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年に1回は確認しておきたいあるバランス
不動産投資は10年・20年と長期間におよぶ投資です。その投資期間中、定期的に確認したいあるバランスがあります。
重要なバランス
このバランスが崩れている場合、とてもリスクの高い状態になります。逆に、バランスを保てていれば一定の安全性を確保できます。
その定期的に確認したいバランスは
借入残高<不動産価格
となっているかです。
これが
借入残高>不動産価格
となった場合はリスクの高い状態と言えます。理由は、売却時に借入を返済できない可能性があるからです。
今後、金利上昇等の変化が顕在化していく可能性が高いです。また、人口減少の影響をうける地域も増えていきます。そんな時の最善策が不動産投資からの撤退だとしても、撤退できない状況になりかねません。
「借入残高<不動産価格」確認方法
では、具体的にどのように確認すればよいでしょうか。
借入残高については、銀行の返済計画書等を確認すればすぐに分かります。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで作成した返済表
ポイントは不動産価格です。
不動産価格=購入価格 ではありません。
不動産価格=売却可能な価格 つまり、時価で考える必要があります。
では、時価をどのように検討すればいいでしょうか。
不動産の時価を確認する簡単な方法
もっとも簡単に売却可能な価格(時価)を推定する方法は
直近の年間家賃÷表面利回りで計算することです。
ポイントは表面利回りは購入時の表面利回りではなく、計算時の表面利回りを利用することです。
計算時の表面利回りは収益物件のポータルサイト等で、ご自分の物件に近い物件の表面利回りを確認して算出します。
例えば、収益物件のポータルサイトで見つけた類似物件の表面利回りは6.7%。直近の年間家賃収入は800万円の場合
800万円÷6.7%=1.19億円が推定の売却可能価格になります。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターを使った売却可能価格計算
さらに精度の高い時価を推定する方法は以下をご確認ください。
3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する
バランス確認時に考慮に入れたいこと
「借入残高<不動産価格」のバランス確認時に、さらに考慮に入れたいのは
1.売却時の手数料を考慮する
売却可能価格(不動産価格)×4~5%程度の売却時に必要な手数料を考慮するとより現実味が増します。
※売却時にかかる諸費用について
2.複数物件所有している場合は全物件合計を確認する
複数物件を所有している場合は、不動産投資から完全撤退した場合も想定して検討すると良いです。
定期的に確認する重要性
不動産投資は長期間におよぶ投資です。その期間中に様々変化がおとずれます。また、ご自身の環境が変化するかもしれません。その変化によって、不動産投資から撤退するのが最善の選択になる場合もあります。
そんな時に「借入残高>不動産価格」となり撤退できない状況は最悪です。ぜひ、ご自分の現在の状況を確認するために、年に1回など定期的に「借入残高<不動産価格」の状況にあるかを確認なさってください。
不動産投資の守りを考えた時には必要な視点ですので、この記事を参考に計算していただければと思います。
(動画)現実感のある売却シミュレーションを行う方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「現実感のある売却シミュレーションを行う方法」を動画でご紹介します
不動産投資指標を使って安全性を分析
不動産投資シミュレーションの基本はキャッシュフロー分析です。しかし、それだけでは気づきにくいリスクもあります。
不動産投資指標を使った分析
不動産投資指標はおおまかに4つに区分できます。
1.利回り指標
2.投資効率指標
3.安全性指標
4.キャッシュフロー指標
の4つです。
この記事では、様々な不動産投資指標の中から安全性指標のBER(BE%)について確認します。
BERとは
不動産投資指標のBERは以下の式で計算されます。
■BER(BE%)計算式
(維持管理費+返済額)÷満室想定家賃×100
よく聞く言葉で言い換えれば「損益分岐点」の考え方に近い指標です。
