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自己資金額による不動産投資への影響
自己資金は投資の成否を決める重要な項目です。しかし、金融機関から「〇%入れてください」という理由だけ決めている方もいらっしゃいます。
自己資金額を検討するための指標
自己資金額を検討するポイントは「収益性」と「安全性」の両面で検討することです。
「収益性」と「安全性」の両面を確認するには不動産投資指標を使うと便利です。
利用する不動産投資指標は
1.キャッシュフロー・・・収入から支出を引いたお金の流れを表します。税引き前と税引き後があり税引き後は本当の手取り額になります。
2.自己資金分析回収率・・・回収率100%で投資した自己資金を回収したことになります。100%になるまでの年数の早いほど効率の良い投資と言えます。
3.BER(BE%)・・・(維持管理費+返済額)÷満室想定家賃×100 で計算します。損益分岐点を表す指標で安全性を確認できます。BERについては「不動産投資指標を使って安全性を分析」もご確認ください
の3つです。
サンプル物件を使って具体的な利用方法を説明します。
自己資金による安全性の違い

このサンプル物件で自己資金額と表面利回りを変化させて安全性への影響を比較します。

※不動作投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
物件購入時の諸費用を1,000万円としています。自己資金1,000万円は、実質自己資金0のいわゆるフルレバレッジ
と言われる状態です。
BER70%前後であれば一定の安全性は保たれていると判断できます。表面利回り6%の場合は自己資金4,000万円(物件価格比で自己資金率30%)必要になります。8%の場合は2,000万円の自己資金で70%を下回ります。
表面利回りの低い物件は、レバレッジを高めた(借入率の高い)投資は非常にリスクの高いことが分かります。
自己資金額による収益性の違い
次に収益性を確認します。

※不動作投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
上段は年間の税引き前キャッシュフロー額 下段は2025年に投資を開始した場合に税引き後キャッシュフローベースで自己資金を何年に回収できるかの結果です。
表面利回り6%は、自己資金の多い方が自己資金を回収できる年が早まっています。逆に、表面利回り8%では自己資金は少ないほど自己資金の回収までの期間は短くなります。
このように表面利回りによっても最適な自己資金額は違ってきます。
自己資金額の決定プロセス
自己資金と表面利回りの違いによる収益性と安全性の比較を行ないました。
利回りの低い場合は自己資金を極端に減らすと、とてつもなくリスク高い投資になります。逆に、利回りの高い場合は過剰に自己資金を多くしても投資効率を落とす結果になります。
これらの結果は、投資する人の年収、減価償却の額等の個別状況によって異なります。また、今回の不動産投資シミュレーションは、満室経営・家賃変動なしという条件の分析です。
実際は、利回りの高い物件は、対策を講じないと空き室、家賃下落の発生しやすい場合が多いです。
「金融機関に〇%自己資金を入れてください」⇒「はいそうですか」ではなく、物件毎に分析を行って適切な自己資金額を決定する必要があります。
ご紹介した不動産投資指標を利用して分析していただければと思います。
(動画)自己資金額を検討する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「自己資金額を検討する方法」を動画でご紹介します
収益物件を運用するなら必ず考えておくべき戦略
収益物件を購入して賃貸経営を開始したら必ず考えておきたい戦略があります。
不動産投資の出口戦略の重要性
不動産投資の成否を考えた時に出口(売却)戦略を決めることは重要です。
売却戦略を考える上で必要な要素は
1.いつ売却するか
2.いくらで売却できるか
の2つです。
この2つを頭において賃貸経営を行っていく必要があります。
不動産投資の出口戦略 いつ売却するか
だいたいどのタイミングで売却するかを購入時点で決めて物件を取得していれば問題ないです。しかし、そうでない場合も多いと思います。
その際に、まず、知っておきたいのは売却益にかかる税金ルールです。

