する意味がありません。つまり、安全性と収益性のバランスが重要です。
3つの指標を使うことで
1.インカムゲイン(家賃)の収益性
2.投資期間中の安全性
3.キャピタルゲイン(売却)を含めた収益性
のバランスを比較することができます。
3つの指標
今回使う3つの不動産投資指標は
1.自己資金回収率
⇒何年後に自己資金を回収できるかを確認できます。10年前後での回収を目標にします。
2.BE%(BER)
⇒損益分岐点を表す指標で金利上昇等の変動への強さを確認できます。70%以下を目安に検討します。
3.IRR
⇒売却を含めた収益率を確認できます。高ければ高いほど資産運用に成功したと言えます。
※3つの不動産指標の詳細は「不動産投資で利用したい各種指標」をご確認ください。
ここからはサンプル物件を使って説明します。
それではシミュレーション結果を確認します。
収益性と安全性のバランスを確認
不動産投資シミュレーション結果は以下です。
※ATIRRは15年後に9,000万円で売却したことを想定して計算
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
それぞれ、自己資金の割合が 1,000万円~4,000万円で比較しています。
確認して分かる通り、自己資金額が多くなればBE%(BER)は低下して安全性は高まります。逆に、自己資金額が少ないほど、自己資金回収期間は短縮し、IRRも高くなり収益性は向上します。
自己資金を決定するポイントは
「安全性と収益性のバランス」です。
このサンプルでは、安全性の目標⇒BE%(BER)70%以下。収益性の目標⇒自己資金回収10年以内としました。
結果を確認すると 自己資金1,000万円の場合、自己資金回収10年と目標に届きますが、BE%は70%を超えてしまいます。
4,000万円では、BE%は70%を大きく下回ります。しかし、自己資金回収に19年も必要になります。
購入する方の属性によるのですが、今回の条件では1,500万円程度の自己資金で検討するのが良いと思います。
ちなみに、自己資金1,500万円の場合、BE%(BER) は71.25%。自己資金回収は12年後になります。
次にIRRを確認します。
2つのIRR指標
IRRには、BTIRRとATIRRがあります。
▼BTIRR=税引き前キャッシュフロー
▼ATIRR=税引き後キャッシュフロー
でIRR計算を行います。
※IRRについては「不動産投資の収益目標を検討する方法」もご確認ください
※Excelを利用した計算式は「IRR 関数」 をご確認ください
IRRは他の投資対象と収益率を比較するのに便利です。
今回のサンプルシミュレーションでは、自己資金1,000万円ではATIRR=19.73%と高い数値になっています。ちなみに、IRR=7.18%あると10年で自己資金を倍増させられます。
自己資金決定にも根拠は必要
自己資金を決定する際は
・手持ち資金はどのくらいあるのか
・銀行はどのくらい貸してくれるのか
に大きく影響されてしまいます。
しかし、自己資金決定は資産運用の根本部分です。この記事をご参考に、自己資金による収益性と安全性への影響を確認していただければと思います。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「自己資金による収益性と安全性への影響」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します。
不動産投資の収益目標を検討する方法
不動産投資に興味のある、行われている方の話をお聞きすると、数値目標を持たずに投資を進めている方が多くいらっしゃいます。当然ですが、数値目標はとても重要です。これは不動産投資も例外ではありません。
そこで、資産運用を目的として不動産を購入した場合の目標の立て方について考えます。
資産運用の目標
不動産を資産形成で購入する際の一番の目標は「投資した自己資金をできるだけ増加させる」ことです。しかし「できるだけ」では曖昧です。曖昧さを無くすために、不動産投資指標を利用して数値目標を立てる必要があります。
その際に便利な指標は
1.自己資金回収率
2.IRR
です。
ここから順番に、この2つを利用して計画を立てる方法を確認していきます。
自己資金回収率
まず、自己資金回収率についてです。自己資金回収率を利用する理由は、
1.自己資金が何%増加したか分かり易い
2.自己資金回収(回収率100%)までの期間が分かり易い
