Archive for the ‘不動産投資シミュレーション’ Category
家賃変動・空室を加味して現実的な不動産投資シミュレーションを行う方法
2009年に私たちが不動産投資シミュレーションツールを発売した際は、まだ、不動産投資シミュレーションは一般的ではありませんでした。
最近は、多くの投資家さんが利用するようになり、意思決定の参考ツールとして一般的になってきたと思います。
しかし、不動産投資に限らず、シミュレーション全般で言えることは、
「前提(入力)条件」が現実離れをしていると、ほとんど意味のない分析になってしまうことです。
不動産投資シミュレーションの前提条件
現実感ある分析は購入時の情報だけでは行えません。
理由は、10・20年と続ける投資(運用)は、時間経過による変動を条件に加えて行う必要があるからです。
時間経過による変動で特に考慮すべき項目は
1.空室
2.家賃変動
3.金利
4.修繕費
5.将来の売却可能額
の5つです。
今回は空室・家賃下落について現実感あるシミュレーションを行う方法についてです。
※その他3~5の項目については関連記事をご参照ください。
不動産投資シミュレーションの空室率設定
現実感ある空室率を検討する際に役立つデータは、住宅及び世帯に関する基本集計(総務省統計局)です。
このレポート内の「現住居以外に所有する住宅の主な用途別普通世帯数」の調査結果を確認すると
「住宅及び世帯に関する基本集計」を参考にアセットランクが作成
約13%の空室率であることが分かります。しかし、この数値は全国平均のものです。また、まともに賃貸募集していない空き家も含まれていると考えられます。
この辺りを調整すると、都心や政令指定都市の中心部等は8~12%。地方都市等は13~20%を目安にシミュレーションを行うと良いと思います。
不動産投資シミュレーションの家賃変動設定
家賃変動については以下のデータが役立ちます。
▼劣化が住宅賃料に与える影響とその理由
▼マンション賃料インデックス
上記ホームページ「劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」をご確認いただきたいと思います。少し古いデータですが東京23区は、築20年頃まで経年劣化で1~2%前後下落していることが分かります。
次に、マンション賃料インデックスを確認します。
出所:マンション賃料インデックス(アットホーム株式会社、株式会社三井住友トラスト基礎研究所)を元にアセットランクが作成
上記は東京23区のシングル・コンパクト・ファミリーの総合指数データです。ここ10年近く、年平均約1~2pt程度上昇していることが分かります。
これらの傾向から推測する今後の家賃変動は、都心、政令指定都市は0~0.5%程度下落。地方は1~3%程度下落でシミュレーションを行うといいと思います。
変動有り、無しシミュレーション比較
変動有りと無しで、どの程度結果に影響があるか比較します。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターで分析
上が変動無し、下が空室率10%・年0.5%家賃下落を加味した分析結果です。
20年後(2042年)の税引き後キャッシュフロー(CF)累計は、約1,400万円の差があります。今回は自己資金1,600万円でのシミュレーションですので、大きな影響のあることが分かります。
不動産投資シミュレーションの精度
分析結果を比較して分かるように、新築や物件購入時から変動の無いシミュレーションでは、現実感のない分析になります。ご紹介したデータ等を参考にしていただき、変動シミュレーションを行っていただければと思います。
(動画)変動シミュレーションを行う方法
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを利用した変動分析の入力方法のご紹介
利回り5%以下の物件購入時のシミュレーションのポイント
最近の物件価格上昇に伴って、低利回りでキャッシュフローがぎりぎりプラスの物件を購入する方も増えています。
デフレ時代と違い、インフレ時代の不動産投資では、将来の値上がり益や資産防衛を目的に購入することが増えます。
このような物件の場合、特に確認したい不動産投資指標があります。
低利回り物件のシミュレーション
低利回り物件で確認しておきたい不動産投資指標は
1.税引き後キャッシュフロー
2.自己資金回収率
3.IRR
の3つです。
この3つを確認する際に、キャッシュフローがぎりぎりプラスだからこそ注意したい項目があります。
税引き後キャッシュフロー確認時の注意点
キャッシュフローがぎりぎりプラス物件のサンプルシミュレーションです。表面利回りは4.35%です。