この指標が便利なのは、計算時(投資開始時等)の家賃・維持管理費・借入返済の値を利用して、将来どの程度の変動まで耐えられるかを推測できる点です。
BERはパーセンテージが低ければ低いほど、将来の変動に強い言えます。目安とすべき値は70%以下です。
70%を大きく超過し90%以上などの数値の場合は、将来の空き室リスク等の変動に弱く、投資内容の再検討が必要かもしれません。
BERの数値を改善する方法
BERを改善させるには、
1.家賃上げる
2.維持管理費を下げる
3.借入を見直す
の3つの方法があります。
しかし、1.家賃上げる 2.維持管理費を下げるは、なかなか難しいと思います。この3つの中では借入を見直すのが現実的です。
具体的な見直し内容は
▼借入額を少なくする(自己資金を増やす)
▼借入年数を長くする
▼金利を低く借りる
の3つです。
以下それぞれを見直した結果です。
■借入率によるBERの変化
■借入年数によるBERの変化
■金利によるBERの変化
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターで分析
借入内容を見直すことで、BERの値は大きく変化します。
安全性と収益性のバランス
BER70%以下を目安に投資をすることで、将来の家賃下落、金利上昇等の変化に強い状態で投資を進めることができます。90%以上の値になった場合は、かなりのリスクを背負って投資を進めなければなりません。
しかし、BERを意識するあまり、借入率を小さくしてBERを改善した場合には収益性指標は低下します。
例えば、自己資金回収率で、回収率100%までに必要な年数を確認すると、借入率80%=29年後だったものが、借入率70%=31年後と2年間遅くなります。
このように、安全性と収益性は非対称になる場合があります。ぜひ、キャッシュフロー分析とともに、様々な指標を利用しながらシミュレーションをしていただければと思います。
(動画)確認したい3つの不動産投資指標
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「BERを含む確認したい3つの不動産投資指標」をシミュレーションする方法を動画でご紹介します
金利変動を考慮した分析から見えてくること
不動産投資の重要項目の1つに金利があります。変動金利を選択して借入を行った場合、不動産投資シミュレーションで金利上昇を考慮した分析を含めて行う必要があります。
金利上昇を考慮したシミュレーション
金利変動の発生するタイミングは、変動金利は短期プライムレートに変動があった場合。固定金利は10年物国債利回りに変動のあった場合です。
このような変動を想定して行う、金利変動シミュレーションで最低限確認しておきたい結果は2つです。
1.金利上昇してもキャッシュフロー赤字は発生しないか
2.金利上昇を考慮した売却価格での収益性
キャッシュフロー赤字にならないか
今回は以下のサンプル物件を利用してシミュレーションします。
金利変動なしと変動ありのシミュレーションです。変動ありは投資開始翌年から0.5%ずつ3年間上昇して、その金利が10年目まで続くシナリオです。
※不動産投資ソフト アセットランクシミュレーターでシミュレーション
10年目の利息支払額は、変動ありは変動なしに対して約87万円増加します。また、税引き前キャッシュフローで約63万円。税引き後キャッシュフローは約50万円減少します。
このように収益性は大きく低下しています。しかし、手元資金の持ち出しになる税引き後キャッシュフロー赤字は2%⇒3.5%の変動ではなりません。ちなみに、金利が2%⇒6%程度まで上昇すると税引き後キャッシュフローは赤字になります。
金利上昇後の売却価格
次に、見落としがちなのは、金利上昇は売却時の収益にも大きな影響を与えることです。
ファミリー向け区分所有を除けば、投資物件の売却先は、ほぼ投資家になります。つまり、どれだけ収益を上げられるかの視点で物件価格を決定します。
金利上昇は収益に大きなマイナスです。同等の収益を求められた場合、売却できる価格(買ってくれる価格)は低下傾向になります。
以下は金利変動を考慮しない時と、した時の推定の売却価格での売却時のキャッシュフロー分析です。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