からです。
自己資金回収率は、資産運用で重要な増加額と時間軸の2つを確認できます。以下は自己資金回収率を意識した、不動産投資キャッシュフローシミュレーションのサンプルです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能一部抜粋
自己資金回収率を考える際は、本当の手取りである税引き後キャッシュフローを基準に考えた方が良いです。このサンプルでは、自己資金1,500万円を10年後に回収しています。10年で自己資金を回収できるかどうかは1つの目安になります。
自己資金回収を早めるには
・物件を安く買う
・家賃を上げる
・稼働率を上げる
・維持管理費を下げる
・借入率を上げる
・金利を下げる
等が考えられます。
IRR
次に確認したいのはIRRです。IRRとは内部収益率のことです。
※IRRについて
IRRを利用することで、他の投資対象と収益率を比較しやすくなります。
資産形成を考えた場合に、現物の不動産にこだわる必要はありません。株、債権、REIT等 様々な投資対象の中で一番収益率の高い物に投資するのが良いわけです。この比較を行うのにIRRは便利です。
以下は、1,000万円の株式を購入。毎年3%の配当受取り。10年後に1,000万円で売却。した時のIRRをExcelを利用して計算する方法です。
IRRが、不動産が高ければ不動産。株が高ければ株が有利という結論になります。
次に、不動産投資のIRRをExcelを利用して計算する方法です。
Excelへの入力方法を説明すると
1.一番最初のセル(B2)に自己資金額
2.各中間年のセル(B3~B11)に家賃からのキャッシュフロー額
3.最終年のセル(B12)に家賃+売却のキャッシュフロー額
を入れて、IRR関数を利用して計算します。
B13のセルに入っているのが必要なExcel関数です。関数の式は「=IRR(B2:B12)」です。
ちなみに、IRRには、BTIRRとATIRRがあります。
▼BTIRR=税引き前キャッシュフロー基準
▼ATIRR=税引き後キャッシュフロー基準
で計算した値です。
目標数値の重要性
資産運用を考える際に、目標を数値で考えるのは重要です。目標数値を検討する時に、72の法則を利用して資産を〇年で〇倍にしたいというところから検討するのも一つの方法です。
※72の法則について
例えば、自己資金を10年で倍にしたい場合には、IRR=7.18% 必要です。
このように、まずはザックリでも構いませんので、数値目標を持っているのと、持っていないのでは、不動産投資に対する物の見方が大きく変わります。
この記事を資産運用の目標値検討の参考にしていただければと思います。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「自己資金回収率とIRR」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します。
表面利回り5%以下の物件へ投資しても大丈夫か
人口密集地を中心に物件の利回りが低下しています。
考えられる主な理由は
▼低金利による価格上昇
▼建築費高騰
▼家賃上昇は緩やか
等です。
今日は、このような状況下で不動産投資を進めて大丈夫か?不動産投資シミュレーションを使って検証します。
表面利回り5%の物件
新築木造の表面利回り5%の物件を想定して分析を進めます。
結果はとても厳しいものになりました。しかし、厳しい結果だから投資できないかと言うと、そうとも言い切れません。それでは、その理由とシミュレーション結果を確認します。
シミュレーション結果
シミュレーション結果は以下です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能一部抜粋
正直、投資にならない結果です。
今回は、家賃下落なし・稼働率100%・金利上昇なしの大甘シミュレーションです。
それにも関わらず、2032年(10年目)で投じた自己資金の29.35% 約470万円しか回収できません。さらに、27年後の2049年~税引き後キャッシュフロー(CF)赤字になります。2052年(30年後)でも自己資金の59.77% 約960万円しか回収できません。
インカムゲイン(家賃収入)だけを確認すると検討する余地もないです。
しかし、本当に投資にならないかというと簡単には言い切れません。