見て分かるように5年以内の税率は倍近くになります。よほど事情のないかぎり5年以内の売却は損です。
長期と短期の計算は譲渡日から5年経過ではありません。資産を売却した年の1月1日で判定します。つまり、売却年の1月1日時点で5年以内は「短期譲渡所得」5年超は「長期譲渡所得」となります。
不動産投資シミュレーションの時点で売却日を仮定するならば5年経過後で仮定します。
不動産投資の出口戦略 いくらで売却できるか
売却価格を検討する時は「いくらで売却するか」ではなく、「いくらで売却できるか」という視点で考える必要があります。
想定の売却価格を計算する便利な計算式があります。
想定売却価格=売却年の想定家賃÷(購入時の表面利回り+0.5~2%)
この計算式で想定売却価格を計算できる理由は、投資用の物件を売却する相手は投資家(ファミリー向け区分を除く)だからです。
投資家は利回りを参考に物件購入を検討します。つまり、相場と同等か割安ならば売却できる可能性は高くなります。
また、売却年には築年数の経過で売却相手に求められる表面利回りは購入時より高くなる可能性は高いです。その分を0.5~2%程度の範囲で加算して計算します。
5,000万円・表面利回り6%で購入した物件を10年後に売却する場合、表面利回り6%に+0.5%した以下のシナリオで計算すると

このような想定売却価格になります。この計算式を利用することで電卓レベルの計算で想定売却価格を計算できます。
不動産投資ミュレーションで確認すべき指標
いつ売るか、いくらで売るかを仮定できれば、具体的な不動産投資シミュレーションが可能です。
シミュレーション結果で最低限確認すべき基準は
1.売却で借入は返済できるか
2.家賃と売却で投資した自己資金は回収できるか
です。
それでは不動産投資シミュレーションの結果を確認します。
1億円の物件を表面利回り6%で購入。家賃は購入時と変化なし。売却時の表面利回り6.5%。で売却した場合のシミュレーションです。

※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能で分析
確認したいのは売却税引き後キャッシュフローの部分です。約1,900万円プラスです。つまり、借入返済しても約1,900万円残ります。
この項目が重要なのは、売却税引き後キャッシュフローがプラスでない場合、売却時に手元資金から持ち出しの発生する可能性があるからです。今回は大丈夫そうです。
次に自己資金を回収できるかです。
この項目は、家賃収入の税引き後キャッシュフロー累計額と売却税引き後キャッシュフローを合算したキャッシュフロー額で確認します。

※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能で分析
今回の分析では約2,700万円残ることが分かります。この金額を投資した自己資金と比較します。
今回投資した自己資金は2,000万円です。2,700万円-2,000万円で約700万円増えて投資の出口をむかえることが分かります。
ちなみに、収益率を確認するのに便利な不動産投資指標のIRR(ATIRR)は3.56%です。IRRが便利なのは、3.56%を他の投資(株やREIT)と比較して収益率を比較できることです。
※IRRについては「2000万円の運用先を不動産以外で選択肢する方法」をご確認ください
不動産投資の出口シミュレーションは重要
不動産投資シミュレーションを考える時、インカムゲイン(家賃収入)を中心に考えがちです。しかし、出口(売却)に関するシミュレーションも不動産投資シミュレーションの重要な両輪です。
ぜひ、ご紹介の内容をご参考に分析を行っていただければと思います。
(動画)出口(売却)まで考えた不動産投資シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「出口(売却)まで考えた不動産投資シミュレーション」を行う方法を動画でご紹介します
キャッシュフローと課税所得の関係性を理解する
不動産投資の計画を考える時に、キャッシュフローと課税所得の関係はとても重要です。
キャッシュフローと課税所得の関係性
キャッシュフローと課税所得は似て非なるものと言えます。
■キャッシュフローとは・・・
お金の流れを表す。フローの最後に表記されるのは本当に手元に残る金額
■課税所得とは・・
税額決定するための基準。本当のお金の流れとは異なる
キャッシュフローと課税所得の計算方法
計算式は以下です。
■キャッシュフロー(CF)
収入 - 維持管理費 - 返済額(元金+利息)
■課税所得
収入 - 維持管理費 - 返済額(利息) - 減価償却費
キャッシュフローと課税所得の計算方法の違いは、返済額に元金を含むか・含まないかと減価償却はあるか・ないかです。
元金を損金として計上できない理由は、借入金自体は金融機関に返済するもので、直接的に売上につながる費用ではないからです。
次に、この違いは不動産投資の結果にどのように影響を与えるか確認します。
キャッシュフローと課税所得の結果
以下はある物件のキャッシュフローと課税所得のシミュレーションです。