売却時に売却先の投資家に求められる表面利回りは、金利上昇した分程度の表面利回りになる可能性があります。今回のサンプルは表面利回り6.5%です。金利上昇分の1.5%を加算すると表面利回り8%となります。
表面利回り6.5%時の売却価格約8,000万円に対し、表面利回り8%時の推定売却価格は約6,500万円となります。その結果売却時に得られる税引き後キャッシュフローは約1,520万円減少します。
推定の売却価格計算方法については「10年後の売却価格を推定する方法」をご確認ください。
今回のシミュレーションは、インフレに伴う家賃上昇を考慮していません。多くの場合、金利上昇はインフレ抑制のために行なわれます。
インフレの家賃上昇と経年劣化の家賃下落双方を考慮して売却価格を推定すると、毎年0.5%家賃上昇で67,984,138円。1%上昇で71,089,488円です。いずれも金利上昇前の価格には及びません。インフレの家賃上昇を考慮しても金利の影響は大きく残ります。
金利はインカム・キャピタル両面に影響
金利上昇はインカムゲイン(家賃収入)のキャッシュフローにも、キャピタルゲイン(売却益)のキャッシュフローにも多大な影響を与えます。投資の成否は、この2つの収益の和よって決まります。
金利上昇が現実味をおびてきたこの機会に、金利変動のシミュレーションを行う参考にしていただければと思います。
(動画)金利を変動させた不動産投資シミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「金利を変動させた不動産投資シミュレーション」を行う方法を動画でご紹介します
デッドクロスとキャッシュフロー分析
デッドクロスという言葉をお聞きになったことはあると思います。手取り収入減少のポイントとなるタイミングです。
デッドクロスの確認だけでは不十分
デッドクロス発生タイミングを知っておくことは重要です。しかし、デッドクロス発生前、発生後のキャッシュフロー分析で流れを把握しておくことはさらに重要です。
デッドクロスとは「元金返済額>減価償却費」の状態になることです。デッドクロスになると税負担の増加を通して手取り額が減少します。しかし、実際はデッドクロス前から手取り額の変化は始まっています。
※デッドクロスについては「デッドクロス発生メカニズムとシミュレーション」をご確認ください
長期のキャッシュフロー分析から見えること
長期のキャッシュフロー分析を行うことで、手取り額の変化を確認できます。
最初にキャッシュフロー分析を税引き前まで行うと
※不動産投資ソフト アセットランクシミュレーターでシミュレーション
家賃収入と維持管理費(支出)が一定の場合はキャッシュフロー(CF)額は一定です。しかし、本当の手取り額である税引き後のキャッシュフローは異なる状況になります。
税引き後のキャッシュフロー分析
次に税引き後まで確認します。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
所得税+住民税の支払いが増加して、税引き後のキャッシュフローは年々減少しています。2025年に約181万円あった税引き後のキャッシュフローは、5年後の2030年には約177万円になっています。2030年はデッドクロス発生前です。
元金と利息と減価償却のバランス
理由を説明するためには、税額決定の基準となる課税所得の計算方法を理解する必要があります。
■課税所得
収入-経費-利息支払-減価償却費
※課税所得については「今さら聞けないCFと課税所得の違い」もご確認ください
元金返済分は損金にならず利息分だけ損金になります。多くの投資家さんの利用する元利均等返済の毎月の返済合計額は同じです。
しかし、元金返済額と利息支払額の割合は毎月変化します。以下は元金返済と利息支払と減価償却費のサンプルシミュレーションです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
損金になる利息分は2025年に約194万円あったものが徐々に減少し2030年は約174万円になります。そして、2031年に「元金返済額>減価償却費」となりデッドクロスが発生しています。
デッドクロスという区切りだけに注目してしまいがちです。しかし、長期のキャッシュフロー分析を行うと年々税負担は増加していることが分かります。
キャッシュフローは長期分析が基本