2000年前後から、日本の不動産はデフレ前提の投資スタイルでした。デフレ前提の投資スタイルでは、物件価格は年々下落していくことを想定して計画を立てる必要がありました。つまり、下落分を家賃収入で補っていく必要があります。
しかし、現在はデフレ⇒インフレへ移行しつつあります。こうなると、キャピタルゲイン(売却収入)を考慮して計画を立てることが重要になります。では、次にキャピタルゲインを考慮したシミュレーションを行います。
インカム+キャピタル
2038年(15年後)に売却した場合のシミュレーション結果です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター売却シミュレーション機能を利用して結果を編集
購入価格の8,000万円を中心に6,000万円~1億円で売却した際の税引き後キャッシュフロー累計・自己資金回収率・BTIRRとATIRRを一覧にしたものです。
BTIRRとATIRRは内部収益率を表します。BTIRR=税引き前キャッシュフロー基準。ATIRR=税引き後キャッシュフロー基準です。
厳密には違うのですが、投資期間中に自己資金を年平均どの程度で運用できるか示す指標とご理解ください。つまり、BTIRR・ATIRRともに数値が高いほど効率よく自己資金を運用できたことになります。
IRRの利用方法としては、例えば、株式運用で配当等を含めて、自己資金をIRR4%で運用できそうな場合に、不動産は比較してどうかというように使います。
※IRRについて
まず、購入価格の8,000万円で売却した場合、自己資金は1,600万円⇒4,200万円(約2.6倍) ATIRR 7.09%で運用できます。1億円では自己資金は約3.5倍 ATIRR 9.32%で運用できます。
このように売却まで含めると、効率よく運用できる可能性のあることが分かります。ちなみに売却価格約4,800万円以下になると、自己資金1,600万円を回収できずに投資として成り立たなくなります。
インフレ時代の不動産投資
デフレ時代はインカムゲインのキャッシュフローシミュレーションが中心でした。しかし、インフレ時代にはインカムゲインに加えて、キャピタルゲインの分析も重要になります。
インカムゲインでキャッシュフローに赤字の年がないかに加えて、〇円で売却できた場合にどの程度の運用ができるか。 最低〇円で売却できれば自己資金を回収できるか。 についてのシミュレーションも必要なります。
※アセットランクシミュレーターを利用して「インフレ時代の不動産投資で確認しておきたい項目」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します。
収益物件の購入前にシミュレーションすべき3項目
不動産投資シミュレーションの何を重要視するかは、投資目的、投資家さんの属性等によって異なります。
しかし、そんな中でも、確認しておきたい3項目があります。
確認しておきたい3項目
確認しておきたい3項目は
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字はないか
2.BE%(BER)は70%以下か
3.売却シミュレーションで赤字にならないか
それでは、この3つが重要な理由と確認方法についてです。
3項目を確認すべき理由
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字はないか
「キャッシュフロー赤字=他の収入から持ち出し発生」を意味します。不動産投資は長期間に及びます。シミュレーション段階で、10年・20年とキャッシュフロー赤字はないか確認が必要です。
2.BE%(BER)は70%以下か
BE%は損益分岐点を表すものです。この数値が低ければ、低いほど、家賃下落・空室等発生した際にキャッシュフロー赤字になりにくいです。投資期間中には何らかの変動はつきものです。その変動に耐えられるのかを確認するために利用します。
※BE%(BER)の詳細は「不動産投資で利用したい各種指標」をご確認ください。
※家賃変動に関するご参考記事(外部サイト)「駅近コンパクトタイプのアパートは、賃料の経年変化から見た安定性が最も高い」
3.売却シミュレーションで赤字にならないか
どんなに家賃収入が安定していても、出口(売却)で失敗すれば、不動産投資は失敗します。いつ頃売却するか決めていない場合にも、仮に●年後に売却した場合に「売却で借入返済できるか」 「売却後に自己資金回収できるか」のシミュレーションは必須です。
それでは、具体例を確認しながら進めます。