赤枠を見て分かるように、キャッシュフロー(CF)・税引き後キャッシュフロー(CF)ともにプラスなのが分かります。
しかし、1つ大切な条件の抜けた問題のあるシミュレーション結果です。
その大切な条件は、給与所得等のこの物件以外からの所得です。
その他所得を加味したシミュレーション
課税所得640万円(年収1,000万円程度)を加味したシミュレーション結果です。
※所得税等税金は按分して不動産投資分の課税所得分のみで試算
税引き後キャッシュフロー(CF)を見て分かるように、毎年赤字になっているのが分かります。その他の所得があることで総合課税制度と累進課税制度で税率が上昇して税額が増加します。
こうなると、毎年、毎年この物件へ持ち出しが発生することになりますので注意が必要です。
自己資金回収率とIRR
さらに確認しておきたいのは、売却まで含めた自己資金回収率とIRRです。
2つの指標を利用して最低限確認したいのは
1.いくらで売却できれば自己資金回収(自己資金回収率100%)できるか
2.いくらで売却できれば目標収益率(目標のIRR値)を達成できるか
です。
それぞれ確認すると
【自己資金回収率】
今回は1,600万円を自己資金として利用しています。その自己資金を回収するには、8,000万円で購入した物件を約5,900万円で売却できると回収できることがシミュレーション結果から分かります。
次に目標収益率をIRRで確認します。
【IRR】
今回は、IRRを5,900~7,350万円で売却した場合で比較しました。
このように比較することで、インカムゲインは赤字でも、キャピタルゲインで目標収益率を達成できる売却価格を確認できます。
※IRRについては「インフレ時代の不動産投資で利用したい指標」をご確認ください
最低限守るべきラインを確認する
インカムゲインで目標収益を組み立てていける場合はある程度予測できます。しかし、インカムゲインで目標収益を達成できない場合は、インカムゲイン(家賃収入)及びキャピタルゲイン(売却収入)で最低限死守しなければならないラインを慎重に予測しておく必要があります。
その際に
1.税引き後キャッシュフロー
2.自己資金回収率
3.IRR
の不動産投資指標を利用すると便利です。
3つの不動産投資指標の確認方法動画
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを使って1.税引き後キャッシュフロー 2.自己資金回収率 3.IRRを確認する方法
木造とRC造のデッドクロスの特徴
不動産投資シミュレーションを行う際に確認すべきポイントは色々あります。その中でも多くの投資家さんの注目するポイントに
「デッドクロス」があります。
なぜ、デッドクロスに注目するのでしょうか。
デッドクロスに注目する理由
不動産投資のデッドクロスは
「減価償却費<元金返済額」
状態のことです。
このタイミングに注目する理由は、税引き後キャッシュフローが大きく減少していくタイミングになりえるからです。
サンプルシミュレーションでデッドクロスを確認をすると
赤枠の税引き後キャッシュフロー(CF)に着目してください。
2022年の約190万円からデッドクロス発生後の2024年は約140万円まで少なくなります。
デッドクロスに影響のある項目
デッドクロスに影響する項目は
■元金返済額に影響
・自己資金額
・借入種類(元利均等・元金均等)
・金利
・借入年数
■減価償却費に影響
・物件価格に占める土地・建物・設備割合
・建物構造
・築年数
等です。
今回は、建物構造(中古RC造・中古木造)の特徴に絞って確認します。
RC造のデッドクロスの特徴
まずはRC造です。
今回のサンプルシミュレーションは、2022年に築17年の物件を購入した場合です。「減価償却費<元金返済額」のデッドクロスに2029年になります。
しかし、デッドクロス後も、税引き後キャッシュフロー(CF)は数万円程度の減少です。
理由は
1.RC物件は木造に比較して法定耐用年数が長い
2.RC物件は木造に比較して借入期間を長くできる
ことで、極端に減価償却費と元金返済額の差額ができないからです。RC物件はこのような特徴になることが多いです。この程度であれば、デッドクロスになったからと言って大きく収益に影響のあるレベルではありません。
※法定耐用年数については耐用年数(建物/建物附属設備)(国税庁)
※減価償却については「附属設備と取得時の諸費用を考慮した減価償却シミュレーション」
をご確認ください
木造のデッドクロスの特徴
次は、中古木造です。こちらも、2022年に築17年の物件を購入した場合です。
2030年にデッドクロスが発生しています。今回のサンプルではデッドクロスの発生タイミングはRC造と1年しか変わりません。しかし、大きな違いがあります。
