Archive for the ‘不動産投資シミュレーション’ Category
物件購入の意思決定前に行いたい3つの分析
先日、こんなご質問をいただきました。
「不動産投資シミュレーションする際はどんな分析をすれば良いですか?」
投資の主目的(節税・資産防衛・資産運用)によって確認すべきポイントは大きく異なります。
投資目的と分析ポイント
■節税目的 ⇒ どれだけ課税所得を減らせるか
■資産防衛目的 ⇒ 物件の資産価値を守れるか
がポイントになると思います。
では、資産運用目的の場合はどうでしょうか。
資産運用目的で物件を購入する際に行っておきたいシミュレーションは
1.長期キャッシュフロー分析
2.10年・20年後等の節目で売却分析
3.変動を考慮した分析(空室・家賃・金利・修繕)
です。
長期キャッシュフロー分析
長期のキャッシュフローシミュレーションを確認することは、不動産投資シミュレーションでもっとも重要なポイントです。
長期のキャッシュフロー分析は税引き後キャッシュフローを確認することをお勧めします。
また、シミュレーション時には投資予定の物件以外の所得(給与等)を考慮する必要もあります。
理由は、個人所有で投資する場合には「総合課税制度」と「累進課税制度
」によって税引き後キャッシュフローに大きな影響があるからです。
その上で確認しておきたいのは
1.税引き後キャッシュフローに赤字の年はないか
2.税引き後キャッシュフローの減少ペース
です。
物件以外の所得を考慮した場合としない場合で結果を比較します。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用
まず、給与等の所得を加味した分析と、しない分析では税引き後キャッシュフローに30%~40%違いがあります。
今回のシミュレーションの税引き後キャッシュフローを確認すると赤字の年はありません。
また、税引き後キャッシュフローは年々減少します。元金返済と減価償却費のバランスの変化で基本的にこのような経過をたどります。
※元金返済と利息支払と減価償却費のバランスの重要性
10年・20年後等の節目で売却分析
売却シミュレーションも確認しておきたい分析です。理由は「不動産投資は出口(売却)を迎えるまで成否は分からない」からです。
以下は売却価格を変化させて税引き後キャッシュフロー累計を比較したものです。
※10年後の売却価格を推定する方法
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用
税引き後キャッシュフロー(CF)累計は、投資期間中(10年間)の家賃収入と売却収入を合算したものです。売却価格によって大きく異なります。
ちなみに、この投資の自己資金は1,600万円です。5,000万円でしか売却できない場合は、家賃収入(インカムゲイン)ではプラスになっているものの、最終的に約850万円の損失が出ます。
売却分析では「いくらで売却できれば自己資金を回収できるか」「目標の収益を得られる売却価格はいくらか」は確認しておきたいポイントです。
変動を考慮した分析(空室・家賃・金利・修繕)
不動産投資は10・20年と長期にわたります。投資期間中、ずっと満室、家賃変わらずという可能性は低いです。また、修繕費も一定額かかります。
以下は家賃下落なしと家賃下落ありのシミュレーション結果です。
不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用
税引き後キャッシュフローに大きな違いが発生しています。変動無しシミュレーションは現実離れする可能性が高いため注意が必要です。
以下のリンクのページで現実感ある家賃変動と空室率で不動産投資シミュレーションを行う方法をご紹介しています。
※家賃変動・空室を加味して現実的な不動産投資シミュレーションを行う方法
役立つシミュレーションを行う
ポイントを外した不動産投資シミュレーションは無意味になりがちです。
ご紹介した
1.長期キャッシュフロー分析
2.10年・20年後等の節目での売却分析
3.変動を考慮した分析(空室・家賃・金利・修繕)
を意識しながら分析結果を比較していただければと思います。
(動画)売却分析とリスクを予測したシミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して売却シミュレーションを行う方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用してリスクを予測したシミュレーションを行う方法
物件価格と金利とインフレの関係性
日銀 植田総裁のマイナス金利解除の可能性についての記事が掲載されました。マイナス金利が解除されれば、借入金利上昇の可能性は高まります。