サンプルシミュレーション
以下はサンプルシミュレーションです。
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字はないか
キャッシュフロー赤字の無いことが分かります。まず、家賃収入(インカムゲイン)という点ではクリアです。
2.BE%(BER)は70%以下か
BE%は68.38%と70%以下です。ある程度の変化には対応できそうです。ただし、今回は家賃・維持管理費・金利等一定のシミュレーションです。さらに、変動シミュレーションを行った中で範囲内に入るかの確認を行うとベストです。
3.売却シミュレーションで赤字にならないか
売却時に借入返済できることが分かります。また、家賃収入の累積キャッシュフローと売却キャッシュフロー合計は約3,065万円です。自己資金(1,600万円)を十分回収できます。
売却価格をどの位で設定したらいいかを知りたい場合は「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご参考に検討してください。
今回のサンプルシミュレーションは、すべての項目をクリアしました。では、次に、万が一、クリアしなかった際に、見直すべき内容についてです。
※シミュレーション結果は不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能より抜粋
投資に向けての見直し
次に、シミュレーション結果が思わしくない場合、どのような改善が必要かです。
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字発生
⇒家賃を上げることはできないか
⇒維持管理費を下げることはできないか
⇒自己資金を増やして借入額を減らせないか
⇒借入金利を下げられないか
2.BE% 70%超過
⇒家賃を上げることはできないか
⇒維持管理費を下げることはできないか
⇒自己資金を増やして借入額を減らせないか
⇒借入金利を下げられないか
3.売却シミュレーションで赤字
⇒売却可能な価格は上昇しそうか
⇒自己資金を増やして借入額を減らせないか
これらの案を検討して、見直しが難しそうならば、投資を見送る判断も必要です。
収益性と安全性のバランス
最低限確認したい3項目をご紹介しました。最終的な判断をする場合は、これに加えて、収益は投資目標に届きそうか。家賃・空室・金利を変動させて、どの程度の変動まで耐えられるか等のシミュレーションを行うことが必要です。
不動産投資シミュレーション結果は、収益性と安全性のバランス考慮して確認することが重要です。
※アセットランクシミュレーターを利用して「収益物件の購入前にシミュレーションすべき3項目」を確認する方法を、以下の動画でご紹介しています
バランスシートで不動産投資の進捗を確認する
不動産投資の目的は投資家さんによって様々あります。
もし、不動産投資の目的が「資産を増やす」ことの場合、1年に1回は確認していただきたいものがあります。
定期的に確認したいもの
定期的に確認していただきたいのは、バランスシート(B/S)です。
※バランスシート参考ページ(外部ページ)ご紹介します。
■貸借対照表(バランスシート)とは?読み方・見方を解説
■本当の家計の健全度がわかる家計のバランスシート
B/Sを定期的に確認すべき理由は
「資産がどのくらい増加したかを確認するのに便利」
だからです。
B/Sと聞くと、難しく考えてしまいがちです。
しかし、企業が作成するような厳密なB/Sを作成して、確認するという意味合いではありません。
目的は純資産は増加しているか、減少しているかを確認することです。
B/Sの種類
確認したいB/Sは2種類です。
1.個人資産全体のB/S
不動産に限らず、預金、株等全ての資産と借入のB/S
2.不動産投資のB/S
不動産投資のみのB/S
イメージがつきづらいと思いますのでサンプルをご確認ください。
1.個人資産全体のB/S
ポイントは、不動産部分は購入時の価格ではなく売却可能な価格*を入れる点です。
※売却可能な価格を検討する方法は「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご確認ください。
売却可能な価格でB/Sを作成して純資産が、増加してれば資産運用は成果をあげています。逆に、減少していれば運用方法を見直す必要があります。
また、純資産が増えている場合は、目標値に届いているかの確認も必要です。
不動産投資のB/S