※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
収入・維持管理費は一定額です。また、元利均等返済
で返済しているため返済総額は一定です。当然、キャッシュフローの結果も一定額の約111万円です。
これに対して、収入・維持管理費は一定額でも課税所得は毎年変動(増加)しています。
理由は、利息支払が毎年減少しているからです。元金返済が進むことで借入残高は減少します。そのため損金となる利息支払も減少して課税所得は増加します。
キャッシュフローの増加はうれしいですが、課税所得が増えるのはうれしくありません。
課税所得増加と税金額
次に、本当の手取り額である税引き後キャッシュフローを確認します。

※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
課税所得が毎年増加しているため税金も増加しています。税金支払いが増加して、本当に手元に残る金額の税引き後キャッシュフローは毎年減少しています。
不動産投資は時間の経過とともに、課税所得増加⇒税金額増加⇒税引き後キャッシュフロー減少 という流れになり易いです。
また、減価償却費は今回のシミュレーションでは一定額です。しかし、法定耐用年数を超えると減価償却費は0になります。
そのため、収入は増加していないのに課税所得は大きく増加して税引き後キャッシュフローを大きく減少させる可能性があります。
減価償却とデッドクロスについては
※附属設備と取得時の諸費用を考慮した減価償却シミュレーション
※木造とRC造のデッドクロスの特徴
を合わせてご確認いただくとよりご理解いただけると思います。
ちなみに、今回のシミュレーションの物件は2045年で耐用年数を迎えます。
2046年には
課税所得 :3,938,020円
所得税等税金: 753,906円
税引き後CF: 356,247円
と大きな影響があります。
キャッシュフローと課税所得の違いを理解する
キャッシュフローと課税所得の違いを見てきました。この違いを理解することは不動産投資をする際に不可欠です。
特に、借入返済の進行、耐用年数の終了等でデッドクロス状態になった場合には、税負担は大幅に増えて税引き後キャッシュフローに大きな影響があります。
不動産投資シミュレーションを行う際には必ず押さえておきたいポイントです。
(動画)デッドクロス発生タイミングとキャッシュフローへの影響
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「デッドクロス発生タイミングとキャッシュフローへの影響」を確認する方法を動画でご紹介します
他の金融機関への借り換へは損か得かをシミュレーションする方法
金利引き下げを目的とした借り換えを行うべきか、不動産投資シミュレーションで判断する方法を検討します。
借り換えを行うべきかを決める指標
借り換えを行う理由は金利を下げて利息支払いを減少させることです。ただ、本来の目的はこの先にあります。その目的を確認するのに便利な不動産投資指標は「税引き後キャッシュフロー累計額」です。
税引き後キャッシュフロー累計額は、毎年の税引き後キャッシュフローを合計した金額です。
借り換えの最終目的は利息支払いを減少させることではありません。利息支払いの減少を通じて収益性を上げることです。しかし、返済総額の減少額だけでは収益に与える影響を計れません。
利息は損金になります。つまり、借り換えによって損金になる額は減少し課税所得も変動します。そのため、利息減少額=収益向上額ではありません。
税引き後キャッシュフローは本当に手元に残るお金です。この累計額を借り換え前と借り換え後で比較して、収益向上という本来の目的を達成できるか確認する必要があります。
※課税所得については「今さら聞けないcfと課税所得の違い」をご確認ください
借り換えシミュレーションに必要な情報
借り換えシミュレーションに最低限必要な情報は
1.いつ借り換えるか
2.いくら借り換えるか
3.借り換え後の利息は何%か
4.借り換えに必要な手数料はいくらか
です。
それではサンプルの不動産投資シミュレーションを確認します。
借り換えシミュレーション方法
サンプル物件は、