税引き後キャッシュフローは家賃や支出は一定でも、損金になる利息支払の減少とともに税負担は増加して年々減少します。また、減価償却の減少や0となるタイミングではさらに大きな変動があります。
単年の不動産投資シミュレーションではどの程度の影響が発生するか分かりません。キャッシュフロー分析は長期分析を行うことが基本になります。
(動画)デッドクロス発生タイミングとキャッシュフローへの影響
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「デッドクロスの発生タイミングとキャッシュフローへの影響」を確認する方法を動画でご紹介します
物件売却時のキャッシュフロー分析をする方法
不動産投資シミュレーションを行う場合に、家賃収入(インカムゲイン)の分析は重要です。しかし、売却収入(キャピタルゲイン)の分析も疎かにできません。
物件売却時のシミュレーション
物件売却時のシミュレーションで確認しておきたい項目は、
1.借入を返済できる売却価格はいくらか
2.想定した売却価格で税引き後にいくら現金は残るか
の2つです。
不動産投資の売却シミュレーションの方法
売却シミュレーションを行う際に最低限必要な項目は
1.売却予定年月
2.売却想定価格
です。
売却予定年月は、売却を予定している年のある場合はその年で分析を行ないます。具体的に決まっていない時には、購入後10・15・20年等の任意の年で行ないます。
売却想定価格は、売却予定年の推定売却価格を計算して決定します。詳しくは「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」をご確認ください。
この2項目が決まれば売却時のシミュレーションが可能です。
不動産投資シミュレーション 借入は返済できるか
売却時に借入を返済できるかは非常に重要です。返済出来ない場合、売りたいのに売れない事態が発生する可能性があります。
以下は1億円の表面利回り6.5%の物件を10年後に9,000万円で売却した際のサンプルシミュレーションです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
売却価格から譲渡費用と借入残高を引いた金額の税引き前のキャッシュフローは約2,130万円残っています。
借入残高を返済できる目途となる価格は、譲渡費用によって変わりますが、借入残高と譲渡費用を足すことで約6,800万円程度だと分かります。
不動産投資シミュレーション 売却時の税引き後キャッシュフロー
9,000万円で売却した場合、税引き前で約2,130万円残ることは分かりました。続いて税引き後のキャッシュフローです。
税引き後キャッシュフローを計算するには「譲渡所得」と「所得税+住民税」の計算が必要です。
譲渡所得の計算方法は
■売却価格-譲渡費用-(取得費-減価償却費累計)
です。
※取得費の計算方法は「不動産売却に必要な知識 取得費」をご確認ください
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
今回のサンプルでは譲渡所得は720,000円になります。この譲渡所得に以下の所得税と住民税がかかります。
サンプル物件は購入10年後のシミュレーションです。長期譲渡所得になり税率20%+復興特別所得税の146,268円が税額になります。
税引き後キャッシュフローは「21,332,177-146,268 =21,185,909」です。
この税引き後キャッシュフローが売却で本当に手元に残る金額になります。
売却時の投資シミュレーションも必須
不動産投資シミュレーションを行う時にインカムゲインに偏りがちです。しかし、購入時から出口を想定して売却時のシミュレーションを行うことも重要です。ご参考にしていただき、シミュレーションしていただければと思います。
(動画)出口(売却)まで考えたシミュレーション
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「出口(売却)まで考えたシミュレーション」を動画でご紹介します
不動産投資のキャッシュフロー分析
不動産投資シミュレーションの基本はキャッシュフロー分析(CF分析)と言っていいと思います。
キャッシュフロー分析のポイント
キャッシュフロー分析で確認すべきポイントは
1.税引き後キャッシュフローで確認
2.赤字の年がないかを確認
3.累計額を確認
の3つです。
税引き後キャッシュフローで確認