そして、もう1つ確認したいのは、不動産投資だけのB/Sです。
理由は、個人資産全体のB/Sだと、株の成績等が加味されて不動産投資の成績を確認しにくいからです。
不動産投資だけのB/Sサンプルは以下です。
基本は個人資産全体のB/Sと変わりません。
大きく違うのはB/Sの向かって左上部分が税引き後キャッシュフロー(CF)累計になっている点です。
不動産投資の本当の手取りである税引き後キャッシュフロー累計と売却可能な物件価格でB/Sを作成することで
▼インカムゲイン(家賃収入)の資産増加(減少)
▼キャピタルゲイン(売却収入)の資産増加(減少)
を加味した資産状況を確認できます。
定期的に確認
不動産投資をしていると、つい、目先のキャッシュフロー等ばかりに注目してしまいます。
しかし、不動産投資を進める目的が「資産を増やす」ことの場合、重要なのは 純資産を増やすことです。
資産状況を把握するのに、バランスシートを利用すると便利です。
純資産が増加して不動産投資の目的を達成しているか確認する際の参考にしていただければと思います。
不動産投資へ金利上昇が及ぼす2つ影響
2022年12月20日に日銀はYCC(イールドカーブ・コントロール)運用の見直しを発表しました。
長期金利変動幅を「±0.25⇒±0.5%」に変更しました。
政策金利は-0.1%で変更していませんので、アメリカのような利上げではありません。
しかし、長期金利に影響を与える点と利上げを進める1歩目では、ということで為替(円高)・株(下落)もかなり反応しました。
実際、10年債は一時的に0.25%程度上昇しました(12/2316:30時点10年債金利は0.382%)。
当然、金利上昇は不動産投資にも大きな影響があります。
不動産投資と金利
金利上昇は、基本的に不動産投資へマイナスの影響しかありません。
今回の日銀の政策変更で直接的に影響を受けるのは固定金利です。
金利上昇の影響は大きく分けると
1.利息支払増加でキャッシュフロー減少
2.表面利回り上昇で物件価格下落
の2つです。
1つめの影響
1つめの影響は、想像しやすい影響だと思います。
借入金利上昇で利息支払増加、キャッシュフローが減少することです。
不動産投資シミュレーションで影響を確認します。
今回の政策変更で影響を受けるのは主に固定金利です。10年固定で物件購入したことを想定してシミュレーションします。
サンプル物件は新築・1億円・表面利回り7%です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能の結果を一部抜粋
●2.25% ●2.5% ●2.75% 3種類のキャッシュフローシミュレーションです。
税引き後キャッシュフローを金利2.25%と比較すると
▼2.5%(+0.25%)
年間 約10万円
10年間累計 約110万円
▼2.75%(+0.5%)
年間 約20万円
10年間累計 約220万円
と本当の手取りである税引き後キャッシュフローは大きく減少します。
2つめの影響
2つめの影響は物件価格下落です。
金利上昇でキャッシュフロー減少
⇩
減少分を補うためにより高い利回り必要
⇩
物件価格下落
という流れで物件価格は下落します。
サンプル物件の10年間の税引き後キャッシュフロー累計減少分を補うには
▼+0.25%
物件価格 約9,700万円
表面利回り 約7.22%
▼+0.5%
物件価格 約9,420万円
表面利回り 約7.43%
になる必要があります。
このように、購入時より資産価値が下落することで、出口戦略(売却)に影響を与えます。
以下のシミュレーションは出口(売却)までの影響を考慮した結果です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能の結果を一部抜粋
▼+0.25%⇒約410万円手取り減少
▼+0.5%⇒約820万円手取り減少
と資産運用に大きく影響を与えるのが分かります。
金利上昇の影響は大きい
不動産投資には、空室・家賃下落等、様々なリスクが存在します。その中でも金利上昇リスクは、自分でコントロール困難という点で一番のリスクといえます。
徐々に金利上昇リスクの足音が聞こえてきたこのタイミングで、金利上昇の影響をシミュレーションするきっかけにしていただければと思います。
※アセットランクシミュレーターを利用した金利変動シミュレーションの具体的な操作方法を、以下の動画でご紹介しています
デッドクロス発生メカニズムとシミュレーション