借り換え条件は

です。
シミュレーション結果を確認する前に、借り換え時必要になる可能性のある手数料は以下です。
1.繰り上げ返済手数料: 借り換え前の金融機関との金消契約(金銭消費貸借契約)
に借入から〇年以内は〇%の違約金発生と記載のある場合に必要
2.金融機関の事務手数料・保証料: 借り換え先の金融機関で借入を行う際の手数料
3.司法書士費用: 抵当権抹消・設定と登録免許税
今回のシミュレーション条件は
1.繰り上げ返済の手数料:無し
2.金融機関の事務手数料・保証料:借入額の1%
3.司法書士費用:465,889円
で分析しています。
借り換えシミュレーション結果
3%で借りていた金利を2.4~2.8%で借り換えた場合のシミュレーション結果です。10年・20年・30年の投資期間で税引き後キャッシュフロー累計額を比較します。

10年目は全ての借り換え金利で税引き後キャッシュフロー累計額は少なくなって投資効率は落ちます。20年目は3%⇒2.6%への借り換えから収益性向上に寄与します。
ただし、増加額は約105万円です。この程度の増加額ですと、付き合いのあった金融機関との関係を天秤にかけて損か得かという視点も必要になります。
30年目(返済終了年)には全ての借り換え金利で借り換えなしよりも税引き後キャッシュフロー累計額は増加します。
このように、借り換えシミュレーションを行う場合は、どの程度の期間で、どの程度キャッシュフロー累計額の差かを比較して判断します。
借り換えを行うべきかの判断基準
不動産投資の借り換えシミュレーションについて確認してきました。不動産投資の収益性向上を目的に借り換えを検討する場合は
1.いつ借り換えるか
2.いくら借り換えるか
3.借り換え後の利息は何%か
4.借り換えに必要な手数料はいくらか
の条件によって結果は大きく異なります。
各条件で税引き後キャッシュフロー累計額は何年後にどの位増加するのかを確認しながら分析を行ってください。また、今後の金融機関との付き合いという視点も重要になります。
(動画)借り換えシミュレーションする方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「借り換えシミュレーションする方法」を動画でご紹介します
不動産投資でバランスシートを利用して純資産額を確認
不動産投資の現在地を把握するのにバランスシート(BS)の考え方を利用するのはとても便利です。
不動産投資のバランスシート
バランスシートと言っても上場企業の出すようなBSではありません。わずか4つの要素だけで構成されるバランスシートです。
不動産投資のバランスシートの4要素は
1.自己資金額
2.借入残高
3.物件時価
4.税引き後キャッシュフロー累計額
の4つです。
※バランスシートについてはBS/PLとは
もご参照ください
不動産投資のバランスシートの4要素
サンプルを使いながら確認していきます。
8,000万円の物件を金融機関から6,000万円借入して購入した場合の購入時点のバランスシートは以下です。ポイントはグレーの純資産部分です。

※購入諸費用は純資産部分でマイナスとなります。今回は理解しやすいように省いて記述しています
物件購入時点は「物件時価=購入価格」「借入残高=借入総額」「純資産額=自己資金」です。
ただし、物件を時価より割高に購入してしまった場合には、以下のバランスシートのように購入時点でマイナスのスタートになります。
時価より1,000万円高い8,000万円で購入してしまった場合、純資産額は1,000万円からのスタートです。

購入時点では4要素の3つの要素のみバランスシート上に表記されます。次に10年後のバランスシートを確認します。
不動産投資10年後のバランスシート
10年後のバランスシートはどうなるでしょうか。

CF累計額(税引き後キャッシュフロー累計額)が加わりました。CF累計額は家賃収入等の税引き後に手元に残った金額の累計値です。
また、10年で借入返済(700万円)も進み借入残高は5,300万円になっています。
物件購入時の純資産と比較すると、2,000万円⇒3,700万円に増加しています。純資産額は1,700万円増加して順調に運用を進めていることを把握できます。
次に、空き室増で家賃収入を得られなかったことを仮定したバランスシートはどうなるでしょうか。

純資産部分を確認すると3,000万円しかありません。CF累計額が1,000万円⇒300万円に減少したことが要因です。
さらに、空き室増に加え、物件時価(物件を売却可能な価格)も下落した場合を考えます。