不動産投資への金利の影響
金利上昇の不動産投資への影響で真っ先に思いつくのは、利息支払い増加によるキャッシュフロー悪化です。
そして、キャッシュフロー悪化を通して、もう1つ大きな影響を受ける項目があります。
それは物件価格下落の可能性です。下落する理由は収益還元法の視点で考えると良く分かります。
現在、収益還元法は不動産投資シミュレーションの主流です。収益還元法を細かく説明すると小難しい内容になります。しかし、単純に書けば
「目標収益を達成できるかを基準に判断する方法」です。
この視点で考えた時に、金利上昇は物件価格へ
1.金利上昇
↓
2.キャッシュフロー悪化
↓
3.目標収益に到達しない
↓
4.内容見直し必要
↓
5.物件価格見直しor投資中止
↓
6.物件価格下落
このような流れで影響を与えます。
金利上昇の影響をシミュレーション
サンプル物件を使って金利上昇の税引き前キャッシュフロー(CF)と物件価格への影響をシミュレーションします。
この物件への投資のために借入した金利を、0.5%ずつ変動させて税引き前キャッシュフローへの影響を比較します。
1.5%時には年間約150万円あった税引き前キャッシュフローは徐々に減少していき、5.0%で赤字に転落します。金利上昇の影響の大きさが分かります。
アメリカは約1年半で5%近く政策金利を上げています。日本では現実感のない上昇です。しかし、諸外国では現実に発生しています。
物件価格への影響
次に、物件価格への影響を確認します。
金利1.5%と同等の約150万円の税引き前キャッシュフローを稼ぐために、いくらで物件を買う必要があるかとその際の表面利回りを一覧にしました。
金利上昇ごとに、安い物件価格(高い表面利回り)で購入する必要があります。つまり、金利上昇⇒物件価格下落になります。
しかし、こんなことを疑問に思うかもしれません。「金利上昇(利上げ)=物価上昇時だから、家賃も上がって物件価格も上昇するはず」
確かにその通りです。ただ、単純に連動するわけではありません。
インフレと家賃上昇と物件価格
日本の家賃はインフレを約2年程度遅れて追いかけてくると言われています。
理由は「入居後に家賃を上げるのは非常に困難」だからです。
借地借家法は新法になっても、借手の権利を強く保護しています。そのため、インフレになったから即家賃を上げるのは不可能です。
「インフレ⇒金利上昇」よりも「インフレ⇒家賃上昇」はかなり遅れてやってきます。
その間、キャッシュフロー悪化と物件価格下落(担保価値下落)を耐え忍ぶ期間が発生します。
今回のシミュレーションは分かり易くするために、かなり単純化しています。そのため、この通りなるわけではありません。しかし、基本的に
■金利上昇=キャッシュフロー悪化
■金利上昇=物件価格下落
です。
金利上昇の可能性は高まっています。この点を頭に置いて不動産投資シミュレーションを行う際の参考にしていただければと思います
(動画)金利変動シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して金利変動シミュレーションを行う方法
家賃変動・空室を加味して現実的な不動産投資シミュレーションを行う方法
2009年に私たちが不動産投資シミュレーションツールを発売した際は、まだ、不動産投資シミュレーションは一般的ではありませんでした。
最近は、多くの投資家さんが利用するようになり、意思決定の参考ツールとして一般的になってきたと思います。
しかし、不動産投資に限らず、シミュレーション全般で言えることは、
「前提(入力)条件」が現実離れをしていると、ほとんど意味のない分析になってしまうことです。
不動産投資シミュレーションの前提条件
現実感ある分析は購入時の情報だけでは行えません。
理由は、10・20年と続ける投資(運用)は、時間経過による変動を条件に加えて行う必要があるからです。
時間経過による変動で特に考慮すべき項目は
1.空室
2.家賃変動
3.金利
4.修繕費
5.将来の売却可能額
の5つです。
今回は空室・家賃下落について現実感あるシミュレーションを行う方法についてです。
※その他3~5の項目については関連記事をご参照ください。
不動産投資シミュレーションの空室率設定
現実感ある空室率を検討する際に役立つデータは、住宅及び世帯に関する基本集計(総務省統計局)です。
このレポート内の「現住居以外に所有する住宅の主な用途別普通世帯数」の調査結果を確認すると
「住宅及び世帯に関する基本集計」を参考にアセットランクが作成
約13%の空室率であることが分かります。しかし、この数値は全国平均のものです。また、まともに賃貸募集していない空き家も含まれていると考えられます。