木造は、税引き後キャッシュフロー(CF)が約150万円⇒約90万円と約60万円も少なくなっています。
理由は
1.法定耐用年数が短く減価償却が2029年に終了
2.借入期間がRCと比較して短く元金返済額が多い
中古木造はこのようなパターンになる特徴があります。中古木造でデッドクロスが発生すると収益に大きく影響する可能性があります。
デッドクロスだけでは分からない
物件構造による影響を確認しました。実際は、借入期間・種類、土地・建物の割合等の影響を大きく受けます。
また、デッドクロスだけに注目しすぎるのも良くありません。税引き後キャッシュフローは、損金となる減価償却と損金とならない元金返済のバランスによって毎年変化します。デッドクロスは1つの目安です。
重要なのは、毎年の税引き後キャッシュフローを中心にシミュレーションを確認して将来の動向を把握しておくことです。
※税引き後キャッシュフローについては「今さら聞けないCFと課税所得の違い」もご確認ください
動画でデッドクロスシミュレーションを確認
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを使ってデッドクロスとキャッシュフローへの影響を確認する方法
不動産投資の収益計画書(シミュレーション)に必要な4項目
先日、不動産投資を検討しているという方に、某社から提出された収益計画書(シミュレーション)を見せていただきました。
正直、投資としては厳しいなと思いました。ただ、表面上のキャッシュフローはプラスでしたので副収入になると思われていたようです。
提出された収益計画書
収益計画書の内容はこのようなものでした。(金額・書式等は変えてあります)
ぱっと見ると、毎年キャッシュフロー(CF)はプラスですし、資産として不動産は残るのでありかなと思ってしまいます。
しかし、この収益計画書で投資判断するのは本当に危険です。
問題だらけの収益計画書
この収益計画書(シミュレーション)では投資判断できないと言っていいと思います。投資判断する際には以下のシミュレーションが必要です。
1.家賃下落、空室等を想定した変動シミュレーション
2.修繕費を考慮したシミュレーション
3.出口(売却)を検討したシミュレーション
そして、この収益計画書の大きな問題は、
「税引き後キャッシュフローシミュレーションがない」
という点です。
それでは、このシミュレーションに税引き後キャッシュフローを加えると、どんな結果になるでしょうか。
※1~3については関連記事でご確認いただけます
税引き後キャッシュフロー
税引き後キャッシュフロー(CF)を加味したシミュレーションを確認すると
赤枠の税引き後キャッシュフロー(CF)をご確認ください。
税引き前に23.3万円あるキャッシュフローの大半は税金支払に充てられています。理由は、この方は年収約900万円あり、*総合課税と*累進課税で税率が上がり負担が重くなるからです。
さらに、問題なのは徐々に税金支払が増加して、2035年にはキャッシュフロー赤字になります。副収入どころか出費になってしまいます。
その理由は、2024年は損金にならない元金返済「1,872,700円」に対して、損金になる減価償却「1,435,200円」です。それが2035年には元金返済「2,269,911円」減価償却「1,435,200円」となり課税所得が増加するからです。
※「元金支払」と「減価償却」の関係については「デッドクロス発生メカニズムとシミュレーション」をご確認ください。
税引き後キャッシュフローを確認すると、かなり厳しい現実が待っていることが分かります。
収益計画書に必要な情報
数字で収益計画書を見せられると、そうなのかと一瞬信じてしまいます。しかし、提出された収益計画書に必要な情報が入っているかが重要です。
第三者から収益計画書が提出された場合は
1.税引き後キャッシュフローシミュレーション
2.家賃下落、空室等を想定した変動シミュレーション
3.修繕を考慮したシミュレーション
4.出口(売却)を検討したシミュレーション
の4つが考慮された計画書なのかを確認することが必要です。
不動産投資の収益目標を検討する方法
不動産投資に興味のある、行われている方の話をお聞きすると、数値目標を持たずに投資を進めている方が多くいらっしゃいます。当然ですが、数値目標はとても重要です。これは不動産投資も例外ではありません。
そこで、資産運用を目的として不動産を購入した場合の目標の立て方について考えます。
資産運用の目標
不動産を資産形成で購入する際の一番の目標は「投資した自己資金をできるだけ増加させる」ことです。しかし「できるだけ」では曖昧です。曖昧さを無くすために、不動産投資指標を利用して数値目標を立てる必要があります。