物件時価が購入時点より1,000万円下落したのと空き室で税引き後キャッシュフローが思うように増加しないことが要因で、純資産額は2,000万円と投資開始時点と同額のままです。
つまり、10年間頑張ったのに一切純資産は増加しなかったことになります。これであれば自己資金を銀行に預金しておけば良かったとなります。
バランスシートで表記すると良くわかるのは、不動産投資はインカムゲイン(家賃収入)とキャピタルゲイン(売却益)の両方を上手く進めて初めて資産運用として成り立つということです。
このような不動産投資の現在地はキャッシュフロー等の一般的な不動産投資シミュレーションだけでは把握しにくいです。
※バランスシート作成に必要な2要素については
物件時価を試算する方法は「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」
税引き後キャッシュフロー累計は「不動産投資のキャッシュフロー分析」
をご確認ください。
バランスシートから見える不動産投資の目的
不動産投資を資産運用として考えた時の目的はただ1つです。
純資産額をできるだけ早く増やすことです。この目的に向けて進むには定期的にバランスシートを確認する必要があります。
バランスシートというと難しく聞こえます。しかし、実際は
1.自己資金額
2.借入残高
3.物件時価
4.税引き後キャッシュフロー累計額
の4要素だけで確認できます。
今回は単独物件のバランスシートの推移のみサンプルにしました。複数物件に投資している場合には合計での結果確認も必要です。
ご自分のバランスシートはどのように推移しているのか確認する機会になさってください。
(動画)純資産額の推移をシミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「純資産額の推移をシミュレーション」する方法を動画でご紹介します
金利上昇の不動産投資への影響をシミュレーションする
金利上昇は不動産投資へ大きな影響を与えます。不動産投資シミュレーションを利用して金利上昇の影響を分析します。
金利上昇のキャッシュフローへの影響
金利上昇のキャッシュフローへの影響を確認する前に金利上昇の起こるタイミングを確認します。
不動産投資家の大半が利用する変動金利は政策金利で決まります。つまり、政策金利が上昇すれば借入金利も上昇し、下落すれば下落します。
※政策金利とは
※政策金利推移チャート
金利上昇は不動産投資へマイナスの影響を与えます。もっとも分かり易いのはキャッシュフローへの影響です。
サンプル物件を使って金利上昇のキャッシュフローへの影響をシミュレーションします。
サンプル物件は
▼2020年に新築木造物件を1億円で購入
▼満室想定家賃650万円(表面利回り6.5%)
購入5年後の2025年に0.35%金利上昇するシナリオで分析をします。
比較するのは「借入金額別」「金利別」「借入期間別」の年間キャッシュフローと返済総額の増減です。
金利上昇シミュレーション結果
結果は以下です。

不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターで分析
わずか、0.35%の金利上昇でも収益に影響を与えます。税引き前キャッシュフローの減少率は年間約8~10%程度です。10年、20年の積み重ねを考えると大きな影響です。
また「借入額多い」「金利高い」「借入期間長い」ほど金額ベースの影響は大きくなります。
一般的に利用する
▼レバレッジを大きくして(借入割合を高めて)投資効率を上げる
▼借入期間を延ばして1年当たりのキャッシュフローを増やす
工夫をした投資手法の方が金利上昇の影響は大きくなります。
金利上昇を考慮にいれた投資スタイル
2020年頃までは、低金利を前提としてキャッシュフローを多く獲得するスタイルが主流でした。
しかし、ご紹介したシミュレーション結果から分かるように、このようなスタイルは金利上昇に脆弱です。
不動産投資は、他の事業以上に金利上昇の影響を受けやすく、金利上昇への対策は繰上返済など数少ないです。
特に、フルローン等の借入率の高い場合。RCに投資していて借入期間の長い場合は注意が必要です。
金利上昇を考慮に入れて借入を適切に管理するための不動産投資シミュレーションは必須です。
(動画)金利上昇シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「金利上昇シミュレーションをする方法」を動画でご紹介します
表面利回りの3つの注意点を理解して正しく利用する方法
表面利回りは、不動産投資指標の中でもっとも利用される指標です。しかし、その特徴を理解しないで利用すると誤った判断へ導きかねない怖い指標でもあります。
表面利回りの使い方
表面利回りの計算方法はとても簡単で便利な指標です。