この辺りを調整すると、都心や政令指定都市の中心部等は8~12%。地方都市等は13~20%を目安にシミュレーションを行うと良いと思います。
不動産投資シミュレーションの家賃変動設定
家賃変動については以下のデータが役立ちます。
▼劣化が住宅賃料に与える影響とその理由
▼マンション賃料インデックス
上記ホームページ「劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」をご確認いただきたいと思います。少し古いデータですが東京23区は、築20年頃まで経年劣化で1~2%前後下落していることが分かります。
次に、マンション賃料インデックスを確認します。
出所:マンション賃料インデックス(アットホーム株式会社、株式会社三井住友トラスト基礎研究所)を元にアセットランクが作成
上記は東京23区のシングル・コンパクト・ファミリーの総合指数データです。ここ10年近く、年平均約1~2pt程度上昇していることが分かります。
これらの傾向から推測する今後の家賃変動は、都心、政令指定都市は0~0.5%程度下落。地方は1~3%程度下落でシミュレーションを行うといいと思います。
変動有り、無しシミュレーション比較
変動有りと無しで、どの程度結果に影響があるか比較します。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターで分析
上が変動無し、下が空室率10%・年0.5%家賃下落を加味した分析結果です。
20年後(2042年)の税引き後キャッシュフロー(CF)累計は、約1,400万円の差があります。今回は自己資金1,600万円でのシミュレーションですので、大きな影響のあることが分かります。
不動産投資シミュレーションの精度
分析結果を比較して分かるように、新築や物件購入時から変動の無いシミュレーションでは、現実感のない分析になります。ご紹介したデータ等を参考にしていただき、変動シミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)変動シミュレーションを行う方法
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを利用した変動分析の入力方法のご紹介
利回り5%以下の物件購入時のシミュレーションのポイント
最近の物件価格上昇に伴って、低利回りでキャッシュフローがぎりぎりプラスの物件を購入する方も増えています。
デフレ時代と違い、インフレ時代の不動産投資では、将来の値上がり益や資産防衛を目的に購入することが増えます。
このような物件の場合、特に確認したい不動産投資指標があります。
低利回り物件のシミュレーション
低利回り物件で確認しておきたい不動産投資指標は
1.税引き後キャッシュフロー
2.自己資金回収率
3.IRR
の3つです。
この3つを確認する際に、キャッシュフローがぎりぎりプラスだからこそ注意したい項目があります。
税引き後キャッシュフロー確認時の注意点
キャッシュフローがぎりぎりプラス物件のサンプルシミュレーションです。表面利回りは4.35%です。
赤枠を見て分かるように、キャッシュフロー(CF)・税引き後キャッシュフロー(CF)ともにプラスなのが分かります。
しかし、1つ大切な条件の抜けた問題のあるシミュレーション結果です。
その大切な条件は、給与所得等のこの物件以外からの所得です。
その他所得を加味したシミュレーション
課税所得640万円(年収1,000万円程度)を加味したシミュレーション結果です。
※所得税等税金は按分して不動産投資分の課税所得分のみで試算
税引き後キャッシュフロー(CF)を見て分かるように、毎年赤字になっているのが分かります。その他の所得があることで総合課税制度と累進課税制度
で税率が上昇して税額が増加します。
こうなると、毎年、毎年この物件へ持ち出しが発生することになりますので注意が必要です。
自己資金回収率とIRR
さらに確認しておきたいのは、売却まで含めた自己資金回収率とIRRです。
2つの指標を利用して最低限確認したいのは
1.いくらで売却できれば自己資金回収(自己資金回収率100%)できるか
2.いくらで売却できれば目標収益率(目標のIRR値)を達成できるか
です。
それぞれ確認すると
【自己資金回収率】
今回は1,600万円を自己資金として利用しています。その自己資金を回収するには、8,000万円で購入した物件を約5,900万円で売却できると回収できることがシミュレーション結果から分かります。
次に目標収益率をIRRで確認します。
【IRR】
今回は、IRRを5,900~7,350万円で売却した場合で比較しました。