その際に便利な指標は
1.自己資金回収率
2.IRR
です。
ここから順番に、この2つを利用して計画を立てる方法を確認していきます。
自己資金回収率
まず、自己資金回収率についてです。自己資金回収率を利用する理由は、
1.自己資金が何%増加したか分かり易い
2.自己資金回収(回収率100%)までの期間が分かり易い
からです。
自己資金回収率は、資産運用で重要な増加額と時間軸の2つを確認できます。以下は自己資金回収率を意識した、不動産投資キャッシュフローシミュレーションのサンプルです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能一部抜粋
自己資金回収率を考える際は、本当の手取りである税引き後キャッシュフローを基準に考えた方が良いです。このサンプルでは、自己資金1,500万円を10年後に回収しています。10年で自己資金を回収できるかどうかは1つの目安になります。
自己資金回収を早めるには
・物件を安く買う
・家賃を上げる
・稼働率を上げる
・維持管理費を下げる
・借入率を上げる
・金利を下げる
等が考えられます。
IRR
次に確認したいのはIRRです。IRRとは内部収益率のことです。
※IRRについて
IRRを利用することで、他の投資対象と収益率を比較しやすくなります。
資産形成を考えた場合に、現物の不動産にこだわる必要はありません。株、債権、REIT等 様々な投資対象の中で一番収益率の高い物に投資するのが良いわけです。この比較を行うのにIRRは便利です。
以下は、1,000万円の株式を購入。毎年3%の配当受取り。10年後に1,000万円で売却。した時のIRRをExcelを利用して計算する方法です。
IRRが、不動産が高ければ不動産。株が高ければ株が有利という結論になります。
次に、不動産投資のIRRをExcelを利用して計算する方法です。
Excelへの入力方法を説明すると
1.一番最初のセル(B2)に自己資金額
2.各中間年のセル(B3~B11)に家賃からのキャッシュフロー額
3.最終年のセル(B12)に家賃+売却のキャッシュフロー額
を入れて、IRR関数を利用して計算します。
B13のセルに入っているのが必要なExcel関数です。関数の式は「=IRR(B2:B12)」です。
ちなみに、IRRには、BTIRRとATIRRがあります。
▼BTIRR=税引き前キャッシュフロー基準
▼ATIRR=税引き後キャッシュフロー基準
で計算した値です。
目標数値の重要性
資産運用を考える際に、目標を数値で考えるのは重要です。目標数値を検討する時に、72の法則を利用して資産を〇年で〇倍にしたいというところから検討するのも一つの方法です。
※72の法則について
例えば、自己資金を10年で倍にしたい場合には、IRR=7.18% 必要です。
このように、まずはザックリでも構いませんので、数値目標を持っているのと、持っていないのでは、不動産投資に対する物の見方が大きく変わります。
この記事を資産運用の目標値検討の参考にしていただければと思います。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「自己資金回収率とIRR」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します。
表面利回り5%以下の物件へ投資しても大丈夫か
人口密集地を中心に物件の利回りが低下しています。
考えられる主な理由は
▼低金利による価格上昇
▼建築費高騰
▼家賃上昇は緩やか
等です。
今日は、このような状況下で不動産投資を進めて大丈夫か?不動産投資シミュレーションを使って検証します。
表面利回り5%の物件
新築木造の表面利回り5%の物件を想定して分析を進めます。
結果はとても厳しいものになりました。しかし、厳しい結果だから投資できないかと言うと、そうとも言い切れません。それでは、その理由とシミュレーション結果を確認します。
シミュレーション結果
シミュレーション結果は以下です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター収支詳細機能一部抜粋
正直、投資にならない結果です。
今回は、家賃下落なし・稼働率100%・金利上昇なしの大甘シミュレーションです。
それにも関わらず、2032年(10年目)で投じた自己資金の29.35% 約470万円しか回収できません。さらに、27年後の2049年~税引き後キャッシュフロー(CF)赤字になります。2052年(30年後)でも自己資金の59.77% 約960万円しか回収できません。