収入と物件価格という比較的手に入りやすい2つの情報だけで計算できます。しかし、注意点もあります。
特に注意したいのは以下の3点を理解して利用することです。
1.維持管理費等の費用は一切考慮されていない
2.時間軸は一切考慮されていない
3.出口(売却)の収(損)益は一切考慮されていない
この3つは考慮されていないことを理解しないで、表面利回りを利用すると大きな判断ミスをしかねません。
表面利回りは費用を考慮していない
表面利回りは、不動産を維持する際に必要な費用・修繕費などは一切考慮されていません。
表面利回り6.5%の物件に投資したとします。家賃収入の15%の維持管理費を考慮した利回り(実質利回り)計算をすると、利回りは5.52%と1%近く低下します。
同じ表面利回りの物件でも維持に必要な費用は異なります。費用によって収益性は大きく変わるかもしれないことは、表面利回り利用時の注意点です。
表面利回りは時間軸を考慮していない
多くの場合、不動産投資は長期におよびます。しかし、表面利回りは時間軸を持ちません。
表面利回りを利用するタイミングは物件購入時が多いと思います。しかし、物件購入時の収入は一生続くわけではなく毎年変化します。表面利回りはこの変化を捉えることはできません。

※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターで計算
上記は、収入の変動なし・年1%上昇・年1%下落で試算した税引き前のキャッシュフローシミュレーションです。
1%上昇と下落では100万円単位で手元に入る金額が違います。表面利回りは計算時点の数値しか把握できないため、変化を考慮した収益性を確認できません。
表面利回りを利用する際の2つめの注意点です。
表面利回りは出口を考慮していない
3つめの注意点は、表面利回りは出口(売却)まで考慮した収益性を確認できない点です。不動産投資は、家賃収入から得られる収益と売却から得られる収益の和で成否が決まります。
しかし、表面利回りは収入と物件価格だけで計算されるため、一切売却の収益性を確認できません。

※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターで計算
売却価格の違いによる収益性比較です。収益比較には、売却まで含めた収益性を比較できる不動産投資指標のBTIRRとATIRRを使います。BTIRRとATIRRはExcelを利用して計算
可能です。
※BTIRRとATIRRについてはこちらで解説しています。
売却価格によって大きく収益性は異なります。表面利回りだけでは、この違いは一切比較できません。
表面利回りは特徴を理解して利用する
表面利回りは少ない情報で計算できます。そのため、複数物件を短時間で比較するのに便利です。しかし、投資の意思決定をするには不十分な不動産投資指標です。
表面利回りは、表面利回りだけでは判断できない項目を確認できるキャッシュフロー分析等を行うことを前提に利用すべき不動産投資指標です。
(動画)3つの利回り指標を確認する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「3つの利回り指標を確認する方法」を確認する方法動画でご紹介します
新築RCと築古RCの収益性を比較する
同じRC(鉄筋造)物件でも新築と築古では収益性の特徴は異なります。
新築RCと築古RCの違い
それぞれの特徴を確認するために、新築RCと築30年経過した築古RCを比較します。
以下のサンプル物件を使用します。

新築と築古のキャッシュフローに影響を与えるポイントは、表面利回り・借入年数・法定耐用年数です。
表面利回りは基本的に「新築<築古」となります。今回は、新築RC6% 築古RC7.5%としています。
借入期間については、多くの銀行は貸出期間を法定耐用年数基準で決めます。そのため、新築は築古よりも長い期間借入できます。今回のサンプルは、新築RC35年 築古RC30年です。
法定耐用年数は新築は47年。築古は23年と24年の違いがあります。
※法定耐用年数の計算については「中古物件の耐用年数の計算方法を理解する」をご確認ください
この3つの違いは、キャッシュフローに大きな影響を与えます。
新築RCと築古RCの収益比較
新築RCと築古RCの収益比較を自己資金回収率で行ないます。
自己資金回収率は、自己資金を何%回収できているか確認する不動産投資指標です。100%になれば自己資金を回収したことになります。
投資に利用した自己資金をできるだけ早く回収することは、次の投資(不動産に限らず)へ資金を利用するという観点からとても重要です。
■自己資金回収率の計算式は
「税引き後キャッシュフロー累計÷自己資金額」 です。
サンプル物件を比較すると自己資金回収率は「新築RC<築古RC」となっています。