「デッドクロス」という単語を1度は聞いたことがあると思います。
不動産投資で使うデッドクロスは
「減価償却費<元金返済額」
となる状態を言います。
今日は、不動産投資の重要な用語である。デッドクロスについてです。
不動産投資家が注意する理由
なぜ、不動産投資家はデッドクロスに注目するのでしょうか。
理由は税引き後キャッシュフローの大きく減少するタイミングになるからです。
では、デッドクロスに影響を与える項目と発生メカニズムを確認していきます。
デッドクロスに影響を与える項目
デッドクロスに影響を与える項目は
■元金返済額に影響
・自己資金額
・借入種類(元利均等・元金均等)
・金利
・借入年数
■減価償却費に影響
・物件価格に占める土地・建物・設備の割合
・建物種類(法定耐用年数)
・築年数
これらの項目によって、デッドクロスが発生する時期、影響の大きさが異なります。
では、なぜ「減価償却費<元金返済額」のデッドクロスが発生すると税引き後キャッシュフローは減少するのでしょうか。
理由は、キャッシュフローと課税所得の計算方法の違いにあります。
キャッシュフローと課税所得
それぞれの計算式は
■キャッシュフロー(CF)
収入 - 経費 - 元金返済 – 利息返済
■課税所得
収入 - 経費 - 利息返済 - 減価償却費
※課税所得とキャッシュフローの違いを詳しく確認したい場合は「今さら聞けないCFと課税所得の違い」をご確認ください。
元金返済と減価償却費をキャッシュフローと課税所得の計算式で比較すると
■元金返済
・キャッシュフローに影響あり
・課税所得に影響なし(損金にならない)
■減価償却費
・キャッシュフローに影響なし
・課税所得に影響あり(損金になる)
この差が要因でデッドクロスが発生すると、収入・支出は変わらないのに、税金支払いが増加して、本当の手取り額である税引き後キャッシュフローに影響を与えます。
デッドクロスのシミュレーション
では、デッドクロスのサンプルシミュレーションを確認します。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能一部抜粋
上記シミュレーションのキャッシュフロー(CF)とデッドクロス発生は、元利均等返済で中古木造物件を購入した際によくあるパターンです。
不動産投資前半は、減価償却費が元金返済額を大きく超えるため、課税所得はマイナスになり、税金支払いは発生しません。
しかし、年々、元金返済が進み、借入残高減少⇒利息支払割合減少・元金返済割合増加で、課税所得額が増えていきます。
そして、2033年に減価償却が終了することで、デッドクロスが発生します。このタイミングで所得税等の税額が跳ね上がり、税引き後キャッシュフローはマイナスになります。つまり持ち出しになります。
このサンプルシミュレーションはデッドクロス発生が、収益に大きな影響を与える1つのパターンです。
投資前にデッドクロスを確認
サンプルシミュレーションを確認して分かるように、デッドクロス発生が影響の大きい投資パターンが存在します。
デッドクロス発生タイミング、影響の大きさは、デッドクロスに影響を与える各項目の内容によって大きく異なります。
物件購入前にどのタイミングでデッドクロスが発生しそうかに注目して、不動産投資シミュレーションを行う必要があります。
※アセットランクシミュレーターを使ってデッドクロスの発生タイミングとキャッシュフローへの影響を確認する方法をご紹介しています
必要に応じて3つの利回りを使いこなす方法
物件の収益性を比較する際に、ほぼ100%の投資家さんが利用する指標は「利回り」です。
ただ、利回りにも種類があり、利用する場面によって最適な利回りを選択する必要があります。
今日のメールセミナーは、3つの利回りを比較して、それぞれの利用場面を確認します。
3つの利回り
今日、ご紹介する3つの利回りは
1.表面利回り
2.FCR
3.CCR
です。
それでは、3つの利回りを比較します。
3つの利回りの特徴
3つの利回りの概要と利用場面をまとめました。
それでは、それぞれを詳しく確認します。
3つの利回りの利用方法
1.表面利回りは、多くの方が利用にしたことのある利回りだと思います。物件紹介サイト等で利用されるのは、ほとんどが表面利回りです。
しかし、収益性を比較するために利用する際の信頼度は低いです。それでも利用頻度が一番高い理由は「簡単に計算できる」からです。