キャッシュフローには大きく
▼税引き前キャッシュフロー: 家賃等収入-維持管理費等支出-返済額
▼税引き後キャッシュフロー: 家賃等収入-維持管理費等支出-返済額-所得税・住民税
で計算される2つがあります。税金支払い前の金額か、税金支払い後の金額かの違いです。
なぜ、税引き後キャッシュフローで確認するべきなのでしょうか。理由は、不動産投資は税金の影響が大きいからです。
以下は税引き前キャッシュフローと税引き後キャッシュフローの比較シミュレーションです。
※不動産投資ソフト アセットランクシミュレーターでシミュレーション
税引き前キャッシュフローと税引き後キャッシュフローで約26万円~28万円も違います。
もう一つ注意したいのは、税引き後キャッシュフロー分析を行う際は「その他の課税所得を考慮して行う」ことです。
多くの場合は所得がこの物件からの収入だけということは無いです。給与所得・事業所得・他の不動産所得などからの所得があります。このようなその他の課税所得も加味してシミュレーションする必要があります。
日本の不動産所得への税制度は総合課税制度と累進課税制度です。そのため、その他の課税所得を加味して分析を行なわないと結果に大きなブレが発生します。
以下は課税所得650万円(年収1,000万円程度)を考慮した分析です。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
※所得税等税金は当該物件分を按分した所得税+住民税
先ほどのその他の課税所得考慮前のシミュレーションと比較して、所得税等税金は約20万円増加しています。その結果、税引き後キャッシュフローも減少します。収入額が大きければ大きいほど、その他の課税所得を考慮する重要性は増します。
キャッシュフローに赤字の年はないか
次に、キャッシュフロー分析で確認したいのは赤字の年は無いかです。理由は、「赤字の年がある⇒手元の資金から充填発生」の可能性があるからです。
特に、減価償却額の減少、元金返済額が増加していく可能性の高い投資開始から10~15年以降は注意が必要です。この辺りについては「デッドクロス発生メカニズムとシミュレーション」もご確認ください。
キャッシュフロー分析は単年で行っても効果は低いです。10年・20年・30年と税引き後キャッシュフローの増減、赤字の発生する年が無いかの確認が必要です。
キャッシュフローの累計額と自己資金
3点目は投資効率を確認するために税引き後キャッシュフロー累計額の確認です。
※不動産投資シミュレーションツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
確認していただきたいのは、税引き後キャッシュフロー累計と自己資金回収率です。投資した自己資金をできるだけ短い期間に回収することで次の投資機会に備えることができます。
サンプルのシミュレーションでは、2028年の自己資金回収率は51.70%となっています。計算式は 「税引き後キャッシュフロー累計÷自己資金」です。今回の例では、8,217,308÷16,000,000=51.70%
です。
その際に、自己資金回収率100%(今回の場合は1,600万円)になるのは何年後かも確認します。
キャッシュフロー分析はシミュレーションの基本
不動産投資シミュレーションを行う場合に、様々な視点で分析する必要があります。その中でもキャッシュフロー分析は特に重要です。
3つのポイントをふまえてキャッシュフロー分析を行っていただければと思います。
(動画)税引き後キャッシュフローを確認する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「税引き後キャッシュフロー・自己資金回収率を確認する方法」を動画でご紹介します
新築木造と築古木造への投資の特徴と注意点
同じ木造物件でも、新築と築古では大きくキャッシュフロー等の特徴は異なります。
木造物件への投資
新築木造と築古木造を以下のサンプル物件を使って比較します。
新築と築古のキャッシュフローに影響を与えるポイントは、借入年数と法定耐用年数です。
基本的に築古よりも新築は長い期間借入ができます。今回の例では新築30年 築古20年としています。
法定耐用年数は築古(建築後22年以上経過)は4年。新築は22年と18年の違いがあります。
この2つの違いは、キャッシュフローに大きな影響を与えます。