インカムゲイン(家賃収入)だけを確認すると検討する余地もないです。
しかし、本当に投資にならないかというと簡単には言い切れません。
2000年前後から、日本の不動産はデフレ前提の投資スタイルでした。デフレ前提の投資スタイルでは、物件価格は年々下落していくことを想定して計画を立てる必要がありました。つまり、下落分を家賃収入で補っていく必要があります。
しかし、現在はデフレ⇒インフレへ移行しつつあります。こうなると、キャピタルゲイン(売却収入)を考慮して計画を立てることが重要になります。では、次にキャピタルゲインを考慮したシミュレーションを行います。
インカム+キャピタル
2038年(15年後)に売却した場合のシミュレーション結果です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーター売却シミュレーション機能を利用して結果を編集
購入価格の8,000万円を中心に6,000万円~1億円で売却した際の税引き後キャッシュフロー累計・自己資金回収率・BTIRRとATIRRを一覧にしたものです。
BTIRRとATIRRは内部収益率を表します。BTIRR=税引き前キャッシュフロー基準。ATIRR=税引き後キャッシュフロー基準です。
厳密には違うのですが、投資期間中に自己資金を年平均どの程度で運用できるか示す指標とご理解ください。つまり、BTIRR・ATIRRともに数値が高いほど効率よく自己資金を運用できたことになります。
IRRの利用方法としては、例えば、株式運用で配当等を含めて、自己資金をIRR4%で運用できそうな場合に、不動産は比較してどうかというように使います。
※IRRについて
まず、購入価格の8,000万円で売却した場合、自己資金は1,600万円⇒4,200万円(約2.6倍) ATIRR 7.09%で運用できます。1億円では自己資金は約3.5倍 ATIRR 9.32%で運用できます。
このように売却まで含めると、効率よく運用できる可能性のあることが分かります。ちなみに売却価格約4,800万円以下になると、自己資金1,600万円を回収できずに投資として成り立たなくなります。
インフレ時代の不動産投資
デフレ時代はインカムゲインのキャッシュフローシミュレーションが中心でした。しかし、インフレ時代にはインカムゲインに加えて、キャピタルゲインの分析も重要になります。
インカムゲインでキャッシュフローに赤字の年がないかに加えて、〇円で売却できた場合にどの程度の運用ができるか。 最低〇円で売却できれば自己資金を回収できるか。 についてのシミュレーションも必要なります。
※アセットランクシミュレーターを利用して「インフレ時代の不動産投資で確認しておきたい項目」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します。
収益物件の購入前にシミュレーションすべき3項目
不動産投資シミュレーションの何を重要視するかは、投資目的、投資家さんの属性等によって異なります。
しかし、そんな中でも、確認しておきたい3項目があります。
確認しておきたい3項目
確認しておきたい3項目は
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字はないか
2.BE%(BER)は70%以下か
3.売却シミュレーションで赤字にならないか
それでは、この3つが重要な理由と確認方法についてです。
3項目を確認すべき理由
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字はないか
「キャッシュフロー赤字=他の収入から持ち出し発生」を意味します。不動産投資は長期間に及びます。シミュレーション段階で、10年・20年とキャッシュフロー赤字はないか確認が必要です。
2.BE%(BER)は70%以下か
BE%は損益分岐点を表すものです。この数値が低ければ、低いほど、家賃下落・空室等発生した際にキャッシュフロー赤字になりにくいです。投資期間中には何らかの変動はつきものです。その変動に耐えられるのかを確認するために利用します。
※BE%(BER)の詳細は「不動産投資で利用したい各種指標」をご確認ください。
※家賃変動に関するご参考記事(外部サイト)「駅近コンパクトタイプのアパートは、賃料の経年変化から見た安定性が最も高い」
3.売却シミュレーションで赤字にならないか
どんなに家賃収入が安定していても、出口(売却)で失敗すれば、不動産投資は失敗します。いつ頃売却するか決めていない場合にも、仮に●年後に売却した場合に「売却で借入返済できるか」 「売却後に自己資金回収できるか」のシミュレーションは必須です。
それでは、具体例を確認しながら進めます。