このように比較することで、インカムゲインは赤字でも、キャピタルゲインで目標収益率を達成できる売却価格を確認できます。
※IRRについては「インフレ時代の不動産投資で利用したい指標」をご確認ください
最低限守るべきラインを確認する
インカムゲインで目標収益を組み立てていける場合はある程度予測できます。しかし、インカムゲインで目標収益を達成できない場合は、インカムゲイン(家賃収入)及びキャピタルゲイン(売却収入)で最低限死守しなければならないラインを慎重に予測しておく必要があります。
その際に
1.税引き後キャッシュフロー
2.自己資金回収率
3.IRR
の不動産投資指標を利用すると便利です。
3つの不動産投資指標の確認方法動画
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを使って1.税引き後キャッシュフロー 2.自己資金回収率 3.IRRを確認する方法
木造とRC造のデッドクロスの特徴
不動産投資シミュレーションを行う際に確認すべきポイントは色々あります。その中でも多くの投資家さんの注目するポイントに
「デッドクロス」があります。
なぜ、デッドクロスに注目するのでしょうか。
デッドクロスに注目する理由
不動産投資のデッドクロスは
「減価償却費<元金返済額」
状態のことです。
このタイミングに注目する理由は、税引き後キャッシュフローが大きく減少していくタイミングになりえるからです。
サンプルシミュレーションでデッドクロスを確認をすると
赤枠の税引き後キャッシュフロー(CF)に着目してください。
2022年の約190万円からデッドクロス発生後の2024年は約140万円まで少なくなります。
デッドクロスに影響のある項目
デッドクロスに影響する項目は
■元金返済額に影響
・自己資金額
・借入種類(元利均等・元金均等)
・金利
・借入年数
■減価償却費に影響
・物件価格に占める土地・建物・設備割合
・建物構造
・築年数
等です。
今回は、建物構造(中古RC造・中古木造)の特徴に絞って確認します。
RC造のデッドクロスの特徴
まずはRC造です。
今回のサンプルシミュレーションは、2022年に築17年の物件を購入した場合です。「減価償却費<元金返済額」のデッドクロスに2029年になります。
しかし、デッドクロス後も、税引き後キャッシュフロー(CF)は数万円程度の減少です。
理由は
1.RC物件は木造に比較して法定耐用年数が長い
2.RC物件は木造に比較して借入期間を長くできる
ことで、極端に減価償却費と元金返済額の差額ができないからです。RC物件はこのような特徴になることが多いです。この程度であれば、デッドクロスになったからと言って大きく収益に影響のあるレベルではありません。
※法定耐用年数については耐用年数(建物/建物附属設備)(国税庁)
※減価償却については「附属設備と取得時の諸費用を考慮した減価償却シミュレーション」
をご確認ください
木造のデッドクロスの特徴
次は、中古木造です。こちらも、2022年に築17年の物件を購入した場合です。
2030年にデッドクロスが発生しています。今回のサンプルではデッドクロスの発生タイミングはRC造と1年しか変わりません。しかし、大きな違いがあります。
木造は、税引き後キャッシュフロー(CF)が約150万円⇒約90万円と約60万円も少なくなっています。
理由は
1.法定耐用年数が短く減価償却が2029年に終了
2.借入期間がRCと比較して短く元金返済額が多い
中古木造はこのようなパターンになる特徴があります。中古木造でデッドクロスが発生すると収益に大きく影響する可能性があります。
デッドクロスだけでは分からない
物件構造による影響を確認しました。実際は、借入期間・種類、土地・建物の割合等の影響を大きく受けます。
また、デッドクロスだけに注目しすぎるのも良くありません。税引き後キャッシュフローは、損金となる減価償却と損金とならない元金返済のバランスによって毎年変化します。デッドクロスは1つの目安です。
重要なのは、毎年の税引き後キャッシュフローを中心にシミュレーションを確認して将来の動向を把握しておくことです。
※税引き後キャッシュフローについては「今さら聞けないCFと課税所得の違い」もご確認ください
動画でデッドクロスシミュレーションを確認
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを使ってデッドクロスとキャッシュフローへの影響を確認する方法
不動産投資の収益計画書(シミュレーション)に必要な4項目
先日、不動産投資を検討しているという方に、某社から提出された収益計画書(シミュレーション)を見せていただきました。