※法定耐用年数の計算については「中古物件の耐用年数の計算方法を理解する」をご確認ください
新築と築古木造のキャッシュフロー
新築木造と築古木造のキャッシュフロー比較をします。
※不動産投資ソフト アセットランクシミュレーターでシミュレーション
投資開始後の数年間は築古木造の自己資金回収率は新築木造を大きく上回ります。しかし、投資開始から8年後の2031年には新築が築古を逆転します。
理由は減価償却費の違いにあります。
築古は当初4年間(法定耐用年数期間)に一気に減価償却します。それに対して新築は22年間かけて償却します。
築古は投資開始直後に減価償却費が多いことで課税所得額が少なくなります。課税所得が少ないことで税負担は少なく、税引き後キャッシュフローは多くなります。
しかし、法定耐用年数の終了する5年目から課税所得額が増加し税金支払いは激増して9年目から赤字になります。
また、築古木造は返済期間の短いかいことも影響します。返済期間の短い場合、元金支払いの割合が高くなります。借入額に対する投資開始当初の年間の元金返済割合は新築木造は約2.5~3%、築古木造は4~4.5%と大きく異なります。
※課税所得の計算方法については「今さら聞けないCFと課税所得の違い」をご確認ください
新築と築古どちらがいいか
同じ木造物件でも新築と築古では傾向が大きく異なります。築古木造の表面利回りは新築木造に比較して高いことが多いです。
また、築古は法定耐用年数経過済み物件でも、固定資産税評価額や契約時の土地・建物の按分内容に沿った取得価額を短期間で償却できます。
しかし、減価償却が終了するとキャッシュフローは一気に悪化します。
借入を利用した場合、法定耐用年数経過後に長く持ち続けるには難しい物件です。築古木造は、借入無し又は少額で、最終的には土地が残るという発想で投資するのが理想だと思います。
それに対して、新築木造は表面利回りは低いです。しかし、減価償却を22年間継続できる点と長い期間の借入を利用しやすいです。長期間安定したキャッシュフローを得るには築古木造と比較して有利です。
新築木造と築古木造ではキャッシュフロー等の特徴は大きく異なります。この内容が新築木造と築古木造の不動産投資シミュレーションを行う際のご参考になれば幸いです。
(動画)物件構造によるキャッシュフローへの影響
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「物件構造によるキャッシュフローへの影響」を動画でご紹介します
株式投資と不動産投資の運用成績を簡単に比較する方法
不動産投資と株式投資どちらで運用した方が良いか比較する方法について検討します。
不動産と株式の特徴
不動産投資と株式投資のメリット・デメリットを比較すると
流動性(買いやすさ・売りやすさ)やボラティリティー(変動幅)等、それぞれ一長一短あります。次に、資産運用の効率はどちらが良いか比較します。
不動産と株式を比較するための指標
不動産投資と株式投資の特徴を掴むために2つの指標を使います。
1.税引き後キャッシュフロー:税金支払い後に手元に残る金額
2.IRR(ATIRR):IRRについては「インフレ時代の不動産投資で利用したい指標」をご確認ください
この2つの指標を使って、同じ自己資金(今回は2,000万円)を以下の条件で不動産投資と株式投資で運用した場合の10年間の成績を比較します。
※株の配当利回りは日経平均の平均配当相当の1.80%
また、税金ルールが不動産投資と株式投資で異なる点もポイントです。不動産投資は総合課税、株式投資は分離課税です。この違いの影響も図るために税引き後の運用成績で比較します。
不動産と株式の運用成績
10年後に-20%~+20%で売却した場合の税引き後キャッシュフロー累計額とATIRRの結果です。
※不動産投資シミュレーションは 不動産投資ソフト アセットランクシミュレーターを利用
運用成績は不動産投資が若干上回ります。しかし、ほったらかしにしやすい株式投資と比較すると、賃貸募集など手間のかかる不動産投資を選択するメリットの小さい結果です。
自己資金のみで、表面利回り5%程度の不動産投資は近い結果になる可能性が高いです。しかし、一般的に株式と比較すると、不動産投資の資産価値のボラティリティー(変動幅)は小さいです。資産保全目的(対インフレ等)の投資としてのメリットはあります。
レバレッジを利用した不動産投資
不動産投資と株式投資を自己資金だけを使って運用した際の比較をしました。