サンプルシミュレーション
以下はサンプルシミュレーションです。
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字はないか
キャッシュフロー赤字の無いことが分かります。まず、家賃収入(インカムゲイン)という点ではクリアです。
2.BE%(BER)は70%以下か
BE%は68.38%と70%以下です。ある程度の変化には対応できそうです。ただし、今回は家賃・維持管理費・金利等一定のシミュレーションです。さらに、変動シミュレーションを行った中で範囲内に入るかの確認を行うとベストです。
3.売却シミュレーションで赤字にならないか
売却時に借入返済できることが分かります。また、家賃収入の累積キャッシュフローと売却キャッシュフロー合計は約3,065万円です。自己資金(1,600万円)を十分回収できます。
売却価格をどの位で設定したらいいかを知りたい場合は「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご参考に検討してください。
今回のサンプルシミュレーションは、すべての項目をクリアしました。では、次に、万が一、クリアしなかった際に、見直すべき内容についてです。
※シミュレーション結果は不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能より抜粋
投資に向けての見直し
次に、シミュレーション結果が思わしくない場合、どのような改善が必要かです。
1.投資期間中にキャッシュフロー赤字発生
⇒家賃を上げることはできないか
⇒維持管理費を下げることはできないか
⇒自己資金を増やして借入額を減らせないか
⇒借入金利を下げられないか
2.BE% 70%超過
⇒家賃を上げることはできないか
⇒維持管理費を下げることはできないか
⇒自己資金を増やして借入額を減らせないか
⇒借入金利を下げられないか
3.売却シミュレーションで赤字
⇒売却可能な価格は上昇しそうか
⇒自己資金を増やして借入額を減らせないか
これらの案を検討して、見直しが難しそうならば、投資を見送る判断も必要です。
収益性と安全性のバランス
最低限確認したい3項目をご紹介しました。最終的な判断をする場合は、これに加えて、収益は投資目標に届きそうか。家賃・空室・金利を変動させて、どの程度の変動まで耐えられるか等のシミュレーションを行うことが必要です。
不動産投資シミュレーション結果は、収益性と安全性のバランス考慮して確認することが重要です。
※アセットランクシミュレーターを利用して「収益物件の購入前にシミュレーションすべき3項目」を確認する方法を、以下の動画でご紹介しています
デッドクロス発生メカニズムとシミュレーション
「デッドクロス」という単語を1度は聞いたことがあると思います。
不動産投資で使うデッドクロスは
「減価償却費<元金返済額」
となる状態を言います。
今日は、不動産投資の重要な用語である。デッドクロスについてです。
不動産投資家が注意する理由
なぜ、不動産投資家はデッドクロスに注目するのでしょうか。
理由は税引き後キャッシュフローの大きく減少するタイミングになるからです。
では、デッドクロスに影響を与える項目と発生メカニズムを確認していきます。
デッドクロスに影響を与える項目
デッドクロスに影響を与える項目は
■元金返済額に影響
・自己資金額
・借入種類(元利均等・元金均等)
・金利
・借入年数
■減価償却費に影響
・物件価格に占める土地・建物・設備の割合
・建物種類(法定耐用年数)
・築年数
これらの項目によって、デッドクロスが発生する時期、影響の大きさが異なります。
では、なぜ「減価償却費<元金返済額」のデッドクロスが発生すると税引き後キャッシュフローは減少するのでしょうか。
理由は、キャッシュフローと課税所得の計算方法の違いにあります。
キャッシュフローと課税所得
それぞれの計算式は
■キャッシュフロー(CF)
収入 - 経費 - 元金返済 – 利息返済
■課税所得
収入 - 経費 - 利息返済 - 減価償却費
※課税所得とキャッシュフローの違いを詳しく確認したい場合は「今さら聞けないCFと課税所得の違い」をご確認ください。
元金返済と減価償却費をキャッシュフローと課税所得の計算式で比較すると
■元金返済
・キャッシュフローに影響あり
・課税所得に影響なし(損金にならない)
■減価償却費
・キャッシュフローに影響なし
・課税所得に影響あり(損金になる)
この差が要因でデッドクロスが発生すると、収入・支出は変わらないのに、税金支払いが増加して、本当の手取り額である税引き後キャッシュフローに影響を与えます。
デッドクロスのシミュレーション