不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを利用
築古は表面利回り7.5%と新築より高いのと、償却年数の短いことで減価償却費も年間275万円と多く節税効果が高いからです。
今回のサンプル物件では、築古は返済期間の短いことで返済割合の高くなるキャッシュフローへのマイナス面はあるものの自己資金回収率は高くなります。
では、築古RCは新築RCよりも収益上必ず優れているのでしょうか。実際はそうとも言い切れません。
新築RCと築古RCの売却を考慮した比較
売却まで含めた収益性を比較します。
以下は10年後に、購入価格を中心に上下5%刻の売却価格で売却したことを想定したATIRR比較です。ATIRRの数値の高いほど収益性は高いです。
※ATIRRについては「インフレ時代の不動産投資で利用したい指標」をご確認ください

不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを利用
購入価格で売却した場合は、新築RC7.34% 築古RC11.64%と築古が上回ります。
しかし、10年後の築年数は、新築⇒築10年、築古⇒築40年となります。新築と比較して築古は売りにくくなる可能性が高いです。売りにくい=売却価格下落 となります。
つまり、築古の場合、売却価格を低く見積もっておく必要があります。新築が購入価格で売却できた場合、築古は15%下落で同等のATIRR。20%下落で新築を下回ります。
また、築古RCの売却価格を維持する大きなポイントは修繕費です。RC物件は木造物件と比較すると多額の修繕費が必要です。
今回のシミュレーションでは修繕費を考慮に入れていません。しかし、売却価格を維持するには多額の修繕費が必要になる可能性は高いです。当然、修繕費は収益性を大きく引き下げます。
修繕費については「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック
」をご参照ください。
新築RCと築古RCどちらを選択すべきか
築古RCは修繕費を上手におさえながら運用できれば、インカムゲインのキャッシュフロー額は新築RCと比較して多くなる可能性は高いです。しかし、資産性を考えた際には新築より低くなる可能性は高いです。
また、手厚いキャッシュフローを利用して次の投資を検討している投資家さんは築古RCを選択するのもの手です。
複数物件を所有していて、資産性を重視する投資家さんは新築RCを選択する方が良い場合は多いです。このように、投資家さんの属性や目的によっても異なります。
今日ご紹介した特徴を参考にしていただき、個別のシミュレーションを通してご自分の目的にに合っているのはどちらなのか検討していただければと思います。
(動画)不動産投資指標 自己資金回収率とIRR
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「自己資金回収率とIRR」を確認する方法動画でご紹介します
年に1回は確認しておきたいあるバランス
不動産投資は10年・20年と長期間におよぶ投資です。その投資期間中、定期的に確認したいあるバランスがあります。
重要なバランス
このバランスが崩れている場合、とてもリスクの高い状態になります。逆に、バランスを保てていれば一定の安全性を確保できます。
その定期的に確認したいバランスは
借入残高<不動産価格
となっているかです。
これが
借入残高>不動産価格
となった場合はリスクの高い状態と言えます。理由は、売却時に借入を返済できない可能性があるからです。
今後、金利上昇等の変化が顕在化していく可能性が高いです。また、人口減少の影響をうける地域も増えていきます。そんな時の最善策が不動産投資からの撤退だとしても、撤退できない状況になりかねません。
「借入残高<不動産価格」確認方法
では、具体的にどのように確認すればよいでしょうか。
借入残高については、銀行の返済計画書等を確認すればすぐに分かります。

※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで作成した返済表
ポイントは不動産価格です。
不動産価格=購入価格 ではありません。
不動産価格=売却可能な価格 つまり、時価で考える必要があります。
では、時価をどのように検討すればいいでしょうか。
不動産の時価を確認する簡単な方法
もっとも簡単に売却可能な価格(時価)を推定する方法は
直近の年間家賃÷表面利回りで計算することです。
ポイントは表面利回りは購入時の表面利回りではなく、計算時の表面利回りを利用することです。
計算時の表面利回りは収益物件のポータルサイト等で、ご自分の物件に近い物件の表面利回りを確認して算出します。
例えば、収益物件のポータルサイトで見つけた類似物件の表面利回りは6.7%。直近の年間家賃収入は800万円の場合
800万円÷6.7%=1.19億円が推定の売却可能価格になります。