正直、投資としては厳しいなと思いました。ただ、表面上のキャッシュフローはプラスでしたので副収入になると思われていたようです。
提出された収益計画書
収益計画書の内容はこのようなものでした。(金額・書式等は変えてあります)
ぱっと見ると、毎年キャッシュフロー(CF)はプラスですし、資産として不動産は残るのでありかなと思ってしまいます。
しかし、この収益計画書で投資判断するのは本当に危険です。
問題だらけの収益計画書
この収益計画書(シミュレーション)では投資判断できないと言っていいと思います。投資判断する際には以下のシミュレーションが必要です。
1.家賃下落、空室等を想定した変動シミュレーション
2.修繕費を考慮したシミュレーション
3.出口(売却)を検討したシミュレーション
そして、この収益計画書の大きな問題は、
「税引き後キャッシュフローシミュレーションがない」
という点です。
それでは、このシミュレーションに税引き後キャッシュフローを加えると、どんな結果になるでしょうか。
※1~3については関連記事でご確認いただけます
税引き後キャッシュフロー
税引き後キャッシュフロー(CF)を加味したシミュレーションを確認すると
赤枠の税引き後キャッシュフロー(CF)をご確認ください。
税引き前に23.3万円あるキャッシュフローの大半は税金支払に充てられています。理由は、この方は年収約900万円あり、*総合課税と*累進課税で税率が上がり負担が重くなるからです。
さらに、問題なのは徐々に税金支払が増加して、2035年にはキャッシュフロー赤字になります。副収入どころか出費になってしまいます。
その理由は、2024年は損金にならない元金返済「1,872,700円」に対して、損金になる減価償却「1,435,200円」です。それが2035年には元金返済「2,269,911円」減価償却「1,435,200円」となり課税所得が増加するからです。
※「元金支払」と「減価償却」の関係については「デッドクロス発生メカニズムとシミュレーション」をご確認ください。
税引き後キャッシュフローを確認すると、かなり厳しい現実が待っていることが分かります。
収益計画書に必要な情報
数字で収益計画書を見せられると、そうなのかと一瞬信じてしまいます。しかし、提出された収益計画書に必要な情報が入っているかが重要です。
第三者から収益計画書が提出された場合は
1.税引き後キャッシュフローシミュレーション
2.家賃下落、空室等を想定した変動シミュレーション
3.修繕を考慮したシミュレーション
4.出口(売却)を検討したシミュレーション
の4つが考慮された計画書なのかを確認することが必要です。
不動産投資の収益目標を検討する方法
不動産投資に興味のある、行われている方の話をお聞きすると、数値目標を持たずに投資を進めている方が多くいらっしゃいます。当然ですが、数値目標はとても重要です。これは不動産投資も例外ではありません。
そこで、資産運用を目的として不動産を購入した場合の目標の立て方について考えます。
資産運用の目標
不動産を資産形成で購入する際の一番の目標は「投資した自己資金をできるだけ増加させる」ことです。しかし「できるだけ」では曖昧です。曖昧さを無くすために、不動産投資指標を利用して数値目標を立てる必要があります。
その際に便利な指標は
1.自己資金回収率
2.IRR
です。
ここから順番に、この2つを利用して計画を立てる方法を確認していきます。
自己資金回収率
まず、自己資金回収率についてです。自己資金回収率を利用する理由は、
1.自己資金が何%増加したか分かり易い
2.自己資金回収(回収率100%)までの期間が分かり易い
からです。
自己資金回収率は、資産運用で重要な増加額と時間軸の2つを確認できます。以下は自己資金回収率を意識した、不動産投資キャッシュフローシミュレーションのサンプルです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能一部抜粋
自己資金回収率を考える際は、本当の手取りである税引き後キャッシュフローを基準に考えた方が良いです。このサンプルでは、自己資金1,500万円を10年後に回収しています。10年で自己資金を回収できるかどうかは1つの目安になります。
自己資金回収を早めるには
・物件を安く買う
・家賃を上げる
・稼働率を上げる
・維持管理費を下げる
・借入率を上げる
・金利を下げる
等が考えられます。
IRR
次に確認したいのはIRRです。IRRとは内部収益率のことです。
※IRRについて
IRRを利用することで、他の投資対象と収益率を比較しやすくなります。
資産形成を考えた場合に、現物の不動産にこだわる必要はありません。株、債権、REIT等 様々な投資対象の中で一番収益率の高い物に投資するのが良いわけです。この比較を行うのにIRRは便利です。