では、デッドクロスのサンプルシミュレーションを確認します。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターの収支詳細機能一部抜粋
上記シミュレーションのキャッシュフロー(CF)とデッドクロス発生は、元利均等返済で中古木造物件を購入した際によくあるパターンです。
不動産投資前半は、減価償却費が元金返済額を大きく超えるため、課税所得はマイナスになり、税金支払いは発生しません。
しかし、年々、元金返済が進み、借入残高減少⇒利息支払割合減少・元金返済割合増加で、課税所得額が増えていきます。
そして、2033年に減価償却が終了することで、デッドクロスが発生します。このタイミングで所得税等の税額が跳ね上がり、税引き後キャッシュフローはマイナスになります。つまり持ち出しになります。
このサンプルシミュレーションはデッドクロス発生が、収益に大きな影響を与える1つのパターンです。
投資前にデッドクロスを確認
サンプルシミュレーションを確認して分かるように、デッドクロス発生が影響の大きい投資パターンが存在します。
デッドクロス発生タイミング、影響の大きさは、デッドクロスに影響を与える各項目の内容によって大きく異なります。
物件購入前にどのタイミングでデッドクロスが発生しそうかに注目して、不動産投資シミュレーションを行う必要があります。
※アセットランクシミュレーターを使ってデッドクロスの発生タイミングとキャッシュフローへの影響を確認する方法をご紹介しています
そのサブリース契約は本当に必要か検討する方法
不動産投資の大きなリスクの1つは「空室」です。空室期間は収入0ですので本当に大きな影響があります。
さらに、不動産は空間と時間を売る投資(経営)です。他の事業と異なって繁忙期に取り返すということはできません。空室でマイナスになった分を取り返すことは、ほぼ不可能です。
そんな空室のリスクヘッジをする方法として、一般的なのがサブリースです。サブリース契約をすることで空室、家賃下落時にも契約した一定の収入を受け取れます。
しかし、「安定して収入を得られるから安心だし契約しよう」と思考が停止してしまうと不要なサブリース契約を結ぶ羽目になりかねません。
今日は、サブリースが必要か不動産投資シミュレーションする方法です。
サブリース契約の判断基準
サブリース契約をするか、しないかを検討する方法は単純です。
「サブリース契約有りキャッシュフロー > サブリース契約無しキャッシュフロー」
の場合はサブリース契約をした方が得になります。
では、具体的なシミュレーションをご紹介していきます。
サブリースが必要かシミュレーションする
サブリース契約のシミュレーションをするポイントは以下の2つです。
1.保証賃料は何%か?
2.初回免責期間はあるか?
1.保証賃料は多くのサブリース契約で、満室想定家賃(潜在的総収入)の80〜90%程度です。
2.初回免責期間は、契約開始後の○日分の家賃は受け取れないという契約になります。
初回免責期間の無い契約もありますが、投資仲間に聞いていると、免責期間がある契約も多いようです。
キャッシュフローシミュレーション
それでは、サブリース契約有りと無しのシミュレーショ行います。
サンプル物件は
サブリース契約の内容は
◆保証賃料:満室想定家賃の83%
◆初回免責期間:60日間
です。
対してサブリース契約無しは、現実的な比較ができるように空室と家賃下落を見込みます。
◆空室率:10%(年)
◆家賃下落:1%(年)を築20年迄
※家賃下落に関する分析レポート(外部サイト)
※アセットランクシミュレーター収支詳細画面一部抜粋
上がサブリース契約有り、下が無しの結果です。
確認していただきたいのは、二重線部分の税引き後キャッシュフロー(CF)累計と自己資金回収率です。10年目までは契約有り、無しも同程度の結果です。しかし、家賃下落が続くことで20年目には契約有りのキャッシュフローが大きく上回ります。
このサブリース契約であれば、契約した方が良い結果です。しかし、サブリース契約には、もう1つ注意点があります。
サブリース契約の注意点
サブリース契約のもう1つ注意点は「保証家賃が一定ではない」という点です。この注意点は一時期、社会問題にもなり、サブリース契約の法律が改定されました。
つまり、家賃が下落する、契約の家賃では空室が埋まらない等の場合、保証家賃を変更される可能性があるということです。
保証家賃が5年毎に家賃下落に合わせて改定されたシミュレーションを行うと
※アセットランクシミュレーター収支詳細画面一部抜粋
サブリース契約無しの収益性を下回ります。しかし、20年後に100万円程度の差ですので、サブリース契約で借主を募集する手間、安心感を考えると、今回のシミュレーション結果は、サブリース契約を検討するメリットはありそうです。