しかし、不動産投資には株式投資では利用できない大きなツールがあります。
それは低利の借入(レバレッジ)を利用できることです。ウォーレンバフェットのような大口投資家以外は株式投資に低利の借入を利用するのは難しいです。それに対して不動産投資は一定の属性以上の人は、資産運用に借入を利用できます。
不動産投資に借入を利用した運用成績はどうなるか確認します。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用してシミュレーション
株式投資の運用成績を大きく上回ります。ただし、物件価格が下落した際の運用成績は、レバレッジがマイナスに働き、借入無しよりも損失が大きくなります。
株式投資でレバレッジ有りの不動産投資のATIRRと同様に運用するには、上昇率10%は株式が2,000万円→3,150万円(57%増) 上昇率20%は2,000万円→3,825万円(91%増)が必要です。
不動産と株式の比較結果
不動産投資と株式投資を比較すると、表面利回り5%程度の不動産を自己資金だけで運用する場合、資産保全としては有効な可能性はあります。ただ、資産運用としての効率は悪いです。
しかし、不動産だけのメリットである、借入を利用することで大きく運用効率は上昇します。
不動産投資の効率を比較する際の参考にしていただければと思います。
(動画)IRRを計算する方法
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターを利用して「IRRを計算する方法」を動画でご紹介します
インフレ時代の不動産投資シミュレーション
今後予測されるインフレ時代は、デフレ時代と異なる視点で、不動産投資を考えていく必要があります。
インフレ時の不動産投資
インフレ時の不動産投資を4つの項目を通して検討します。
1.家賃
2.維持管理費
3.借入金利
4.売却(出口)価格
です。
不動産投資シミュレーションを行う場合、インフレ時代に合わせて4項目の変化を推測して分析する必要があります。
インフレ時の家賃と維持管理費
家賃と維持管理費の変化を考える時に、参考になるのは消費者物価指数です。
日銀はインフレターゲットを2%としています。ここ最近は大きく超過している月もあります。しかし、不動産投資シミュレーションを行う場合はインフレ率2%と考えて分析するのが良いです。
維持管理費はインフレターゲットと同じ年2%上昇。家賃は2%上昇から経年劣化の家賃下落1%を引いた年1%上昇で分析します。
※家賃下落については以下もご参照ください。
▼劣化が住宅賃料に与える影響とその理由
▼マンション賃料インデックス
インフレ時の借入金利
次に金利です。正直、金利を予測するのは不可能に近いです。理由は、日本の成長率・インフレ率・景気動向・財政状況等の様々な要素が絡み合うからです。
しかし、政策金利がマイナスの現状よりも下落する可能性は低いです。不動産投資シミュレーションの段階では、金利上昇を厳しめに見た方がいいです。
今後10年以内で現在の借入金利+0.5%~1.5%程度の上昇は織り込んだシミュレーションは必要です。
インフレ時の売却(出口)価格
売却価格の推測に必要な情報は、売却シミュレーションする年の想定満室家賃と購入時の表面利回りです。
例えば、10年後の年間の想定満室家賃が6,000,000円 購入時の表面利回り5.5%の場合は
6,000,000÷(5.5%+0%~2%)で計算します。表面利回りへの加算率は人口減少等のマイナス要因の大きな地域は1~2%加算。都心部等は加算+0~1%で考えます。
※売却想定価格については以下もご参照ください
インフレ変動ありと変動なしシミュレーション
変動無しと変動ありシミュレーションを比較すると
毎年の返済額は金利が2%⇒2.5%⇒2.75%⇒3%と上昇することで3,991,884円から4,488,804円と約50万円増加します。そのため、家賃1%上昇では追いつかずキャッシュフローは悪化します。
しかし、家賃1%ずつ上昇したため、10年後の売却想定価格は変動無し91,666,600円⇒変動あり100,254,417円となります。
10年後の売却(出口)まで含めて比較すると、金利上昇や維持管理費の上昇があっても変動ありシミュレーションの収益性は自己資金回収率で約20%程度上回ります。
インフレ時代に重要視するポイント