以下は、1,000万円の株式を購入。毎年3%の配当受取り。10年後に1,000万円で売却。した時のIRRをExcelを利用して計算する方法です。
IRRが、不動産が高ければ不動産。株が高ければ株が有利という結論になります。
次に、不動産投資のIRRをExcelを利用して計算する方法です。
Excelへの入力方法を説明すると
1.一番最初のセル(B2)に自己資金額
2.各中間年のセル(B3~B11)に家賃からのキャッシュフロー額
3.最終年のセル(B12)に家賃+売却のキャッシュフロー額
を入れて、IRR関数を利用して計算します。
B13のセルに入っているのが必要なExcel関数です。関数の式は「=IRR(B2:B12)」です。
ちなみに、IRRには、BTIRRとATIRRがあります。
▼BTIRR=税引き前キャッシュフロー基準
▼ATIRR=税引き後キャッシュフロー基準
で計算した値です。
目標数値の重要性
資産運用を考える際に、目標を数値で考えるのは重要です。目標数値を検討する時に、72の法則を利用して資産を〇年で〇倍にしたいというところから検討するのも一つの方法です。
※72の法則について
例えば、自己資金を10年で倍にしたい場合には、IRR=7.18% 必要です。
このように、まずはザックリでも構いませんので、数値目標を持っているのと、持っていないのでは、不動産投資に対する物の見方が大きく変わります。
この記事を資産運用の目標値検討の参考にしていただければと思います。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「自己資金回収率とIRR」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します。
表面利回り5%以下の物件へ投資しても大丈夫か
人口密集地を中心に物件の利回りが低下しています。
考えられる主な理由は
▼低金利による価格上昇
▼建築費高騰
▼家賃上昇は緩やか
等です。
今日は、このような状況下で不動産投資を進めて大丈夫か?不動産投資シミュレーションを使って検証します。
表面利回り5%の物件
新築木造の表面利回り5%の物件を想定して分析を進めます。
結果はとても厳しいものになりました。しかし、厳しい結果だから投資できないかと言うと、そうとも言い切れません。それでは、その理由とシミュレーション結果を確認します。
シミュレーション結果
シミュレーション結果は以下です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能一部抜粋
正直、投資にならない結果です。
今回は、家賃下落なし・稼働率100%・金利上昇なしの大甘シミュレーションです。
それにも関わらず、2032年(10年目)で投じた自己資金の29.35% 約470万円しか回収できません。さらに、27年後の2049年~税引き後キャッシュフロー(CF)赤字になります。2052年(30年後)でも自己資金の59.77% 約960万円しか回収できません。
インカムゲイン(家賃収入)だけを確認すると検討する余地もないです。
しかし、本当に投資にならないかというと簡単には言い切れません。
2000年前後から、日本の不動産はデフレ前提の投資スタイルでした。デフレ前提の投資スタイルでは、物件価格は年々下落していくことを想定して計画を立てる必要がありました。つまり、下落分を家賃収入で補っていく必要があります。
しかし、現在はデフレ⇒インフレへ移行しつつあります。こうなると、キャピタルゲイン(売却収入)を考慮して計画を立てることが重要になります。では、次にキャピタルゲインを考慮したシミュレーションを行います。
インカム+キャピタル
2038年(15年後)に売却した場合のシミュレーション結果です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター売却シミュレーション機能を利用して結果を編集
購入価格の8,000万円を中心に6,000万円~1億円で売却した際の税引き後キャッシュフロー累計・自己資金回収率・BTIRRとATIRRを一覧にしたものです。
BTIRRとATIRRは内部収益率を表します。BTIRR=税引き前キャッシュフロー基準。ATIRR=税引き後キャッシュフロー基準です。
厳密には違うのですが、投資期間中に自己資金を年平均どの程度で運用できるか示す指標とご理解ください。つまり、BTIRR・ATIRRともに数値が高いほど効率よく自己資金を運用できたことになります。
IRRの利用方法としては、例えば、株式運用で配当等を含めて、自己資金をIRR4%で運用できそうな場合に、不動産は比較してどうかというように使います。