サブリース契約有り・無しの比較
サブリース契約と聞くと「○年間家賃が保証されるから安心」という理由で、契約無しと比較を行わずに契約してしまう投資家さんもいらっしゃいます。
しかし、ご紹介したように、不動産投資シミュレーションをして比較することで、契約するメリットとデメリットが見えてきます。
サブリース契約は契約後に解除するのが難しくなる場合もあります。
契約前に比較検討をすることをお勧めします。その際に今日の内容がお役に立てれば幸いです。
※アセットランクシミュレーターでサブリース契約が必要かシミュレーションする方法を動画でご紹介しています
附属設備と取得時の諸費用を考慮した減価償却シミュレーション
不動産投資シミュレーションの重要項目の1つが「減価償却」です。
減価償却は、土地以外の資産(建物等)を購入時に一括で損金にするのではなく、決まった期間(法定耐用年数)を使って毎年損金にしていくものです。
今日は、不動産投資で必須の知識「減価償却シミュレーション」のポイントについてです。
減価償却シミュレーション
不動産投資は建物等の資産が多額になります。減価償却の額も非常に高額になる場合が多いです。
減価償却は、課税所得に大きく影響します。つまり、税金の支払い額や、本当の手取り額の税引き後キャッシュフローに大きな影響を与えます。
減価償却を計算する上で重要な項目は
1.法定耐用年数
2.建物等の資産価格
です。
それでは、具体的な計算方法と注意したい点について考えます。
法定耐用年数
法定耐用年数は用途と構造によって異なります。
以下は住居に利用する場合の新築の法定耐用年数です。
※その他用途の法定耐用年数はこちら
※その他年数の償却率はこちら
単純に「法定耐用年数が長い=1年間の減価償却額少ない」となります。
減価償却額は法定耐用年数毎に決まっている償却率をかけて金額を決定します(年数で÷のとは異なる)。
例えば:2,000万円 木造の場合は、2,000万円×0.046=920,000円が年間の償却限度額になります。
よく、建物部分と給排水等の設備部分を分けて計上した方が良いと言われるのは、設備部分の償却年数が短いからです。
最終的にトータルの償却額は当然、同じになるのですが、投資開始当初の償却額が多くできるからです。
以下は建物等の資産価格5,000万円(鉄骨造)を建物で償却した場合と設備を分けた場合を比較した年間の償却額です。
※アセットランクシミュレーターを利用
不動産投資の多くの設備は法定耐用年数15年の物が多いので附属設備部分は15年で計算しています。
確認してお分かりいただけるように、当初15年間は設備を分けた方が償却額が多くなります。
ご紹介した法定耐用年数は、全て新築で取得した場合です。中古の場合は異なります。ご興味のある方は「中古物件の耐用年数の計算方法を理解する」をご確認ください。
このように法定耐用年数により大きく減価償却額が変わることをお分かりいただけると思います。
建物等の資産価格
不動産の場合は、基本的に土地と建物(附属設備含む)で構成されます。単純に、土地よりも建物部分の価格が増加すれば、減価償却額は増えます。しかし、土地と建物の按分には合理的な説明が必要になります。
さて、減価償却の対象となるのは単純に建物価格だけかというとそうではありません。
忘れがちなのは諸費用部分です。不動産を購入した場合には、登録免許税等の税金、仲介手数料等の手数料など、様々な諸費用が必要になります。
これら費用の一部は、一括で損金化できません。損金化できない部分は、土地部分と按分して建物分の諸費用を加算して減価償却する必要あります。
建物等の価格と取得時に必要な諸費用で減価償却すべき諸費用を加算したものが「取得価額」です。
年間の減価償却額は、この取得価額を使用して
「取得価額 × 定額法の償却率」で計算します。
以下の一覧表が一括損金化できる物と減価償却する必要があるものの主な項目です。
ちなみに、1億円の物件(建物5,000万円)の減価償却が必要な諸費用を加算した場合としない場合を比較すると
■加算無し:150万円
■加算有り:約155万円
と年間5万円異なります。
シミュレーションの際も考慮にいれて分析していただければと思います。
減価償却額は重要
不動産投資シミュレーションをする際は、減価償却を考慮したシミュレーションを行う必要あります。減価償却額によって、本当の手取りである税引き後キャッシュフローは大きく変動します。
今日、ご紹介した内容をご参考にシミュレーションを行っていただければと思います。
※アセットランクシミュレーターを利用して減価償却シミュレーションを行う方法をご紹介しています。