潜在的総収入(満室想定家賃)と物件価格の2つの情報があれば計算できます。簡単に計算できるので、多くの物件を比較するのには便利です。しかし、絶対に表面利回りだけで投資判断をしてはいけません。
表面利回りは、取得時の諸費用と維持管理費が計算に入っていません。この2つの要素は不動産投資の収益に大きな影響を与えます。この2つが入っていない表面利回りでの投資判断は避けなければいけません。
投資判断をするためには、
2.FCRを利用して、維持管理費や取得時の諸費用を加味して、より正確性の高い利回りで判断する必要があります。
3.CCRは、1,2の利回り指標とは少し異なり、自己資金の投資効率を確認するのに利用します。この指標を利用する投資家さんは、1,2の指標と比較すると少数です。しかし「不動産購入=投資」と考えている場合には重要な指標です。
理由は、
■自己資金回収率が高ければ、次の物件購入に回収した自己資金を利用できる
■他の投資対象(株式、REIT等)と投資効率を比較できる
からです。
ただ、借入内容等が煮詰まってきた段階にならないと計算できないため、1,2の検討が終わった後に確認する指標になると思います。
利回りは目的に合わせて利用
一般的に利回りというと、表面利回りを思い浮かべると思います。しかし、先ほども書いたように、表面利回りだけで投資判断するのは本当に危険です。
利回りは、場面によって適切に選択して利用する必要があります。
※動画でアセットランクシミュレーターを使って3つの利回りを確認する方法をご紹介しています
3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する
不動産価格が上昇したこともあり、私の周辺でも、物件売却を検討している人が増えています。
売却の際に忘れてはいけないのが「売却したい価格 ≠ 売却できる価格」だということです。
今日は、事前に売却できる価格を検討する方法についてです。
売却できる価格
売却できる価格を検討する際も不動産投資指標を利用します。
1.収益還元法
2.積算価格法
3.相場的価格法
聞いたことのある指標ばかりだと思います。
3つとも、投資に見合う物件か判断するのに利用する指標です。
投資物件は、一部物件を除いて、売る相手も投資目的で購入する人です。住宅用のように「少し高いけど素敵だから買おう」とはなりません。
売却相手も、不動産投資指標を使って、割高か、割安かを判断して購入を決定します。
つまり、売却時にも不動産投資指標を使って、売却できる価格(相手が割安に感じる)を検討できるということです。
それでは、3つの指標の利用方法を確認します。
3つの指標を利用する
3つの指標の利用方法と計算方法をまとめました。
それでは具体的な手順についてです。
3つの指標を利用する手順
▼手順1:物件種類によって利用する指標を決定
■1棟物⇒収益還元法と積算価格法
■区分所有⇒収益還元法と相場的価格法
1棟物は、相場的価格法は類似物件を複数探すのが難しいため利用しません。
区分所有は、積算価格を購入時に利用する投資家は多くないため利用しません。
▼手順2:2つの指標を計算
上の表の計算式で計算を行います。
▼手順3:2つの指標を比較
2つの計算結果は多くの場合、乖離する金額になります。
乖離のある時は、収益還元法を優先して、
■収益還元法 < 積算価格・相場的価格:収益還元法より高い金額で売却できる可能性あり
■収益還元法 > 積算価格・相場的価格:収益還元法より低い金額が妥当な価格の可能性あり
と判断します。
1年に1回の確認は必須
推定の売却価格シミュレーションは、本格的に売却を検討する時だけではなく、1年に1回程度行うことをお勧めします。
理由は、不動産投資の弱点の1つである、流動性の低さ(現金化しずらい)を少しでも補うためです。
突発的な有事(社会的な、個人的な)が発生した場合、現金化しずらい点は大きなリスクになります。このような際も、「○○円ならば売却できる可能性が高い」ということを知っていることで焦らず対応できます。
不動産を市場より安く購入できるケースの多くは、現金化を急ぐ人からの購入です。逆に言えば、現金化を急がなくてはならない時に買いたたかれる可能性があるということです。
日頃から、売却できる価格を知っておくことで、不利な状況を少しでも防ぐことができます。また、自分の資産状況(B/S)の把握にも役立ちます。
ご参考にしていただき、定期的に売却できる価格を確認するきっかけにしていただければと思います。
※動画でアセットランクシミュレーターを使って3つの指標を計算する方法をご紹介しています