インフレを意識する時代は、金利や維持管理費上昇の影響が家賃上昇を上回ることでキャッシュフロー(インカムゲイン)は悪化する可能性があります。
しかし、インフレにより物件価格が上昇し売却(出口)を考慮するとデフレ時代よりも収益性が向上する可能性は十分にあります。
今後は、毎年のキャッシュフロー重視から資産価値を保てる物件を選択して出口を十分意識した戦略が必要になります。
(動画)インフレを意識したシミュレーション
※将来の様々なリスクを予測した不動産投資シミュレーションを行う方法
※10年後の売却価格を推定して不動産投資のキャッシュフローシミュレーションに利用する方法
不動産投資指標のLTV (Loan to Value)とは
不動産投資の借入の安全性を数値化できる不動産投資指標があります。
それは「LTV (Loan to Value)」です。
不動産投資指標のLTVとは
LTVを利用することで、借入の安全性(危険度)を数値化できます。
■LTV (Loan to Value)とは
計算式:「借入残高 ÷ 物件の現在価値 × 100」
解説:融資比率を表す指標。物件の価値に対する借入金の比率を算出したもの。数値が小さいほど元本償還に対する安全性は高い。
100%未満を維持できれば、万が一の時に物件を売却して借入を全額返済できる可能性が高いと言えます。
LTVを利用するためのポイント
LTVを有効に利用するためのポイントは3つです。
1.借入残高を把握する
2.物件の現在価値を把握する
3.目標の値(パーセント)を設定する
1.借入残高については、金融機関の償還予定表等を確認して簡単に把握できます。
ポイントは「2.物件の現在価値を把握」と「3.目標の値(パーセント)を設定」です。
LTVの計算に必要な物件価値
物件購入時点のLTVは簡単に計算できます。割高に購入させられていないという前提で、購入時は「物件価値≒購入価格」だからです。
しかし、年数が進めば返済は進み借入残高は減少します。また、物件購入時以外は「物件価値≒購入価格」ではありません。
借入残高は簡単に把握できるため省きます。問題は物件の現在価値をできるだけ現実に近い(実際に売却できる価格)形で把握する方法です。
物件の現在価値把握する方法として3つの方法が便利です。
3つの方法を組み合わせることで、より現実に近い物件価値を確認することができます。
※「3つの指標で所有物件をいくらで売却できるか確認する」でより詳細にご説明しています。
LTVの目標値
次にLTVの目標値です。本来は、購入当初より70%以下に保つことを目標にすると良いです。1億円の物件に対して7,000万円の借入までで投資を行うということです。
しかし、LTVを物件購入当初より低くすると、CCR(cash on cash return)等の収益性の不動産投資指標は低下します。
収益性を考慮すると、将来性の高い物件は80~85%程度は許容できると思います。物件価値上昇と、返済の進むことで、目標値である70%以下を5年程度で達成できる可能性があるからです。
以下は、元利均等・期間30年・金利2.5%で借入を行なった場合のLTV(Loan to Value)のシミュレーションです。
※不動産投資ツール アセットランクシミュレーターでシミュレーション
※物件価値を購入価格1億円と仮定して集計
元金返済が進むことで、当初のLTV80%から徐々に低下し、6年後に70%以下になります。
※不動産投資指標のCCR(cash on cash return)とは
LTVは定期的把握する
LTVは借入返済が進むことと物件価値で変動します。変化を捉える意味でも、年1回程度はLTVは何パーセントか確認しておきたいです。LTVは物件毎に確認するだけではなく、所有する物件全体の数値も把握する必要があります。
また、LTVを把握することは、物件の追加購入時に借入を行う際の金融機関へのアピールポイントになります。
銀行の最終目標は貸したお金を全て回収することです。この視点で考えると、LTVが低いことは、万が一の時に売却して回収できる可能性が高いと言えるからです。
借入をして物件を購入する場合には、不動産投資指標のLTVを利用して、安全性の把握していただければと思います。
(動画)物件現在価値シミュレーション
※不動産投資ツールのアセットランクシミュレーターを利用して 積算価格と相場的価格を計算する方法
※10年後の売却価格を推定して不動産投資のキャッシュフローシミュレーションに利用する方法