※IRRについて
まず、購入価格の8,000万円で売却した場合、自己資金は1,600万円⇒4,200万円(約2.6倍) ATIRR 7.09%で運用できます。1億円では自己資金は約3.5倍 ATIRR 9.32%で運用できます。
このように売却まで含めると、効率よく運用できる可能性のあることが分かります。ちなみに売却価格約4,800万円以下になると、自己資金1,600万円を回収できずに投資として成り立たなくなります。
インフレ時代の不動産投資
デフレ時代はインカムゲインのキャッシュフローシミュレーションが中心でした。しかし、インフレ時代にはインカムゲインに加えて、キャピタルゲインの分析も重要になります。
インカムゲインでキャッシュフローに赤字の年がないかに加えて、〇円で売却できた場合にどの程度の運用ができるか。 最低〇円で売却できれば自己資金を回収できるか。 についてのシミュレーションも必要なります。
※アセットランクシミュレーターを利用して「インフレ時代の不動産投資で確認しておきたい項目」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します。
収益物件の購入前にシミュレーションすべき3項目
不動産投資シミュレーションの何を重要視するかは、投資目的、投資家さんの属性等によって異なります。
しかし、そんな中でも、確認しておきたい3項目があります。
確認しておきたい3項目
確認しておきたい3項目は
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字はないか
2.BE%(BER)は70%以下か
3.売却シミュレーションで赤字にならないか
それでは、この3つが重要な理由と確認方法についてです。
3項目を確認すべき理由
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字はないか
「キャッシュフロー赤字=他の収入から持ち出し発生」を意味します。不動産投資は長期間に及びます。シミュレーション段階で、10年・20年とキャッシュフロー赤字はないか確認が必要です。
2.BE%(BER)は70%以下か
BE%は損益分岐点を表すものです。この数値が低ければ、低いほど、家賃下落・空室等発生した際にキャッシュフロー赤字になりにくいです。投資期間中には何らかの変動はつきものです。その変動に耐えられるのかを確認するために利用します。
※BE%(BER)の詳細は「不動産投資で利用したい各種指標」をご確認ください。
※家賃変動に関するご参考記事(外部サイト)「駅近コンパクトタイプのアパートは、賃料の経年変化から見た安定性が最も高い」
3.売却シミュレーションで赤字にならないか
どんなに家賃収入が安定していても、出口(売却)で失敗すれば、不動産投資は失敗します。いつ頃売却するか決めていない場合にも、仮に●年後に売却した場合に「売却で借入返済できるか」 「売却後に自己資金回収できるか」のシミュレーションは必須です。
それでは、具体例を確認しながら進めます。
サンプルシミュレーション
以下はサンプルシミュレーションです。
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字はないか
キャッシュフロー赤字の無いことが分かります。まず、家賃収入(インカムゲイン)という点ではクリアです。
2.BE%(BER)は70%以下か
BE%は68.38%と70%以下です。ある程度の変化には対応できそうです。ただし、今回は家賃・維持管理費・金利等一定のシミュレーションです。さらに、変動シミュレーションを行った中で範囲内に入るかの確認を行うとベストです。
3.売却シミュレーションで赤字にならないか
売却時に借入返済できることが分かります。また、家賃収入の累積キャッシュフローと売却キャッシュフロー合計は約3,065万円です。自己資金(1,600万円)を十分回収できます。
売却価格をどの位で設定したらいいかを知りたい場合は「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご参考に検討してください。
今回のサンプルシミュレーションは、すべての項目をクリアしました。では、次に、万が一、クリアしなかった際に、見直すべき内容についてです。
※シミュレーション結果は不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能より抜粋
投資に向けての見直し
次に、シミュレーション結果が思わしくない場合、どのような改善が必要かです。