※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを使った売却可能価格計算
さらに精度の高い時価を推定する方法は以下をご確認ください。
3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する
バランス確認時に考慮に入れたいこと
「借入残高<不動産価格」のバランス確認時に、さらに考慮に入れたいのは
1.売却時の手数料を考慮する
売却可能価格(不動産価格)×4~5%程度の売却時に必要な手数料を考慮するとより現実味が増します。
※売却時にかかる諸費用について
2.複数物件所有している場合は全物件合計を確認する
複数物件を所有している場合は、不動産投資から完全撤退した場合も想定して検討すると良いです。
定期的に確認する重要性
不動産投資は長期間におよぶ投資です。その期間中に様々変化がおとずれます。また、ご自身の環境が変化するかもしれません。その変化によって、不動産投資から撤退するのが最善の選択になる場合もあります。
そんな時に「借入残高>不動産価格」となり撤退できない状況は最悪です。ぜひ、ご自分の現在の状況を確認するために、年に1回など定期的に「借入残高<不動産価格」の状況にあるかを確認なさってください。
不動産投資の守りを考えた時には必要な視点ですので、この記事を参考に計算していただければと思います。
(動画)現実感のある売却シミュレーションを行う方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「現実感のある売却シミュレーションを行う方法」を動画でご紹介します
不動産投資指標を使って安全性を分析
不動産投資シミュレーションの基本はキャッシュフロー分析です。しかし、それだけでは気づきにくいリスクもあります。
不動産投資指標を使った分析
不動産投資指標はおおまかに4つに区分できます。
1.利回り指標
2.投資効率指標
3.安全性指標
4.キャッシュフロー指標
の4つです。

この記事では、様々な不動産投資指標の中から安全性指標のBER(BE%)について確認します。
BERとは
不動産投資指標のBERは以下の式で計算されます。
■BER(BE%)計算式
(維持管理費+返済額)÷満室想定家賃×100
よく聞く言葉で言い換えれば「損益分岐点」の考え方に近い指標です。
この指標が便利なのは、計算時(投資開始時等)の家賃・維持管理費・借入返済の値を利用して、将来どの程度の変動まで耐えられるかを推測できる点です。
BERはパーセンテージが低ければ低いほど、将来の変動に強い言えます。目安とすべき値は70%以下です。
70%を大きく超過し90%以上などの数値の場合は、将来の空き室リスク等の変動に弱く、投資内容の再検討が必要かもしれません。
BERの数値を改善する方法
BERを改善させるには、
1.家賃上げる
2.維持管理費を下げる
3.借入を見直す
の3つの方法があります。
しかし、1.家賃上げる 2.維持管理費を下げるは、なかなか難しいと思います。この3つの中では借入を見直すのが現実的です。
具体的な見直し内容は
▼借入額を少なくする(自己資金を増やす)
▼借入年数を長くする
▼金利を低く借りる
の3つです。
以下それぞれを見直した結果です。
■借入率によるBERの変化

■借入年数によるBERの変化

■金利によるBERの変化

※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
借入内容を見直すことで、BERの値は大きく変化します。
安全性と収益性のバランス
BER70%以下を目安に投資をすることで、将来の家賃下落、金利上昇等の変化に強い状態で投資を進めることができます。90%以上の値になった場合は、かなりのリスクを背負って投資を進めなければなりません。
しかし、BERを意識するあまり、借入率を小さくしてBERを改善した場合には収益性指標は低下します。
例えば、自己資金回収率で、回収率100%までに必要な年数を確認すると、借入率80%=29年後だったものが、借入率70%=31年後と2年間遅くなります。
このように、安全性と収益性は非対称になる場合があります。ぜひ、キャッシュフロー分析とともに、様々な指標を利用しながらシミュレーションをしていただければと思います。
(動画)確認したい3つの不動産投資指標
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「BERを含む確認したい3つの不動産投資指標」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します


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