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字発生
⇒家賃を上げることはできないか
⇒維持管理費を下げることはできないか
⇒自己資金を増やして借入額を減らせないか
⇒借入金利を下げられないか
2.BE% 70%超過
⇒家賃を上げることはできないか
⇒維持管理費を下げることはできないか
⇒自己資金を増やして借入額を減らせないか
⇒借入金利を下げられないか
3.売却シミュレーションで赤字
⇒売却可能な価格は上昇しそうか
⇒自己資金を増やして借入額を減らせないか
これらの案を検討して、見直しが難しそうならば、投資を見送る判断も必要です。
収益性と安全性のバランス
最低限確認したい3項目をご紹介しました。最終的な判断をする場合は、これに加えて、収益は投資目標に届きそうか。家賃・空室・金利を変動させて、どの程度の変動まで耐えられるか等のシミュレーションを行うことが必要です。
不動産投資シミュレーション結果は、収益性と安全性のバランス考慮して確認することが重要です。
※アセットランクシミュレーターを利用して「収益物件の購入前にシミュレーションすべき3項目」を確認する方法を、以下の動画でご紹介しています
デッドクロス発生メカニズムとシミュレーション
「デッドクロス」という単語を1度は聞いたことがあると思います。
不動産投資で使うデッドクロスは
「減価償却費<元金返済額」
となる状態を言います。
今日は、不動産投資の重要な用語である。デッドクロスについてです。
不動産投資家が注意する理由
なぜ、不動産投資家はデッドクロスに注目するのでしょうか。
理由は税引き後キャッシュフローの大きく減少するタイミングになるからです。
では、デッドクロスに影響を与える項目と発生メカニズムを確認していきます。
デッドクロスに影響を与える項目
デッドクロスに影響を与える項目は
■元金返済額に影響
・自己資金額
・借入種類(元利均等・元金均等)
・金利
・借入年数
■減価償却費に影響
・物件価格に占める土地・建物・設備の割合
・建物種類(法定耐用年数)
・築年数
これらの項目によって、デッドクロスが発生する時期、影響の大きさが異なります。
では、なぜ「減価償却費<元金返済額」のデッドクロスが発生すると税引き後キャッシュフローは減少するのでしょうか。
理由は、キャッシュフローと課税所得の計算方法の違いにあります。
キャッシュフローと課税所得
それぞれの計算式は
■キャッシュフロー(CF)
収入 - 経費 - 元金返済 – 利息返済
■課税所得
収入 - 経費 - 利息返済 - 減価償却費
※課税所得とキャッシュフローの違いを詳しく確認したい場合は「今さら聞けないCFと課税所得の違い」をご確認ください。
元金返済と減価償却費をキャッシュフローと課税所得の計算式で比較すると
■元金返済
・キャッシュフローに影響あり
・課税所得に影響なし(損金にならない)
■減価償却費
・キャッシュフローに影響なし
・課税所得に影響あり(損金になる)
この差が要因でデッドクロスが発生すると、収入・支出は変わらないのに、税金支払いが増加して、本当の手取り額である税引き後キャッシュフローに影響を与えます。
デッドクロスのシミュレーション
では、デッドクロスのサンプルシミュレーションを確認します。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能一部抜粋
上記シミュレーションのキャッシュフロー(CF)とデッドクロス発生は、元利均等返済で中古木造物件を購入した際によくあるパターンです。
不動産投資前半は、減価償却費が元金返済額を大きく超えるため、課税所得はマイナスになり、税金支払いは発生しません。
しかし、年々、元金返済が進み、借入残高減少⇒利息支払割合減少・元金返済割合増加で、課税所得額が増えていきます。
そして、2033年に減価償却が終了することで、デッドクロスが発生します。このタイミングで所得税等の税額が跳ね上がり、税引き後キャッシュフローはマイナスになります。つまり持ち出しになります。
このサンプルシミュレーションはデッドクロス発生が、収益に大きな影響を与える1つのパターンです。
投資前にデッドクロスを確認
サンプルシミュレーションを確認して分かるように、デッドクロス発生が影響の大きい投資パターンが存在します。
デッドクロス発生タイミング、影響の大きさは、デッドクロスに影響を与える各項目の内容によって大きく異なります。
物件購入前にどのタイミングでデッドクロスが発生しそうかに注目して、不動産投資シミュレーションを行う必要があります。
※アセットランクシミュレーターを使ってデッドクロスの発生タイミングとキャッシュフローへの影響を確認する方法をご紹介しています